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最強格闘家になろうシリーズ  作者: カカカカカ
第二部「喧嘩凸板最強最大トーナメント編」
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第二十九話 「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」

前田の拳が宙にはじき出される。

オーソドックスなワンツーのコンビネーションパンチ。

メリケンサックを仕込んでいるであろう拳をモロに受ければ、体が壊れてしまう。

山口は身をひねり、拳をかわしつつ、後ろに下がって距離を取った。


その山口の側頭部に向かって、今度は前田のハイキックが飛ぶ、前田は足にデカい安全靴を履いていた。

しまったと思う間もなく、山口は側頭部にハイキックをモロに受け、身体が吹き飛んだ。


マットの上に倒れ込む山口。

前田はその安全靴に金属を仕込んでおり、その衝撃たるや凄まじかった。

山口の視界はグラグラと揺れ、脳震盪を起こしていた。

なんとか、膝立ちで立ち上がる山口の顔面に前田のサッカーボールキックが襲う。

今度は両腕で塞いだが、尚も山口の体は後方に吹き飛んだ。

その身体に前田が覆いかぶさり、マウントポジションを取ろうとした。

その刹那、前田の体がコテン前のめりにつんのめった。


流石サンボの山口。前田がマウントポジションに入ろうとした瞬間、下から前田の尻を膝で叩き、バランスを崩した前田は両手を前に突き出してつんのめったのだ。


山口はその腕を取って、腕絡めの形を作った。

作ると同時に折った。


バギィっと嫌な音が会場に響く。


前田が折れた腕を無理やり引き抜き、立ち上がった。山口も立ち上がる。


前田の腕が痛々しくあらぬ方向を向いている。

前田は全身にヌメヌメとした汗をかき、片手を上げ、両足を開き、ファイティングポーズをとった。


この試合、バーリトゥドルール。なんでもあり、決着はギブアップか失神のみである。


山口も立ち上がり、再び2人は相対した。

「僕はねぇ、あんたにもね、愛ってやつをね、ちょっとばかりね、伝えたいわけよ…ぼかぁね、あんたのね、かけ違えたボタンだけ外すんじゃなくて、今まであんたが泣いたこと、はにかんだ言葉で話してほしいの!!!」


山口の熱い言葉が会場に響く。

観客のボルテージが最高潮に達していた。

「山口ぃいい!!!」

「愛と平和!!!」

「悲しみで花が咲くのかよお!」

観客たちは山口の言葉に感動し、思い思いの言葉を叫んでいる。


「うるせえよ!!!」

前田が叫び、鋭いストレートを山口に浴びせようとした。しかし、山口は体を低く下げ、ロシアンフックで前田の顔面にカウンターをたたき込んだ。


「な!?」

会場の矢吹晴男は叫んだ。

「どうしたんですか?」

隣の真島浩高が聞く

「山口はスポーツサンボではなく、コンバットサンボも使うのか!?」

サンボには大きく分けて2種類ある。

全打撃に対応した軍隊用サンボである、コンバットサンボ。そして、関節技、投げ技中心のスポーツサンボである。

もしも、山口がどちらのサンボ も高い水準で使えたならば、

これは山口が打・投・極の全攻撃に関してのエキスパートであることを意味する。



山口の一撃で前田は倒れ込みそうになるのを必死で抑え、ミドルキックを放った。

そのキックの腹にぶち当たる…寸前に軌道を変え、山口の側頭部にまたヒットした。

しかし、今度は山口は倒れない。

山口は側頭部から血が吹き出しつつも、仁王立ちで前田を睨みつける。


「バケモノ…!!!」

前田が苦々しく言い、ストレートを山口の顔面に放った。

ぐしゃりと山口の鼻が折れる嫌な音が響く。

しかし、山口は倒れない。

尚も前田のことを見据えている。

「そうだ!!!俺らはバケモノだ!!!ボヤボヤしてる場合じゃねえぞ!!!衝動バケモノ!!!」


観客がワッと湧く。


この自分よりも遥かに小さい男の異常な熱、気迫、カリスマ性に前田は圧倒されていた。

おそらく、格闘技の技術は山口の方が上だが、フィジカルでは前田が大きく上回っている。

しかし、責めきれずにいる。


この試合、初めて山口が動いた。

低く体を構えて、タックルをぶちかました。

前田は押しとどめようと身体で踏ん張るもすぐに体を崩され、倒された。

何故か自分にも分からなかった。

腕を折られたがまだ戦える。

しかし、心がそれを拒絶している。

この男と闘いたくない。

前田は怯えていた。


すぐさま、山口は膝十字固めに移行した。

前田の膝をガッチリと固める。

前田を激痛が襲う。

「忘れないでこの世には痛みと悲しみを食いしばって!!!!起こせる奇跡があるんだよ!!!」

山口がそう叫ぶ。

「お前、ずっと誰のことも見てなかっただろ?お前、ずっと誰にも見られてなかっただろ!?

安心しろ、ぼかぁよ、あんたのことずっと見ててやるからよ、ミラクルをよ、お前と起こしてえのよ!!!!今までの過去なんてなかったかのように戦おうぜ!!!」


うぉおおおおお!!!!

会場から地響きが鳴る。

熱狂熱狂熱狂、それを超えた感動。


前田は訳が分からなかった。

しかし、何故か涙が流れた。

この男、山口に俺は完敗した。

技でもない、体でもない、心で完敗したのだ。


「俺の負けだあ!!」

前田が叫ぶ。山口は膝十字固めを緩めて立ち上がった。

前田はマットに突っ伏して泣いた。

暴力、それこそが自分の存在意義であり、そして存在理由であったのだ。

自分の全てを否定された。しかし、嫌な気持ちはなかった。ただ、ただ、涙が溢れるだけだった。

喪失感?怒り?憎しみ?どれも違う。

何故か前田の胸中に広がるのは満足感だった。

前田の目の前に手が差し伸べられた。

山口の手だ。その手を頼りに立ち上がった。

「ちくしょう…ちくしょう…絶対、絶対に次やるときは負けねえからな」

前田は泣きながら、そう呟いた。

「ああ、いつでも待ってるぜ」

山口はそう言い、握った前田の手を高く持ち上げた。


観客が叫ぶ。

素晴らしい試合だった。

これぞ、格闘技の全てであった。



第七試合、勝者!!!山口ヴィクトロヴィッチタッカーシー!!!

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