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人影ともや、そして探知

 一気に加速して、洞窟の一番奥までやって来た。

 ブレーキをかける足が地面と触れて地面が削れて埃が舞い上がる。

 人影が近づいてきてその姿が鮮明になってくるかと思ったが、相変わらずその姿はもやがかって見えない。

 だがココココ子が見えたと言っていたので、目的の生物はそこにいるのだろう。

 勘違いじゃない事を願いながら、私は速度を殺して止まる。

 すぐ近くまで来ると、人影とその周りだけは一層もやが深く、中の生物の姿を隠している。

 相変わらず私にはそのもやの中を覗けなかった。

 だが、背中に掴まっていたココココ子は興奮した様子で飛び降り、近づいていく。

「アアル、見えるか?」

「いいえ、何も見えないでっす、一人で行かせては危険でっすしわたしたちも生きまっしょう」

「ああ、行くぞ」

 早くももやの中へと姿を消していくココココ子を追って私達ももやの中へ入る。

 途端目の前が白で包まれるが、それでもココココ子の背中の影を追い、奥へと向って行く。

 近くにあるはずの人影は、まだ結構な距離があるのか、いっこうに近くならない。

 しかし、動いている様子もなく、私達はしばらく走り続ける。


「ぎぃぃぃぃぁあああああああああああおおおおおぉぉぉ!!!!!」


 背後遠くから響くドラゴンの声はまだまだ距離がある。

 だがいつブレスが飛んでくるとも限らない、成体になったばかりなので撃ちなれてはいないだろうが威力は脅威的だろう。

「塞げ、防げ、壁よ、我、詠唱す」

 なので背後に設置型の障壁を召喚して置く。

 これで少しは安心できる。

「ありがとうございまっす、ご主人様、わたしがやるべきことでっしたのに、気づきまっせんでした」

「いや、焦る気持ちはわかるし、それにこんな状況になったのは私のミスだ、危険な状況に巻き込んでしまってすまないな、今からでもビリゥヴァの中に戻ってもいいぞ?」

「いえ、最後までお供します、久しぶりの外でっすし、何よりご主人様と共にある事こそわたしの使命でっすので」

「そうか、ありがとう」

 まるで主の為に命をかける騎士のような忠実さのアアルは私の足をがっしりと抱きしめる。

 このアアルを作った職人にこの姿を見せたらどれほど喜ぶことだろうか。

 アアルの忠義に感謝しながらココココ子の背を追う。

 と、ここで私は気づく、ココココ子の背中と距離が縮まない事に。

 私の方が足が速いはずであるのに走っても走ってもその背は、もやがかかった影のまま、目的の生物と同じように、走っているので動く背中だけが私達には見えている。

 何かおかしいな。

 もやの中に入ってからも望遠と透視の詠唱をかけているのに全く見通せないし、探知の詠唱で感知している洞窟の長さ以上に走っている気もしている。

 後ろを振り返ってみるがもやに隠されて何も見えない。

 ここで少し足を止めてみる。

 普通だったらここで走り去るココココ子の影は消えるはずだ。

 だが、見ると、その影は走るように動いているだけで遠くに消えはしない。

 どうなっているのだろうか。

「おーーーーーーーーーーーーーい!! ココココ子っっっ!!!」

 大声で呼んでみるも答えは返ってこない。

 ココココ子の影はそのまま動き続けているがそれだけだ。

 私はもう一度探知の詠唱によって映し出されたこの洞窟の中の内部の脳内地図を探る。

 確かめてみてもやはりこの洞窟の奥行以上に私たちは移動している。

「アアル、どうなっていると思う?」

「わたしにも何が何だかさっぱりでっす」

 探知魔法が幻覚か何かで狂わされているのか?

 そんな事があったらすぐわかるように万全を期して来た。

 だがここは未開領域だ、想像を超える生物や現象が起こっていると考えてもおかしくはない。

 目を瞑り、自分の感覚を外界から一度遮断する。

 そこで脳内に浮かんだ地図と自分の位置を照らし合わせてみる。

 自分の移動距離からして、洞窟の奥を突き抜けて、さらに洞窟の長さの半分くらいは移動していた。

 ならどうなっている、頭痛がしてきた。 

 頭痛? なぜ頭痛がする?

 やはり何かがあるのか。

 だとするならばそれをどう打ち破るのか、今は詠唱しか使っていない。

 ならば詠唱ではなく別のモノで。

「アアル、今の位置情報を教えてくれ」

「わかりました、今の位置を検索します」

 アアルの指示を出し、私は私で、詠唱以外の探知を試す、探知魔法、血を空気に溶かしての空間把握、地面を覆う魔法陣、ビリゥヴァの中から取り出した距離を測る道具、その他諸々。

「位置情報検索完了、座標を送ります」

 アアルからデータが送られてきて、脳内の地図に座標が浮かぶ。

 その情報、そして、私が行ったほかの術を統合してみた結果、一つの答えが分かった。

 浮かび上がった座標、それが表すある事実。

 それは私達がもやがある場所の手前から全く動いていない事、そしてココココ子だけが奥に行ってしまったという事だった。

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