謎の生物とホームシック、そしてドラゴン
黒い炎の中に消えて行った卵は灰すら残らず燃えたかと思ったがそう簡単にはいかなかった。
炎の奥に蠢く生命を私は察知した。
「ココココ子、下がれ、来るぞ」
「へ? あの炎に焼かれて生きてるんですか? すごい生物もいる物ですね」
「すごいというより厄介だな、炎をエネルギーに変換しているのか」
のんきな感想を述べながらココココ子は私の後方に下がり、私は炎の中の生命の分析をする。
消えないはずの黒い炎はどうやら卵の中の何かによってエネルギーに変換されているようだった。
ならばエネルギーを与えないようにと、私は詠唱を解除する。
炎は消え、その向こうに生まれた生命の姿が現れる。
頭は鼻から無数の触手を生やした犬のようであり、身体は二足歩行で手足はあるモノの、完全に体が出来ていないようで今にも崩れ落ちそうな位のどろどろとした表面をしている。
この世界の生物はみんな醜悪な見た目をしているのか。
かなり気が滅入ってくる。
醜悪な生物はこちらを見ているかのようだが、その頭には眼も口も耳もなく、ただ、鼻の穴のようなところから伸びた触手が蠢いているだけだ。
「気持ち悪い奴ばかりですね、本当にこんな所にお母さんに似た生物がいるのか怪しくなってきました」
「同感だな」
「なんかすごく帰りたくなってきたんですけど」
「だが、このまま帰ったらここまでの苦労が無駄になる、せめてこの山だけは調べてからな」
「うへぇ」
ここに来たいと言い出した張本人が何を言っているんだろうか、拳骨を食らわせたくなる。
それはこらえて、今はこの生物をどうするか。
放っておくのが一番か。
私たちに向って何の行動を起こす気配もないし、害がないなら殺す必要もない。
「うわっ! お父さんっ上!」
「ん? なんだと!?」
考えていたらココココ子が声を上げた。
言われた通りに上を見ると、空に浮いている銀色の何かが形を変えてすごい勢いでこちらに迫ってくるのが目に移った。
その何かは次第に形を変え、さらに膨張する。
手足が生え、背中には翼を模した物が羽ばたき、力強く太いしっぽが伸び、頭は爬虫類系の何か。
これは未開領域でなくてもよく見る存在。
ある世界では生物の頂点に君臨し、ある世界では滅亡の象徴とされ、ある世界では人の心に寄り添う最大の味方として共に立つ、強大な存在。
それはドラゴンだった。
先程まで不定形だったその体は完全にドラゴンのそれへと変身を遂げており、私達に向けられた双眸は、明らかにこちらの味方をしてくれるような目をしていなかった。
むしろ恨みと怒りをはらんだ目だ。
こちらに光る銀色の尾を引きながら急降下してくる。
「ゲィアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」
私が見上げた直後、怒りの形相で口を開き、すさまじい咆哮を浴びせてきた。
「うえええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!」
次いでそれに負けない位にでかいココココ子の驚きの声も響く。
とてもうるさい。
ともかくかなりまずい状況になってしまった。
怒りの表情という事は推測するにココココ子が割った卵はあの銀のドラゴンの卵となる。
これは本当に探索なんてやっていられない。
一応迎え撃つこともできないではないが、卵を壊している以上非があるのはこっちだ。
私は急ぎ、人形に召集をかけて、使い魔への魔力補給を断った。
魔力が補給されなければ使い魔は勝手に帰る、だが人形はそうはいかない。
何とか回収してから帰らなければ。
迫る巨体は山ごと私達を押しつぶすことが出来るくらいの大きさまでになっていた。
あれが元の大きさなのか、圧倒的だ。
ドラゴンは長い咆哮を終えると、身体から白い煙を大量に上げ始めた。
それと同時にエネルギーが、一本一本が星すら切り裂いてしまいそうな位鋭い歯の並んだ口の中に集中していくのを感じる。
「ココココ子!伏せろ!」
叫び、私は障壁を展開する。
瞬間、ドラゴンが一瞬まばゆい光を放ったかと思うと、その口から輝くエネルギー波を吐き出した。
私の視界は銀色に埋め尽くされた。




