第五十四話 「第二試合」
第二試合。コロシアムの中央にカレクッドゥは姿を現した。
長身の男だった。浅黒い肌にエスニックな彫りの深い顔立ち。そして何より、引き締まった体に黄色い作務衣を羽織っていた。
「な!!!あいつ!!!テレビで見たことあるぜ!!!」
激闘を終え、一勝をチームにもたらした原がそう叫ぶ。
「そう、あいつは本名、宮藤春信。神戸の小学校で教員をしていたが、同僚を激辛カレーで毒殺。それだけではなく、学校中の車を踏みつぶし、死刑を求刑されていた男だ」
ドラゴン藤浪がそう言う。
「大丈夫かよ。うちの次鋒は勝てるのか?そんな凶悪な男によぉ…まぁ、俺が貯金作っといてやったから大丈夫か」
原は笑いながらそう言った。
「吉岡を甘く見るなよ…」
冷たい、よく通る声でそう言ったのは、加賀八明だった。彼は腕を組み、じっとコロシアムを見ている。
「でも、大将。やつはトーナメント1回戦敗退だしよ。そもそも格闘家じゃなくて教員だぜ」
原が加賀に問いかける。
「違う、やつは教員ではない…狂員だ」
コロシアムに1人の男が現れた。
その男は全身を甲冑に身を包んでいた。異様な立ち姿であった。しかし、一番異様だったのはその男が連れているモノであった。
彼は手綱を持っていた。その先には首輪があった。首輪をはめているのは裸の男である。
裸の男が四つん這いになり、甲冑の男に散歩させられているのだ。
「おいおい!!!まるでバイオレンスジャックのスラムキングじゃねえか!!!」
「人犬だ!!!現代に蘇った人犬だ!!!」
会場は大いにどよめいた。
そう、この甲冑の男こそ、加賀一派次鋒。吉岡清一郎である。
そして、裸で鎖に繋がれた男こそ、喧嘩凸版トーナメントにおいて、出場者の抹殺を目論んでいた乂門の工作員の1人、デスイーター本郷である。
トーナメント後、吉岡とその師匠加賀七明に引き取られた本郷は再教育を受けたのであった。
まず、彼らの洗脳…もとい教育により、自我を崩壊させられ本郷は自らを吉岡に従う犬と思い込むようになっていたのである。
完璧な主従関係。これこそが吉岡の望む教育の環境であった。
「あんたが、有名な帝王学の吉岡か」
カレクッドゥが吉岡を見据えて言った。
「いかにも…俺こそがグレートティーチャー吉岡である。お前のことも知っているぞ…カレクッドゥ…お前は教育者ではない。お前に教育者を名乗る資格はない」
「言ってくれるじゃないか…コイツ」
2人はコロシアムの中央で向かい合い、睨み合った。
第二回戦開始を告げるドラが鳴った…