エンドフォグと焦り、そして崩壊
エンドフォグとは凶暴な生物と無機物の間の何かで構成されたもので、世界を破壊するという意思だけをもって発生し、世界の狭間を飛び交い、気まぐれかそれとも何か基準があるのか、どこかの世界に入り込んでは辺りのモノを壊し吸収し、力を蓄えては壊すを繰り返して最後には世界をも壊して食べてしまう奴だ。
しかも私の住む世界はここの位階世界の塔の中では中腹より少し上あたりにあるのでもしここが壊れてしまったらそこから上が崩れて位階世界自体が滅んでしまう可能性すらある。
さらに単体で世界を滅ぼせるというのに複数、群れになっていたという事はそれだけ時間に猶予がない事になる。
不味い、とても不味い。
世界管理官は何をやっているのか、いくら忙しいといってもこんな異常事態を見逃しておく程ではないはず。
それとも何かが起こっているのか? 私が世界管理官である知り合いの元へ行った時はそんな様子はなかった、突発的にこんな異常を放っておけるほどの事は起こらないはずだ。
いや、何が起こるかはわからないから断言はできないが。
文句を吐いている場合ではないのでとにかく飛ぶ。
とにかくまだ世界の中に入っていないエンドフォグに対処、行動不能にする程の時間はない、どこかに飛ばす、まとめて転移の詠唱で強引にどけるしかない。
しかし、どこに飛ばすか、場所によってはまた別の世界を崩壊させてしまう。
この前未開領域を崩壊させてしまったばかりだが、今回はそれよりも被害が大きく、広がる話だ。
それこそ今はここにいない世界管理官が私を捕まえに来て殺してしまうかもしれない。
エンドフォグは私が近づいても全く反応することなく世界に入っていく。
一刻も早く、一つでも多く飛ばさなければ。
ではどこに? と少しの思考後、崩壊させてしまった未開領域のあたりに飛ばせばよいと思いつく。
「飛べ、思いの場所へ、瞬間と共に、我、詠唱す」
思ったら即実行、まとめて詠唱で転移させる。
その際体の中の魔力がかなり持っていかれてしまったが、それでもいつもよりは少ない方だ。
ヴォバォモからもらったアノラゾのおかげであろう、本当にありがたい。
命の恩人だからと私はいろんな物を貰っているがその倍はその物に命を救われている。
感謝しながら、使わせてもらわなくてわ。
世界の外にエンドフォグはいなくなったので私は世界の中へと飛び込んだ。
・
世界の中、いつもの私の部屋ではなく、今回は暗い森の中に出てきた。
基本的に世界の外からここに入った場合はここに繋がるのだ。
私が親しい人間には直接私の元に繋がるようにしているだけで実際は世界の外との口はここにある。
エンドフォグもここから入っていったのでここから出ればまだ近くにいるだろう。
「映し出せ、我が前に、望む者の場所を、我、詠唱す」
即座に探知の詠唱を発動し、エンドフォグの行方を探る。
すでに世界の中に四方八方に散ってしまっているのが私の頭の中に映し出された。
この世界は初希が使っていたように天法と呼ばれる術が存在する世界で、それと同時に存在する人を襲う魔物とその術を用いて戦っている。
初希の仕事もその魔物関係の仕事で、この世界の海の底から現れる深海魔と呼ばれる魔物と戦う海馬撃退部隊、略して海撃隊に所属している隊員だ。
海撃隊のように魔物と戦う組織がこの世界にはいくらか存在しているが、それでもエンドフォグ相手に足止めが出来るかどうか。
あの圧倒的な破壊の前に足止めすらできないかもしれない。
脳裏にはエンドフォグと相対して無残に殺されて吸収される初希の姿。
そんな事にならないためには私がやるしかない。
私は脳内に映し出されたエンドフォグの座標に飛んだ。
まずは一つだ。