第二十三話「黙示録の男達」
豊田一光は水滴が滴る体をそのままにソファに深く腰を下ろした。
桜庭との激戦を終え、宿泊先の高級ホテルでシャワーを浴びたところであった。
間接照明で薄暗く照らされた室内が昂った神経を落ち着かせてくれた。
いい試合だった。これまで戦ってきたどの男よりも素敵だった。大抵、一撃で起き上がれなくなるのに、桜庭は何度も立ち上がり、思う存分技をかけさせてくれた。
今度会うときは、本当にお互いの命を懸けて戦うことになるだろう。そう考えると、全身を快感が包み込んでくれる。
「どんだけ~・・・」
一人、豊田はつぶやいた。
その時、玄関チャイムが鳴った。
もう、何よ、ひとがせっかく、濃厚なSEXの余韻に浸っているというのに・・・
豊田はバスローブを羽織、不機嫌そうに玄関を開けた。
そこにい立っていたのは、潜水艦黒船で黙示録の男達を運んだ男、ジョージ中佐であった。軍服に身を包んだ高身長の紳士、顔には額から顎にかけて大きな傷がある。一目で歴戦のつわものと分かる風貌である。
「なんだ、ジョージちゃん・・・あなただったの」
「失礼するよ」
二人は室内の大きなテーブルをはさんで向かい合った。
ジョージは葉巻に火をつけ、煙をぶかりと吐く。
「なによ、人がせっかく素晴らしい戦いの余韻に浸ってたってのに」
「なぜ、加賀を追いかけなかった」
「だって、桜庭ちゃんがあまりにも濃厚なディープピストンしてくるからお腹いっぱいになったんだもの」
「お前は、黙示録の4人のメンバー。お前の行動はすべて、我々国連軍の指揮下にあること忘れてくれるな」
最強の兵器とは何か?
核?核は強大な破壊力故に、使い勝手は最悪。政治的交渉の道具に過ぎず、最早兵器としての体を成していない。
では銃?銃は最もポピュラーな武器ではあるが、どこでも使えるわけではない。例えば、重火器を合法的に他国に持ち運ぶ際にはかなりの手間と手続きが必要になる。
最強の兵器とは、最強の兵器とは素手で一個小隊を殲滅出来るだけの力を持った人間である。
そんな人間がいたならば、彼らは身一つで対外国に潜入し、大きな騒動を起こすことなく速やかに密やかに敵を制圧することが出来るだろう。
それだけの力を持った人間が果たして現実にいるのか?答えはYESだ。
国連軍は有事の際に密かに敵勢力を殲滅する秘密部隊を擁している。
そんな人知を超えた格闘能力を持った男達。それが黙示録の4人である。
豊田一光はその中の一人であった。
黙示録の4人による乂門殲滅作戦は、加賀流が乂門を打ち破ったことにより、遂行されることはなかった。
が、新たに表れた加賀流と言う巨大な格闘軍団を国連は見過ごすはずがなく、彼ら4人に与えられた次なる使命は加賀流の殲滅であった。
豊田はそ柔道家としてのプライドを懸けて対加賀流戦に名乗りを上げていたが。同時に黙示録の4人の急先鋒として、加賀流抹殺の為にも戦いに参加していたのであった。
「何よ、あたしはあたしの好きなようなやらせてもらうわよ」
豊田は拗ねたように言う。
「大丈夫、お前はもう、俺たちの言うことを聞く必要はない」
「?」
「お役御免と言うことだ。黙示録のメンバーから外れてもらう。おい」
ジョージがそう声をかけると、玄関から一人の男が入ってきた。
若い男であった。シンプルな白のシャツにジーンズと言うラフな格好、もじゃもじゃの天然パーマに無精髭と言う風貌であるのに、柔和な表情でどこか人懐っこさすらかんじさせるのであったが、服の隙間、首元や、袖口から見える筋肉は引き締まり、発達し、どこか危険な野性味があった。
「これがお前の後任の九善鳳輔だ」
「どーも」
九善はへらへらと笑いながら頭を掻いた。
「私があなたたちの言うことをあんまりい聞かないから外されたのかしら。未練はないけど訳も聞かずにフラれるのはショックよ」
豊田はふー、とため息をついた。
「違う、九善がお前よりも強いからだ。弱者はメンバーにいらんからな」
「キングちゃんも同意見だった?」
「彼も『九善の方が適任だろう』と」
「強烈~!!!」
そう言うと、豊田は立ち上がり、バスローズを脱ぎ捨て、両手を柔らかく上げた。
戦闘態勢である。
最強を自負する豊田にとってこれ以上の屈辱はなかった。
「まいったな~」
九善は困ったように笑った。




