壊れる器と打ち明ける秘密、そして最後の一撃
「ガゼルさんをサリーのモノにする……いや、ガゼルさんはサリーのモノ!!」
「過去も、これからも、私はお前のモノではない、私は私のものだ」
「うるさい!!」
輝く銀世界をその身に纏ったサーリョックォが腕を振る、それだけで鎧となった世界が揺れて空間に大震動が起こる。
詠唱で張った障壁は脆くも崩れ去り、余波を受けて私の体が引き裂かれん程の痛みを受けた。
まさか、世界を纏うとは思わなかった、予想外の攻撃だ。
何とか背後の初希は守ったが、腕の亀裂が大きくなり、肩の方まで熱い痛みが進行して来た。
余波でこれだ、まともに食らえば器が崩れ去り、初希の身の危険が及ぶ。
「あ……え? なんなのこれ、さっぱり意味が分からないよ」
後ろでは困惑する初希、もうこれは説明せざるをえないか。
私は初希に思念を飛ばす。
「こんな事に巻き込んでしまってすまないな初希、今から話す事は初希には受け入れられない、または信じられないことだろう、しかし、私は真実を話す」
「えっ! ガゼル……頭の中に声が……」
突然話しかけたから初希が驚く。
「あそこにいるサーリョックォに聞かれてはまためんどくさい事になりそうなんでな、私の思念を直接頭の中に飛ばして話しかけている、初希の思念を読むこともできるから口に出さずに思うだけで会話が可能だ、話を聞いてくれ、頼む」
「えっと、色々とワケがわからないんだけど、ガゼルは何者なの?」
「それは――」
思念同士の会話は考えて言葉を出す、という段階を飛ばすのでスムーズにできる。
サーリョックォからの攻撃を受けないように転移を繰り返しながら、私は初希にこの事態に至ったおおよその経緯、それとここが初希が住む世界の外だという事、そして私の事を話した。
初希は私の話に大きく動揺していたが、どうやら信じてくれたようだ。
「よかった~、ガゼルが悪い人じゃなくて、わたし、不安で……不安でしょうがなかったんだよ?」
初希が安堵の息を吐く、そのため息からはかなり悩んでいた事を感じる。
「すまない、初希に心配をかけたくなくて秘密にしていたのだが逆にそれで不安にさせていたとは」
「ううん、いいよ、ガゼルが本当の事を言ってくれて不安はもうなくなったから、まだちょっと世界の外なんて現実感ないけど、ガゼルが本当の事を話してくれたのが嬉しい」
少し声を震わせる初希、私の首筋にぽたりと垂れたのは涙か。
しかし、今はまだ終わっていない、サーリョックォは依然として私に狙いをつけて世界を振り回している、だが、私の心は軽かった。本当の事を話しても初希は初希のまま、私を受け入れてくれたのだ、それが嬉しくて、だから私はこの気持ちを終わらせないために戦いを終わらせることにした。
「初希、すぐに終わらせる、そしたら帰って久しぶりに二人でゆっくりしよう」
「うん、ガゼル、お願い」
初希にお願いされたならやらなければな。
私は思念を送るのをやめてサーリョックォを見据える。
サーリョックォも私の事を世界の向こうから見据え、目を光らせた。
「何よ何よ何よ! 仲良くして! ガゼルさんはサリーのモノなのに、なのになのにいい!!」
「お前がそうなってしまったのは私のせいでもあるかもしれんが、それでもやりすぎだ、私はお前を許せない、せめて苦しまないようにしよう」
世界を振り上げるサーリョックォに私は両手のひらを向けた。
「サリーのモノにならないガゼルさんはいらない! 無くなって消えてえ!」
激情と共に振り下ろされるサーリョックォの腕、それと共にサーリョックォの鎧がなくなった。
世界を丸ごと投げたのか!? そんな事をすれば圧縮された世界が元に戻ろうとして周りの世界まで巻き込むぞ。
それほどの思いがこもった一撃か、だが打ち砕かせてもらおう。




