誰も知らないヒーロー
亮は突然切口上言った。
「もちろんだ、何百億もする監視衛星など
持つ予算などあるわけがないだろう」
「予算を持つためには警察庁を警察省に格上げしなくては
ならないですね」
「ああ、そうなったら政治家が主張する正義に警察が利用される」
巌は警察庁が警察省になったらトップは国会議員の
大臣がつくことになる事を危惧していた。
「そうですね・・・。そうだ、父と相談して
警備会社を作る事に決定しました」
「おお、そうか、そうか」
巌はにこやかに答えた。
「資本金1億円。業務内容はアメリカの公共施設が
使っているハイテクセキュリティのシステム販売、
通常の警備業務そしてVIPの為の
セキュリティハイヤーです。他に何か有ったら提案してください」
「それでどれくらいの人数を雇える?」
「そうですね、初期は管理職三人、営業、事務系五人、
現場は契約企業数によりますけど二十人から百人ほどです」
「分かった、早速私の先輩、部下等で優秀な人材をリストアップする」
「ただ、給料だけで1年間で1億を越します。
初年度は月商2000万円以上の仕事をしなくてはなりません」
「わかった。もちろん警備契約の企業は
何社か持ってこれるはずだ」
「設備投資に相当なお金をかけます。資本金1億
では足りませんので5億円の
貸付を用意します」
「うん」
巌は嬉しそうに亮と握手をした。
「亮、これでいいわ。ありがとう」
美咲は亮が書いたデータを読み終えた。
「さて、明日朝6時となるとそろそろ
寝なくてはならないな。亮君泊まっていくといい、
美咲お風呂に案内してあげなさい」
「はい」
美咲が風呂の用意の為に応接間を出ると亮は巌に声をかけた。
「あのう、内閣情報調査室に僕を紹介したのは?」
「私だ!あそこには私の部下が出向で行っている。
優秀な君と組んでもらいたい」
「でも僕は・・・」
「あはは、女たらしだったな。
大丈夫だ私の部下は本当の君を知っている」
「わかりました」
「ただし、美咲をもてあそんだらただじゃすまないぞ」
巌は亮を睨みつけた。
「は、はい。おやすみなさい」
亮は恐る恐る巌に頭を下げた。
「あっ、パパおやすみなさい」
浴室から出てきた美咲が廊下で巌に言った。
「おやすみ美咲、あんまり大声を出すなよ。母さんは眠りが浅いから」
「はーい」
美咲は巌からの許可が出て嬉しかった。
「亮、一緒にお風呂に入ろう。背中流してあげる」
「えっ?」
亮は今巌に釘をさされどうしていいか分からかった。
翌朝、亮は右腕の重みで4時に目を覚まし
右側を見ると美咲の頭が乗っていた。
「わ、ああ。美咲さん」
亮は慌てて美咲に頭をどかした。
「美咲さん、どうしてここに居るんですか?」
「なに・・・?私の部屋は両親の部屋に近いから
離れているこの客室でやったんじゃない」
「それはそうだけど、自分の部屋戻ったんじゃないですか」
「うん、でも寂しいから戻っちゃった」
「は、早く戻ってください。やばいですよ」
亮は原家の部屋で一人娘とエッチした事は
親にも知られたくなかった。
「なんだ~もう少し寝ていられたのに。亮5時過ぎには出るから」
「あっ、はい」
亮は慌ててパンツを履き直した。
「亮、元気じゃない。もう1発やっていく?」
「だ、ダメですよ」
「なんだつまんない」
美咲がそう言って部屋を出ると美咲の母親
立っていた。
「おはよう、美咲ちゃん」
「あっ、ママ」
「うふふ、食事作っておくから食べていきなさい」
「やはりママは眠りが浅いのね」
「どうかしら?パパも起きていたみたいよ」
「ドッキ!」
美咲は胸を抑えた。
仕度を終えた亮はダイニングに行くと
美咲の母親が料理を作っていた。
「おはようございます」
「おはようございます。亮さん」
美咲の母親は優しく亮に微笑んだ。
「お手伝いします」
「いいのよ、座ってらして」
「いいえ、家では僕が料理番なんです。姉が二人いますけど」
「そう、じゃあフライパンでソーセージを焼いてもらおうかしら」
「はい」
亮はフライパンにオリーブオイル垂らしてソーセージを焼き始めた。
「あら、オリーブオイル?」
「ええ、オリーブオイルはコレステロール値を下げますから
動脈硬化、心筋梗塞の予防
後は便秘解消になります」
「そうなの?じゃあ主人にぴったりね」
「ええ、臭いが気になるようでしたらバージンオリーブオイルではなくて
ピュアオリーブオイルをサラダに垂らしてもいいですよ。
それからトマトはビタミンが豊富な上にカリウムは
高血圧予防、リコピンはガン予防になります、
それにダイエット効果もあります」
「そう、トマトが赤くなると医者が青くなるって
本当なのね。たくさん食べなくちゃ」
「はい。是非」
「亮さん、随分料理に詳しいんですね」
「ええ、薬剤師の僕にとっては食も漢方の1つだと思っています」
「ところで亮さん美咲の事どう思っているの?」
「す、好きですよ。聡明で美しい」
「そうでしょう。お嫁にもらって上げて主人も
あなたの事を気に入っているわ」
「そ、それは。僕にはまだやりたい事あるしそれに・・・」
「その話は聞いて知っています。でも亮さん美咲は
あなたからいただいたお土産のマカダミアナッツ
チョコレートを手も付けずに大事に飾ってあるのよ。
誰も知らないヒーローのお土産だからって。だから、
美咲の気持ちを分かってあげてくださいね」
「は、はい」
亮は自分をヒーローと言ってくれる美咲の
気持ちが嬉しかったが結婚の話をされるとそれは重圧だった。
「お待たせ」
美咲は仕度を終えてダイニングに入ってきた。
「さあ美咲、食べて。亮さんが手伝ってくれたのよ。
サラダにソーセージとスクランブルエッグそれにフレンチトースト」
「うふふ、美味しい」
美咲は亮が作ってくれた朝食は頬っぺたが落ちそうに美味しかった。
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美咲の車に乗ると助手席の美咲が嬉しそうに笑った。
「亮が家に来てくれて両親はとても
喜んでいたわ、ありがとう」
「いいえ」
「ねえ、ところで亮と母は何の話をしていたの?」
「別に料理の話だけですけど」
「そう、てっきり私をお嫁にもらってくれって言ったのかと思った」
「うっ!」
亮は喉を詰まらせて咳をした。
「私は警察庁へ行って指揮を取るけど亮は?」
「僕も銀座の事務所で連絡を待ちます」
「そうね。連絡をする・・・・」
4時起きの美咲は居眠りを始めた。




