解析と生き縄、そして洗脳方法
不可視の銃弾が飛び交う中、私はクォリョの解析を続ける。
体に変わりなく、どうやってこれほどの洗脳を可能にしたのか。
あの世界に何かされたことは確かだが。
「を、ここここここっを!!」
「クォリョ! やめて!」
「そいつは洗脳されている、離れろ、死にたいのか」
心を通わせた相棒から攻撃を受けたショックからかモーピォンォに言うが私の声は聞こえていないようだ。
しょうがないのでクォリョの銃の射線から転移させて私の近くへ連れてきて、ビリゥヴァの中から出した生き縄を腰に巻き付けて手に持ち、迂闊に動かないようにする。
そしてクォリョの方はクォリョの方で、拘束の詠唱を唱えるか。
「離して! 離して!」
「落ち着け、お前がいくら叫んでも届かないという事はわかっているだろう? 私が何とかする」
「信用できないです! さっきだってわたし達だけを危険な世界の中に行かせて自分は外にいたじゃないですか! クォリョを処分する気でしょう!?」
洗脳されているクォリョとは違う意味でモーピォンォは私の制止を振り切ろうと縄に手を伸ばし、何らかの力を行使する。
液状の何かが手から滴り、縄を溶かして千切ろうとしている。
まあ、その力は先程記憶を読んだ時点で知っていたので問題はない。だからこそ普通の縄ではなく生き縄なのだ。
縄が蠢き、分裂して、モーピォンォの体中に伸び、触ろうとしてくる手を避けて両腕の肘に巻き付き、それから背中側に回って足首に巻き付いて、腰に巻かれた縄に滴る何かを当たらないように拘束する。
生き縄は持ち主の意思を読み取って形を変える縄、とある世界の自分の体から縄を作る一族の男が魂を込めて作った伝統の一品、時々エサのわらをあげないとすねていう事を聞かなくなるが、丈夫で強靭で意外と茶目っ気のあるいい縄だ。
暴れる生物を拘束するにはちょうどいい。
大体わたし達だけ危険な世界の中云々は自分達がはやる気持ちでろくに調べずに、しかもこっちの話を聞かずに飛び出したのに私のせいにしないでほしい。
まあ、それは後でいいか。
今はクォリョだ。
「を! こ!」
手に持った銃の引鉄を何度も何度もこちらに向かって引くクォリョ。
当然こちらには効かないが、それでも撃つ、気狂いかの如く何度も何度も。
逃げない分にはありがたい、しっかりと分析できる。
じっくりと解析させてもらおう。
・
「ふむ、成程、巧妙な事をするな」
結構時間はかかったが、解析は終わり、クォリョを洗脳してる方法がわかった。
「はあ、はあ……わかったんですか? はあ、はああ……」
あれからも生き縄から逃れようともがいていたモーピォンォは疲れてぐったりしたことで冷静になったのか、息を荒くしながらも私に目を向けている。(透明なので視線を感じるだけだが)
「ああ、まさかと思う方法だが子宮の件といい、よくこんなことができるモノだ」
洗脳の方法、それはその名の通り脳にあった。
人間の脳に刻まれたしわ、それを洗脳の烙印の代わりに利用していたのだ。
頭の中に子宮に刻まれた烙印と同じ形のしわを発見した。
普段は休止しているそれは生きている世界の主であろう組織の何者かが世界を介して起動させたのだろう。
だが、脳自体を媒介とするために判断能力が下がり、今もクォリョはこちらに効かない攻撃を延々と続けている。
タネが割れれば簡単な事か、少し面倒だが脳を少しいじって烙印となっているシワにほころびを生じさせればいい。
精密で繊細な洗脳方法なので、少しでもいじればすぐに解けるだろう。
何でクォリョの方だけ洗脳したのかわからないが、とっとと洗脳を解いてやるとするか。