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罠と脱出、そして復活

オンジェヤが詠唱をした場所に着いた。

姿を消しているオンジェヤに着いた事を知らせるために私はビリゥヴァの中から刺激を与えると音の出る玉を取り出し、 思念を飛ばして語りかける。

「オンジェヤ、今、近くに着いた」

「どこですか?」

姿は見えないが、おそらく辺りに注意をはらっているだろう。

なので私は手にもった玉を、力を込めて地面に叩きつけた。

玉は乾いた音を鳴らしながら弾ける。

「きゃっ!なっ何ですか!!」

近くからオンジェヤの可愛い悲鳴が聞こえた。

「驚かせないでくださいよっ!」

思念を通じて、抗議の声があがる。

「すまないな、今は自分の音も消しているからこういう風な手段になった」

「いいですけど、やるなら最初に知らせてください」

 世界を越える実力はあっても心は年相応だな。

 ともあれ、互いの場所を把握出来たのでこれからマリィコールズの殲滅に移りたいが、頭の中映し出されている奴らの位置を示すマークは街の中のいたる所に少しずつ分かれていて、各個撃破をしていくのは時間がかかる、それに、この街の中に逃げ込んだというより誘い込んだ確率が高い、とすると、何を狙っているのかを調べないといけない。

「その事なんですが、ガゼルさん、わたし、この街のこと知っているんです、それで、奴らが何を狙っているのかもおそらくですがわかります」

 と思ったらオンジェヤが分かったようだった、よかった、マリィコールズから聞き出すという難しい事をしないで済んだ、奴らは洗脳されているから記憶を探ろうとすると拒絶されるし、喋らせようとすると舌を噛み切って自殺する。面倒くさいことこの上ない。

 無言で先を促すとオンジェヤが説明をしだす。

「この街、コイォ・ノォンォは、わたしがガゼルさんと間違えた英雄ガゼル・ヌウィブフが行方をくらます前に最後に目撃された街なんです」

「あの時言っていたこの世界を何度も世界を救ってきたという奴か」

「はい、そのガゼルが姿をくらます前に立ち寄った宿の人間の日記から、ガゼルはこの街の地下に封印された災いの種を退治しに行くと言っていた事が分わかっています」

「成程、それでその後に姿をくらましたと?」

「そうです、それでガゼルが、これも宿屋の日記なんですが、その災いの種が封印から解放されるのが百年後、と言っていたんです」

「百年後?そのガゼルが居なくなったのはいつだったか」

 嫌な予感がした、というかオンジェヤがその話をするという事はそういう事なんだろう。

「百年前です、つまりは復活するのは今年、という事です」

 それでマリィコールズは私をこの世界に誘い込んだわけか、それが私の生まれた世界というのは何という偶然というか、なんというか。

「だが、百年前の情報なんだろう?確かなのか?」

「確か……ではないです、十五年前、実際にその日記が見つかった時に国の研究者が調査に乗り出しましたが手掛かりは全くつかめなくて、日記自体が偽物じゃないかという説が主流になり、調査は打ち切られました、でも、ガゼルさん、マリィコールズの反応を確認し直してもらえますか?」

「わかった………………成程」

 オンジェヤに言われた通り、マリィコールズの反応を再確認してみる、マリィコールズはこの街の中に散らばっているだが、その一部、他と同じように散らばってはいるが、地下を進んでいくマリィコールズの部隊が複数、どんどん潜っていくのがわかった。

 オンジェヤの言う災いの種かはわからないが、地下に何かがあることは確かだ。

 そして、複数の部隊は進むにつれて、互いに距離を詰め、一つの部隊になり、動きを止める。

「オンジェヤ、君の言ってることは正しいようだ」

「ですよね、でも、少し気付くのが遅かったみたいです」

「そうだな、まったく、してやられたな」

 飛んで脱出する間もなく、地面の下から突き上げられるような振動があり、私達はよろめく。

 マリィコールズの反応を見ると、地下に潜っていた奴らが上がってくるのがわかった。

 地上に近づくにつれて揺れも強まってくる。

 災いの種を持ってくる気か。

「逃げるぞ、オンジェヤ」

「わかりました、全速力で!」

 急ぎ、飛び立ち、街の外を目指す。

 街の地面に亀裂が入り、そこから何かの異様な空気が立ち上ってくる。

 なにが来るかはわからない、だがその何かがとてつもなく危険な物だという事は肌で感じとった。

 いよいよ災いの種が地上に差し掛かると、地面の亀裂は広がり、建物は軒並み崩れ、災いの名にふさわしい破壊の力のひとかけらを見せた。

 私達が街上空からの脱出を待つことはもちろんなく、災いは地上に顔を出す。

 すさまじい轟音が鳴りはじめ、空気が揺れる。

 思わず音の方向を振り返って私が見たものは、忌まわしいマリィコールズが顔面に張り付けた嫌な笑み、それと天に手が届くくらい巨大な体を持ち、目が痛くなる蛍光緑色で全体を塗りつぶした、顔を持たず、関節もない人型が立っている姿だった。

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