大西への相談
「はい、今からだと追いつきませんので途中の新百合ケ丘で
待機してもらってください」
亮が指示をした。
「分かったわ」
「ちなみに国城は女装していましたので
見落とした彼らを責めないでください」
「女装!」
「はい、今国城の写真を送ります」
「あ、ありがとう・・・亮」
美咲は亮の動きが警察を上回っていた事で
唖然としていた。
電話を切った亮は二丁目でゲイバーをやっている
大西の所に電話を掛けた。
「團亮です。覚えていますか?」
「團さん。覚えています。お久しぶりです」
「大西さんにちょっとお聞きしたい事が
有るんですけど」
「私のような者に何か?」
「女装している男性の事です」
「分かりました。今お店を片付けているので
後程電話をします」
「分かりました。お願いします」
亮は大西の電話を切ると飯田に電話を掛けた。
「連絡が遅くなりました。すみません。
すみません、色々問題があって」
「ああ、マッスルカーブの件だな、聞いているぞ」
「すみません。少し落ち着きましたので」
「また、何か有ったら相談に来いよ」
「ありがとう、近々警備会社を作りますので
飯田さんのビルを管理させてください」
「おお、そうかそうか。いつでも来い」
飯田は亮に頼りにさせるのが嬉しかった。
「2丁目ってゲイバー?」
大西との会話を聞いていた麻美が聞いた
「ええ、国城の女装が余りにも上手いのでその手の
アルバイトをしたんじゃないかと」
「そうか、それならヒールも履きなれているわね。
道理で国城のアルバイトが
見つからなかったわけね」
美咲の指示で樫村たちが動いたが国城アルバイト先、
交友関係を特定できていなかった事を雪は残念に思っていた。
「麻実さん、国城の女装のデータを取ってください」
「はい」
麻実は動画の顔のはっきりしている部分を
止めてスキャニングした。
「亮、これで良い?」
「OKです」
亮は国城の顔をデフォルメした似顔絵を
描いてスキャナーで読み込んだ。
~~~~~
「下田さん、根本さん直ぐに急行の下りに
乗って新百合ケ丘で降りてください」
改札で監視している下田たちに美咲は無線で指示をした。
「えっ?国城は?」
「6時36分の下り電車に乗っています」
「マジですか?」
下田はホームに向かって走り出した。
「7時1分の下り急行に乗れば7時26分に新百合ケ丘に到着、
国城が町田に7時15に到着して折り返し
7時19分の上りに急行に乗れば
新百合ケ丘に7時28分に着きます」
「間に合います」
根本も走ってホームに向かった。
「我々はどうしますか?」
樫村が聞いた。
「樫村さんと白石さんは到着ホームで待機してください」
「了解です」
7時1分の急行に飛び乗った下田呼吸を荒げていた。
「まったく、訳のわからん指示を出す警視様だ」
下田は亮に振り回されているキャリアの美咲を
馬鹿にしたように言った。
「ええ、さほど混んでいない早朝の改札で
我々が国城を見落とすなんてありません」
根本は自信を持って答えた。
「下田さん、根本さん。国城は女装して
乗車したそうです。写真を送ります」
「了解」
下田は驚いて根本と目を見合った。
~~~~~
「一恵さん、国城は6時36分の小田原行に乗りました。
町田駅到着が7時15分で折り合えすなら
町田7時19分の新宿行に乗るはずです。
一恵さんは相模大野7時18分発の新宿行きに乗ってください」
「了解」
亮は国城に警戒心を持たれないように
1駅前の相模大野から一恵を
乗車させるように考え一恵に指示をした。
「玲奈さん、国城の様子は?」
「バッグの中に手を突っ込んでゴソゴソやっているわ」
「了解、玲奈さんは町田一旦下車して次の電車で戻ってください。
人間は一度でも目が合うと記憶に残る可能性があます。
国城は男だ、美人はとくに」
「はい、わかりました」
玲奈は亮に美人と褒められて嬉しかった。
「亮、50kに落として美咲さんと
みんなに写真データを送ったわ」
「ありがとう、麻実さん」
亮はプリントアウトした写真の
出来栄えに満足してニコニコと笑った。
「雪さん、麻実さん僕は新宿に向かいます」
「わかりました。気を付けて」
亮は事務所を出て新橋駅から銀座線に乗って新宿に向かった。
銀座線と丸ノ内線の乗り換えのホームで
大西から電話があった
「もしもし」
「情報が取れました」
「はい、今何処に?」
「新宿御苑の近くです」
「ちょうど良かった御苑前に7時17分に着きます」
「わかりました、お待ちしています」
亮が新宿御苑前に7時17分着くとサングラスを
掛け、革ジャンを着た
たがっちりした体の大西が改札口で待っていた。
「お久しぶりです。大西さん」
「ん、随分立派になりましたね」
大西はサングラスを外し亮と
目が合うと嬉しそうに笑った。
「早速ですが、この女性、いや男性なんですが」
「ちょっと待ってください」
亮は大西にプリントした国城の男の顔と
女の姿の時と似顔絵を見せた。
「こんなに美人のニューハーフは2丁目より
歌舞伎町のニューハーフクラブに
行っていると思います。稼げますからね」
「そうですか」
亮は大西の答えに直ぐに交友関係を
調べられず肩を落とした。
「私に任せて頂けませんか、必ず探し出します」
「本当ですか?ありがとうございます。
何分僕の知らない世界なので」
亮は深々と頭を下げた。
「いいんです。蛇の道は蛇ですから」
大西は亮の手を握って亮の目を見つめた。
「蛇の道は蛇って・・・?」
亮は大西がそっちの世界の人と気づき
手を引っ込めると大西は積極的に亮を誘った。
「あはは、またうちの店に遊びに来てください。
ジェニファーさんはお元気ですか?」
「は、はい。先日仕事中に怪我をしましたが元気ですよ
ふんどしの話は時々出ます」
「危険な仕事なんですね」
「実は彼女は今はFBIで働いています」
「すごいですね~」




