自己紹介と勧誘、そして狙い
「さて、世界管理官管理課第一武装部隊隊長兼危険世界監察係兼世界管理官第一位権利者のソゥヲバーリュだ、どうもよろしく頼むよ、逃亡者約二名、奇抜な衣装をしてるねえどうでもいいけど」
「クォリョ、正直管理官にいい思い出はねえけどそれは組織に属していたあたし達のせいだし、これからよろしく」
「モーピォンォです……あの、わたし達は捕まるんでしょうか?」
「いんや、情報提供者だからね、ちょちょっとお手伝いはしてもらうけどそれでチャラにしてあげるよ、ありがたく思う事だね、何ならかしずいて敬う事だね、そしてついでに世界管理官としてこっちの下っ端になってくれると嬉しい、なんせ人手が不足してるからね、無理強いはしないけど、人手不足だけど無理強いはしないという寛大さも敬っていいよ」
「勧誘するなら後でやれ」
ソゥヲバーリュが来たので自己紹介を互いにしていた。
場所は先程までいた世界の狭間だが、世界管理官の特権により、辺りから切り離された小さな部屋の世界を作り出してテーブルをはさんでクッションに座り、そこでしばしの休憩といった所だ。
洗脳から解かれたとはいえ、クォリョは力を使いすぎて疲れていて、モーピォンォも束縛から逃げようと暴れていたのでこちらも同じく力が減ったのか、わずかに透明化が解けている。
モーピォンォの属する透明人間の一族は、常に透明であるが、疲労したりすると正体が透けて見えてきて、その姿全てを世界にさらすと死んで、永遠に消えるという稀有なタイプらしい。
クォリョの力はどこぞの世界で妖怪と呼ばれる存在を撃ち殺すために身に着けた精神力で作るモノだとモーピォンォの記憶で見た。
二人共消耗が激しいので、今も机に突っ伏しかけで体をぐらぐら揺らしている。
「話は大体ガゼルから聞いているよ、謎の組織なんて全く困ったモノだ、まあ世界管理官の中でもこのソゥヲバーリュが来たからにはもう安心、少し休みなさい」
ソゥヲバーリュがそういうと二人のまぶたが落ち、床にあおむけに倒れ、寝息を立て始めた。
世界を作った本人であるソゥヲバーリュが二人に干渉して眠らせたのだ。
この二人には伝えられない情報も話すのだろう、ならもう少しやり方もありそうだがまあいいか。
「さてガゼル、女の子二人も連れてきて、愛しの彼女が聞いたらどうなるかなあ?」
「そんな事で心を乱す初希じゃないしそういう目的で連れまわしているわけではない、だがもしそういうふうに吹き込んだのならば、そうだな、私の平穏を乱したとして……」
「わかってるって、冗談だよ冗談」
「あまり冗談を言っている場合ではないが」
こんな時でもソゥヲバーリュは余裕綽々でにやにやしながら私に偉そうに話しかけてくる。
だが、それを一々指摘していると突然キレて暴れ出すかもしれないのであまり言わないでおこう。
「急かさないでよ、来ても何も出ないよ、なんせ世界管理官のデータベースをもってしても何も出なかったからね」
「そうか……大切な事をサラッと言うな」
ソゥヲバーリュからの突然の知らせに私の心臓が跳ねた。
世界管理官のデータベースにはすべてと言っていい世界のデータが入っていて、その中に存在する人々のデータが乗っているのに、そのデータベースに載っていないという事は世界管理官に匹敵する力を持った何らかの組織という事になる。
具体的に言えばマリィコールズくらいの規模と力を持った巨大な組織が今回の事の裏にいるという事になる。
そして、クォリョとモーピォンォはその組織に操られて私の元に来た、という事はその狙いは私である可能性が高い。
求めるモノは私の力か、知識か、それとも他の何かか、本当に厄介なことになってきたな。