ビリゥヴァとヴォバォモ、そしてアノラゾ
風に吹かれていくつもの布が揺れている。
日の光を浴びて輝く広い緑の丘の上、そこに建つ大きな木の家は揺れていた。
何が起こっているかといえば、中に住んでいるヤツが仕事をしているからだ。
そして私はそこに用があって飛んで来た。
身体の器はほとんど完成していて、帰れるであろうからその前にやるべき用事を済ますためにここに来た。
ココココ子とエヂィペンはあの後もしっかりと教育をしたので心配する事は無いだろう。
なのでやるべき事は主に三つ、まずは初希へのお土産、かなり長く家を空けてしまっていたのでそのお詫びの気持ちも込めていいモノを探しておかなけれればならない。
次に大きな気配を封じ込めた体をどこかに預ける、これは知り合いにいい預け先があるのでそちらに頼らせてもらう事になっている。
そして最後に、ビリゥヴァの回収である。
今は先日修理に出したビリゥヴァの修理が終わると言われた時間なので私はここに来た。
とある世界の果てにある美しい丘を見ながら私は木の扉の前に降りたった。
「ガゼルだ、いるか?」
「はーあーい~、いるよ~がぜるんっ!」
扉をたたきながら呼びかけると間延びした声が聞こえて、しばらくすると扉が開き、向こうからこの家の主が顔を見せた。
一見人のようだが、その目は昆虫のトンボのような目をしている彼は私が昔この世界で助けた裁縫を専門にしている職人、ヴォバォモだ。
「まあまずは上がってよ」
「おお、ではお邪魔します」
「どうぞどうぞ、ちょこっとちょこっと散らかってるけどね~」
初めて見た人間には恐怖を与えるこわもてだが気さくでいいヤツだ。
お言葉に甘えて家に上がり、ウッドチェアに腰かける。
散らかっているといたわりにはきれいな室内は、明かりをつけていないが、窓から差す日の光だけで十分に明るく、すがすがしい風が通り、快適な場所であった。
「で、だ、ヴァバォモ、修理の方はどうだ?」
「う~んそれがねぇ、ちょっとまだ手間取っててね~、術式が変な壊れ方してるし、ところどころ痛んじゃってるしでもっとかかるかもしれないんだぁ、ごめんなさい」
「いや、謝る事は無い、その分役に立ったという事なのだから」
「うん、そう言ってくれると助かるよ」
ビリゥヴァは私が危険な時によく助けてくれたし、普段からよく使用しているので、消耗してしまうのは当たり前の事だ。
ならば、それが最高の仕上がりになるまでまた待つとしよう。
しかし、そうなると困ったな、しばらくまた空間を開いてそこに収納しなければならないな。
「ふふ、困った、て顔をしてるね? もちろんそんながぜるんに一応代わりになるものを用意してるよ、安心して」
私の心を見透かしたようにヴァバォモは自らが纏っているローブの中から手を出した。
節が多くて細い虫の足のような五指で出した畳まれた織物を受け取る。
開いてみるとそれは長袖の黒いワイシャツだった。
「一応それもビスュン・ィ・リゥエピェヴァと同じ位に耐久力はあるし、異空間を開くときに使う魔力を減らしてくれるよ」
「ほう、それはすごいな、ありがたく貸してもらうよ」
「いやいや、あげちゃうよ、衣服は使われてこそだし、それに僕は期限を守れなかったからね、そのお詫びだ」
「しかし、こんなに高性能のモノを貰うのは悪いな」
「いいよ、がぜるんは僕の親友だし命の恩人だし」
かなり悪い気がしたが、ヴォバォモはそういうならもらってしまおうか。
その代わりに今度ヴァバォモの好物を揃えて持っていこう。
「ちなみにこれの名前は何というんだ?」
「うんとね、アノァノッモァ・ァ・ラァゾァ、だよ」
「そうか、ありがとう」
本当にいいものを貰ってしまったな。
早速その場で着て、私はモヂワクォメの所へと帰った。
今回も名前が長いのでアノラゾと少略させてもらおう。




