変身と進化、そして眠気覚まし
「hisasiburinomaryokuですこぶる快調になってきました」
魔力を受けてリーポォが通常音声で喋り出す。
何故こんな変化をするのか、この貴金属を拾った世界の学者に見せたら腰を抜かしそうである。
とはいえ、その世界では私が実験材料にされかけたので二度と行きたくはないが。
さて、光が消えて、リーポォは何故か人になっていた。
人、しかも初希に瓜二つだった。
「何故その姿になった?」
「我が主人、お許しを、ちょっとした冗談です」
「うわあ、ガゼルのガルフレとそっくりじゃん、すっごいな、存在から中身まで完全にコピーなんて、討ちにほしい位だ」
明るく豊かな初希に比べると無表情なので違和感がすごいが、それ以外は確かに初希そっくりで、私の背にいるソゥヲバーリュも感心した声を上げる。
だが、それどころじゃない、球体の怪物がまた溶解液をまき散らしながら回転して向かってくる。
初希の姿をしたリーポォはそれに気づいて振り返り、手をかざす。
使う術はもちろん初希の使う天法、しかし、その中でも禁術とされているモノを何のためらいもなく放つ。
その術、初希は知らないはずだし、初希が放ったとしたらおそらく力に耐えられず、一年は植物状態になると思うのだが、そこは私から送られた魔力でカバーしてるのか、形を維持している。
その禁術は曰く、膨大な天の力のを一点に集めて放つ強大なごり押しのような技で、世界の狭間は、様々な世界の入り口から力を集めることが出来る都合上、その威力はすさまじい。
怪物一匹消し飛ばすくらいには。
盛大に放出した後、振り向いたリーポォは笑う。
「やりました我が主人」
「いいからその姿はやめろ」
やってくれたのはいいが初希の姿はやめて欲しかった。
右腕が崩れ落ちているし。
ついには人の姿になり、また、人間のような学習能力まで手に入れたリーポォは、嬉しそうに私の周りを飛び回っている。
予期せぬ進化だ、今はそれに構っている暇なんてあまりないのだが。
リーポォの姿は初希から別の少女の姿に変わっている。
どこにも見覚えがない少女の姿だが、私の記憶の中からいくらかの人間の姿を統合したのだろうか。
こいつにこんな能力があるなんて記憶はないのだが。
前に使った時はせいぜいが私がめぐって見てきた世界の兵器やら武器、便利道具に変わる程度だったのに。
そんな事よりリモーピョはどうなったのか、私はリモーピョが接敵した辺りに目を凝らす。
探知の詠唱と併用してみると、苦戦しながらもなんとかうまく立ち回れているようだ。
一対の人型を相手に姿を消して、かき乱しながら不可視の弾丸で徐々に削っている。
人型の方は何かを喚き散らしながらもイラついた様子でリモーピョの位置を探り出し、攻撃を当てようと躍起になっているが、探知の術を知らずにやみくもに気配を探ろうとするだけではリモーピョには勝てない、リモーピョの透明化は気配も何もかも消えている。
どこぞの妖怪とかのように鏡に映らない位に完璧な透明化だ。
私のような高度な探知の詠唱などには引っ掛かるが。
「あれくらいの動きが出来るなら鍛えれば私がいなくても戦えそうだな」
「でも今のままじゃあ無理だね、ああ~ねむ、もう少し寝るわ」
怪物を出す程度しかしていないのに何をそんなに眠いのか。
というか、眠いなら眠気覚ましをしてやればいいと思いつく。
「流れる気よ、溢れよ、巡り巡って弾けよ、我、詠唱す」
「え? 何その詠唱、何で今それを唱えるの? ……うぬぅんっ! は、はあぁあん、ふっ、ふぬっ、あ、ああはあああああ!」
という事で眠気覚ましと日頃の疲労を取ってやる事を兼ねて、活性化の詠唱を一つ。
うなり、喘ぎ始めたソゥヲバーリュの声を聞きながら、リーポォと共にリモーピョの元へゆっくりと飛んで行った。
「ちょっ! まっ! ふうぅん、ごめん、起きるからっはあぁん、やめ、やめれえええ!」




