薬の効果と反省、そして枯れる山
「音、破裂!」
空高くに投げた木を枯らす薬の入った瓶が、私の合図によって割れ、中の液状の薬が落ちる。
それを探知の詠唱によって広げられた知覚で感じ取り、薬の方に意識を集中させる。
瓶は飛び散り山へ落ちてゆく。
おそらくは落ちたそばからコィモが全て食らい尽くして栄養にするであろう。
だが、意識を集中させた薬の方は落ちず、その場で漂っている。
私が念と呼ばれる本来なら脳を改造した人間が使う力で空中に固定したのだ。
これは改造人間が生きている世界で、世界征服を企む秘密結社が非人道的研究を行う隠れ家を襲撃した時に手に入れた念力使いのクローンの脳を使っている。
それならば、自分の脳みそを入れ替えたのかと言われればそれは違う。
私は思念体を飛ばすことが出来るので、意思のない脳に思念を送って動かすことが出来る。
空中にとどまった薬を、念力によって細かく分けていく。
こうすることで山の中に生えているコィモにまんべんなく薬をかかる雨を作る。
そして、念力を解除。
降り注ぐ薬は風に吹かれて若干のあらぬ方向に飛んで行ったが、大体は山にかかる。
この薬の効果は絶大だ。
即効性もあるし、何より毒性が強力なので触れたものすべてを食らうコィモがよほどの耐性を持っていない限りは、枯れていく事だろう。
ちなみに、木にとって有毒であると同時に、生物にも有毒である。
生物が吸い込むと、まず内臓の一部が溶け、脳に何らかの障害を引き起こし、全身が引きつって動けなくなり、尿道から血が噴き出して死ぬ。
ワクチンは無い、治療法もない、対処法としては触れない嗅がない口に入れない、どんな猛毒にしても当たり前の事だが。
コィモが傘になって中の生物はほとんど無傷だろうと推測できるので、目的の怪物もおそらくは死んでいないだろう。
ちなみに私たちは障壁を張っているの毒の影響を受ける事はもちろんない。
「お父さん、何やってるんですか?」
横で障壁や身体強化などの様々な準備を終わらせたココココ子が私に話しかけてくるので、私はコィモの件、それと今やっている事について説明してやる。
「うわぁ、容赦ない自然破壊、さすがお父さん、悪い男」
「良くも悪くもお前のためだ」
「それでも若干やりすぎな感じあるんですけど」
私のとった行動にココココ子は引き気味だった。
人が入りずらいと言うだけで自然を破壊するというのは確かにやりすぎたか、警戒のし過ぎに少し反省しつつ、後でコィモに似ている植物のを植えておこうと思う。
未開領域の生態系に外からの植物の輸入はどうかと思考しながら少し待つと、山に動きがあった。
薬が効いたのか、コィモが倒れだし、葉のような部分が揺れる音と、幹のような所が折れる音がした。
枯れた木が倒れ、別の枯れた木に当たり倒れる。
ドミノを倒すように当たっては倒れていく。
倒れていく木同士がぶつかって砕ける音も響いてくる。
立ち上る赤い煙は赤い大地から舞い上がった砂であろう。
「こんなの……初めて……」
その様子を見てココココ子は呆然としていた。
それはそうだろう、山の木々がことごとく枯れて倒れてゆくなんてそうそう見れるものではない。
私もこの薬を山に向かって撒くのは初めてなので、こんな光景は初めて見た。
木が倒れ、ところどころに赤い山肌が露出して来る。
逃げまどい飛び立つ謎の生物達。
あの生物一匹とっても世界管理官からしたら喉から手が出るほど欲しい事だろう。
脳裏によぎる、この話をしたらさぞかし興奮するであろう世界管理官の友人の事を脳裏に描きながら、コィモが枯れてゆくまで待った。




