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第120話 意外な人物

来たる五月十日、俺は沖縄県のフェリー乗り場にいた。

周りには三十人ほどの男女が俺と同じフェリーに乗り込もうと順番に待っている。

それぞれがお互いを牽制し合うように視線を動かしている様子から察するに、おそらくみんな格闘大会に半ば強制的に招待された殺人者たちなのだろう。


フェリーに乗り波に揺られること三十分、俺たちは無人島である竜王島にたどり着いた。

砂浜に下り立つとそこにはすでに俺たちの他にも五十人以上の男女が上陸していたが、皆一様に口をつぐんでいて辺りにはピリピリとした空気が漂っていた。


そんな中、

「あっ、ヤマトさーんっ」

緊張感のない声で俺の名前を呼ぶ者がいた。

声のした方を見るとあきらがこっちに向かって大きく手を振っている。


「あきらっ!?」


俺と目が合うなりあきらは俺のもとへと駆け寄ってきた。


「久しぶりヤマトさん」

「あきらもいたのかっ?」

「うん。ヤマトさんも来たんだね」

「ああ。こんなカードが届いたんじゃ無視するわけにもいかないだろ」

俺は[招待状]と書かれたカードをズボンのポケットから取り出す。


「あ、やっぱりヤマトさんにも送られてたんだそれ。僕も泊まってるホテルに届いてたんだよ」

そう言ってあきらも俺と同じカードを見せてきた。


「僕は別に名前が公表されたってどうでもよかったんだけどなんか面白そうだから来ちゃった」

何がそんなに楽しいのかあきらはにこにこ笑っている。


「面白そうって……あのなぁ、誰か知らないけど俺たちの正体を知っている奴がいて、そいつが俺たちに殺し合いをさせようとしてるんだぞ」

「僕は構わないよ。誰が相手でも負ける気しないし」

周りに殺気立った殺人者たちがいるにもかかわらずあきらは露とも気にせず口にした。

おいおい、それはつまり俺が相手でも殺すってことか……?


「一応訊くが、この招待状を送りつけたのお前じゃないよな?」

「僕が? ふふっ、そんなことしないよ」

「そうだよな。いや気にしないでくれ、念のため訊いてみただけだから」

あきらが楽しそうにしている姿を見てもしやと思ったが、よく考えたらあきらはいつもこんな感じだ。


「僕これでも結構忙しいんだよ」

そう前置きしてからあきらは手招きする。


俺が耳を寄せると、

「ヤマトさんにだけ特別に教えるけど、実は僕国から厄介な仕事を依頼されることが多いんだ。だからこんなカード作る暇はないよ」

あきらはそうささやいた。


厄介な仕事?


気になったので訊ねてみようかと思ったその時――


ガガッ。

……キーン。


マイクのスイッチが入った時のようなハウリング音が島中に響いた。


『えー……こんにちは皆さん』

どこかで聞いたことあるような声が大音量で聞こえてくる。


『わたしは角野春雄です。わたしが皆さんに今日の招待状を送った張本人です』


角野春雄?

その名前は確か現在の日本の総理大臣の名前だが……まさか。


すると俺と同じ考えにいたったであろう周りの殺人者たちが声を上げ始めた。


「角野春雄って首相だよなっ?」

「この声、総理大臣じゃないかっ」

「角野総理だっ。間違いないっ」


と――

「貴様ら静かにしろ!」

サングラスをかけスーツを着た一人の男性がみんなの前に出て叫んだ。

「ヤシンテウゾイエ!」


その瞬間だった。

空に大きなスクリーンが現れてそこに日本国総理大臣である角野春雄の姿が映った。

その両隣には名前は忘れたが内閣官房長官と防衛大臣の姿もある。


「ふーん……やってくれたね」

それを見てあきらがそうつぶやいた気がした。


『本当の目的はそこにいるただ一人の殺人者を呼び寄せることだったのですが、日本全国の殺人者の皆さんが全員集まってくれたのは嬉しい誤算です』


「なんだよこれっ!?」

「どういうことだっ?」

「なんで総理大臣が私たちのこと知ってるのよっ!」

と殺人者たち。


角野総理はそれらの質問には答えず代わりに官房長官が口を開いた。


『わたしは内閣官房長官の宍倉だ。ここからはわたしが話そう』

口ひげを撫でながら宍倉官房長官が言う。


『まずこちらの映像だが、そこにいるわたしの子飼いの部下であるサングラスをかけたスーツの男の呪文によって届いていることだろう』


その言葉に周りの殺人者たちがスーツ姿の男を見やった。

だがスーツ姿の男は口を一文字に結び微動だにしない。


『それからそちらの声はこちらには一切届いていないので何を訊こうが無駄だと言っておく。では話を進める』


俺たちは訳も分からず宍倉官房長官の話に耳を傾ける。

唯一隣にいるあきらだけは何かを悟ったような顔をしていた。


『石神あきら、今までご苦労だった。お前のこれまでの働きによって我が日本国の脅威となる人物はすべて消え去ったと言ってもいいだろう』

「ふん、よく言うよ。自分たちに都合の悪い連中を僕に始末させただけじゃないか」

あきらが口にする。


『よってお前はもう用済みだ。深く知りすぎてしまっているお前には死んでもらう。総理と話し合った結果そう結論が出た。しかしだ、お前は生半可な戦力では殺せないくらいに強く相手の心も読める。その上寝泊まりする場所は不定期に変えていて正確な居場所もわからないとあってわたしたちはどうしたらいいものかと悩んでいた……そんな時だ、我々はある殺人者を発見した』


宍倉官房長官は続ける。


『ここで今回の作戦の協力者を紹介しよう。ほら、いつまでも後ろにいないで前に出てきなさい』

宍倉官房長官がうながすと角野総理と宍倉官房長官、防衛大臣の後ろにいた二人の男女が前に出て二人の横に並んだ。


「っ!?」


俺はその二人の顔を見て心臓が口から飛び出そうになる。

理解が出来ず開いた口が塞がらない。


『今作戦の功労者の細谷和美くんとその婚約者の冴木くんだ』


宍倉官房長官の横に立ったのはすでに死んでいるはずの細谷さんと冴木だったのだ。

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