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ナイトメア ~白銀の契約~  作者: 仲仁へび
ひとやすみ
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01 俺、あれ? 疫病神じゃね?



 出だしからあれだけどな。

 たまにさ、ふとした瞬間に「あれ?」って、思う事ねぇ?

 なんかさ、ほら、クラス全員で遠足に言ったら、めったに降らない雨が降ってきて、イベントが潰れた時とか。

 または、貴重な休みの日に家族でよーしでかけるぞーって言った瞬間に、友達から遊びの誘いの電話が入って来るとか。


 そう、その度にさ、思うわけよ。


 俺って、じつは雨男じゃね?

 もしくは間が悪い奴じゃね?

 って。


 べっ、別に例え話だけどな!


 で、俺だったらなんて言うんだろうな。


 学校終わりに、濡れぎぬ着せられて怪しい奴に捕まって北海道にとばされた。すぐ異能バトルアクションに巻き込まれて、美女の友達を安らかに眠らせるお手伝いなんかもしたな。

 気になる女の子が実は辛い境遇だった事が分かっても、大した事してやれないどころか、父親に返り討ちされたり。

 ツンデレ美少女と放課後ショッピングに出たら、組織ぐるみのイベントに巻き込まれて、孤立無援になったりも……。


 やべー。

 俺って実は疫病神なんじゃねぇかって、最近たまーに思うんだよな。


 そんなわけねぇと思うけど。

 あんまりにも関わり過ぎじゃありませんこと!?

 ちょっと前まで一般人でしたのよ!?


「うぉぉ、行ったな! よし。もう大丈夫だぞ」

「あ、ありがとうございます。牙さん」


 しかも、何か現在も厄介事に巻き込まれているところですし。


 実は俺。

 つい先日ノートを写させてもらった女の子が、ナイトメアに襲われてる場面に居合わせて、それを助けて逃避行中。


 ダイヤモンドダストが舞い散る極寒の空気の中を走ってる最中だ。


 俺の日常って何なんだろうな。

 普通じゃない人生に憧れてた日々が遠い昔のようだ。


 なんなの事件!

 そんなドミノ倒しみたいに来て、俺をどうしたいの!?

 廃人にしたいの!?


 取りあえず、一人ノリツッコミしてる場合でもないな。


 俺は、ここまで引っ張って来た女の子に声をかける。

 前髪ぱっつん、おさげのこれぞ文学少女という見た目をした、大人しめの女の子だ。

 俺の通ってる学校の制服と同じ物をきていて、真面目な内面を表すかのように校則通りの服装。


「えーと」


 荒い息をついていて、今にもぶっ倒れそう。

 顔面蒼白だし、めっちゃ怖がってる。


 まあ、そういう反応だよな。

 俺もそうだった。


「大丈夫か?」


 もっと気が効いた事言えればいいんだけど、そんな人事しか出てこなかった。


「はい、大丈夫です」

「確か……あんたは」


 そういえば、前にあった時は名前聞きそびれたんだったな。

 俺が何を訪ねたいのかわかったらしい。

 その少女は、あっと声を漏らして、自己紹介した。


「あやめです。近藤あやめと言います」


 丁寧にお辞儀も付けて。

 おお、良い所の御嬢さんって感じ。

 親の教育が良さそう。


「そっか、近藤さんね近藤さん。近藤さん?」


 ひっかかりを覚えて一度思考停止。

 最近どっかでその名前聞いた事なかったっけ?


「ひょっとして駄菓子屋のおばあさん、もとい近藤あゆみさんの親戚かなにかで?」

「え? はい。家族ともども親戚付き合いをさせてもらってます」

「まじか、世界は狭いな」


 多少のひっかかりを解消しながら、世界のスケールについて考えつつ、こちらも自己紹介。


「俺は牙、船頭牙だ。悪いな、居合わせたのがこんな頼りない奴で」

「いえ、そんな事は……」


 顔を俯かせて何やらもごもご言ってるようだけど、良く聞こえなかった。

 

 とりあえず、さっきのナイトメアは俺じゃ太刀打ちできない部類だったので、救援を呼ばなければ。

 携帯を取り出して、本部の人間に電話。


 俺達がいるのは、人気の少ない道だが、うっかり誰かが被害にあったら大変だ。


 ちょっと近道しようとしたら非日常って、こんにちは率が高すぎねぇ?


「あー、えーっなんて言うんだっけな。もしもしオペさん?」


 ここ数か月ですっかりお世話になってしまったオペレータの皆さん(通称・オペさんズ)に話しかけるのだが、何かを説明する前に向こうが事情を把握したらしい。


「またですか。所長、例の新人がナイトメアに遭遇したそうです!」

「話早ぇな……」


 思う所はあるのだが、被害が出ない内に討伐されるのが一番なので、ちゃっちゃと情報を伝えていく。


 そして、やるべき事をやった後で、その場にへたりこんでいる少女……近藤あやめへと手を差し伸べた。


「ふぃー。まあ、あれだ。何かすげぇもん見ちゃったけど、大丈夫だ。明日には綺麗さっぱり忘れてるから」


 実際、抗体組織の記憶処理班の人間は優秀だ。

 彼らが働いているから、俺も水菜や理沙達と関わるまで、ナイトメアのことなんか知らなかったし。


 俺も何度かこの付近でナイトメアの出現に立ちあった事があるけれど、不気味な怪物出現! ……って具合に地域新聞の一面をにぎわせたなんて事なかったしな。


「忘れ? あの……?」


 けど、忘れるなんて言われて納得できるような人間は少数派だろう。

 近藤さんは俺が何を言っているのか分からないと言った風に、戸惑い顔だ。


 こういう時に人間の反応って二手に分かれるんだよな。

 何が起きたのか、これからどうなるのか根ほり葉ほり聞いてくる人間と、見なかった事にして目と耳を塞ごうとする人。


 俺?

 わかりきってる事聞かないでくれよな。


 格好悪いし、あんまり思い出したくねーんだよ。

 

 近藤あやめはどっちだろう。

 俺の話にたいしてどんなリアクションをとるのだろうかと、見つめていたら……。


「忘れるなんて、嫌です」


 思いのほか、強い口調でそんな事を言って来た。

 見た目的には大人しい文学少女っぽいのに、その声には強い意思が感じられた。


「近藤さん?」

「牙さんと一緒に戦わせてください。私も力になりたいんです!」


 あれー?

 この流れは想定していなかった。

 これはちょっと予想外だぞ。



(※6.28 一部内容追加しました)

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