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第8話

「……助手!!3体抜けたぞ!」



凶螺の言うとおり、自分の第6感が3体の敵が近づいていることを察した。

どうやら狙いはすべて自分。

場所は右上、左、そして、正面下……



「……っふ!」



そして、その姿をはっきり見ないまま自分はそれをきりつけた。

手ごたえはあり、両手のナイフにそこそこ強めの衝撃が走り、そして、何か肉を裂いたような感触。

恐らく小型のイカを2匹刺し殺せたのであろう。


いやさ、見ないで攻撃って別にかっこつけてやってるわけじゃないんだ。

だって、朧イカはその名前の通り、まともに見ようとしても半透明やら、光ったりやらでむしろ見たほうが照準がぶれてしまうのだ。

それなら、第六感にたよりきったほうがいろいろ楽というもの。

それにどいつもナイフで切っただけで何とかなるしな!

しかし、正面からの敵にはさすがに手が足りない。

ここは『水着』で攻撃を受けるしか……



「……って、うおおおぉぉ!!!」



おもわず、気配の違和感に気付いて、急いで真横に躱す。

そして、目を開けて正面の敵を見ると、それはデカい触手であった!

恐らく『海人喰い』と呼ばれる巨大イカ……いや、クラーケンの方の触手か!




「あほー!あんな馬鹿デカイ触手を通すやつがいるか―!」


「仕方ないであろう!数が多すぎるのだから!」



凶螺はそう言いかえしながら、背中の触手の1本でちょうど自分を狙っていたクラーケンの方へと伸ばし、その触手をそいつの体内へと突き立てた。

その凶螺がクラーケンへととどめを刺したすきをついてきたのだろう。

再び大量の巨大な小型な朧イカが、凶螺の触手による中距離攻撃の隙間をぬって、こちらへと襲い掛かってきた。



「はぁぁぁ!!同時に5体かよ!俺の腕は2本しかないんだぞ!」


「なら、口と足も使ってみればいいのではないか?」



そんな、厨Ⅱ病ですらやらんようなことを言うなや!






≪これが自分のスク水を着た理由≫ 

第8話






「……案外いけるな」


「……お、おう、まじか。」



5体同時に来た朧イカを、とりあえず、上方からのナイフ、下方は足、そして、正面から来たのを口で噛み付き引きちぎりながら、そういった。

流石異世界ボディ+水中適正S、こんなサーカス団的な動きもばっちりだ。

なお、味の方はお察し。



「……というか、これ、埒が明かんなあ。」



さっきから一向に衰えることのないイカ集団の攻撃に思わず愚痴をこぼしながら、ナイフを構える。

いったい自分でも、何体倒したのか正直数えきれない位だ。

なお、戦い方は単純、自分は前で凶螺は後ろ。

凶螺は遠距離で触手を使って攻撃し、それを抜けてきたのk里を自分がつぶすといった流れだ。



「しかも、こいつら、何匹倒してもまったくソウルが入らんではないか!

 まったく、これは地雷イベントもいいところだな!」


「……わかるのか?」


「ああ、私のスマホは体内内蔵型だからな。

 こういう戦闘中でも、手に入ったソウル量がわかるというのはさすが限られたもののみがもちうる真のスマホ!

 少し念じるだけで、あっという間戦闘中でも脳裏に相手の名前やステータス、果てには自分の状態まで一目瞭然だ!

 ふーっはっはっはっは!!……もっともその利便性のせいか、貴様の物とくらべて、持てるもの上限や交換の手数料といった面で制限がかかるのがな。」



へー、そうなんだ……というか、持てないスマホはスマホじゃない気がする。

まあ、ソウルがたまらないのは何となくそうかもなーっとは思ってた。

なぜなら……



「まあ、倒した瞬間に死体も残さず、消えていくような生物がまともな生き物な訳がないわな。

 というかこれはむしろ、もし奴らの死体が残られたら、今頃死体の山が多すぎてまともの行動できなかったんじゃないか?」


「なんだぁ!さっきから弱音や愚痴ばかりではないか!

 そんなに戦闘が嫌なら、おとなしく、『凶螺様助けてくださーい!』と私に泣きついてきてもいいんだぞ?

 なぜなら、私は……」


「いや、凶螺は(戦闘面で)信用してるけど、さすがにこの量を一人でやらせるのはあれだからな。」


「……む、そうか……そうかぁ!

 まったく、助手はしょうがないなぁ!」



何故かは知らないけど、急に凶螺の触手の動きが激しくなり、その色までチラチラと変色しまくっている。

……すごいけど、きしょい。

唯一の癒しは、後ろを一瞬振り返った時に見えた、彼女の頭に生えているケモ耳がぴょこぴょこと動いていることだけだ。



「にしても、この死んだら消えるイカ、こっちが逃げても追いかけてくるし……

 こりゃなんかからくりがあるなぁ。何か心当たり?凶螺?」


「……ふむ、これはおそらく、あれだな。

 【召喚術】の一種だ。」


「召喚術?スキルとか魔法の一種とかか?」


「そうだな、よくある魔法の一種ではあるな。

 野蛮人(バーバリアン)の貴様では見れないだろうが、魔道(ウィザード)系スキル持ちの掲示板だと割と有名な話だ。

 召喚系スキルで呼び出したものの多くは仮初(イリュージュナル)な体でできているそうだ。」


「そこまでわかっていて何とかならないの?」


「わからんから、しらみつぶしにしているのではないか。」



そりゃそうか。

要するにこのへんに、このイカを絶え間なく召喚している野郎、もしくは装置があるからこのイカの攻撃は尽きないという感じか。

もし装置の類だと、一応は自分たちは先ほどより件の場所から離れているから、未だに狙われ続けているのはおかしい。

となると……



「……埒が明かん、おい、助手よ。

 今から、少し封印(ロック)を解く。巻き込まん保証はない!!」


「……って、ちょ!言うのはやっ!」



そういうとともに背後にいた凶螺がその身を、あの思い出すのも嫌になる謎のスライム状へと変化させた。

しかも大きさは、以前の自分と相対したときとは違い、かなり巨大。

具体的には、イカのでかい方……『海人食い』とかいうクラーケンですら押しつぶせそうなほどの大きさであった。



「うおおおおおおお!!!!

 ……って、おお?」



そのままスライムが周囲を無差別に襲い始める……訳ではなく、それはイカを優先して襲い始めた。

どうやら、攻撃優先度が自分よりもイカであるぐらいには知能は残っていたようだ。

そのスライム化した巨大な凶螺は、その身から触手を伸ばし、周囲のイカを無差別に、刺し、潰し、または飲みこんで次々と消していく。



「……おお~、怪獣VS小人って感じだな。」



その凶螺スライムからそこそこ離れて様子を見守る。

どうやら、イカも自分よりも凶螺の方が危険と判断したようで、すべてのイカが自分ではなく凶螺の方を襲い始めた。

まあ、しかし、どうやら、イカが何をしても凶螺には無駄なようだ。



「……こりゃ時間の問題だな。」



巨大イカの攻撃や小さいイカの突進程度でスライムはびくともしないし、イカの知能では単純な突進か触手攻撃しかしてこない。

もし知能があったとして、消耗戦を仕掛けたらワンちゃんだが……まあ、単純に物量で押そうとしている以上もはや安泰。

凶螺に取り巻いているイカの数はどんどん数を減らしていっている。

さて、このまま後はじっくり事の顛末を見届ければ……



「……というわけにはいかない……っか!」



その声とともに、手に持つナイフのうち1本を自分の背後に向けて投げつける。

すると、一見後ろに何もない空間にナイフがぶつかり、ギィンという鈍い金属音がする。

……どうやら、はじかれたか。



「……キ、ズ、カ、レ、タ、カ。」



幸いにも、正体を暴くことはできたようだ。

先ほどまで何もなかった、その空間に現れたのは2本足で2本腕、一つの頭を持つ2足歩行の生き物。

しかし、その特徴とは裏腹に、その姿は人からは程遠く、足はカエルに似て細長く【ひれ】が付いており、腕は猿のよう。

全身にうろこが生えており、まるで顔は爬虫類なのに目玉が4ッつあるという異形の姿を映し出していた。



―――――――――――――――――――――――― 


【NAME】水煙の背教イカ魔道士 【タク・カイ】 ★


【適正レベル】 8


★・この敵は≪ユニーク≫です、お気をつけてください。


―――――――――――――――――――――――― 



……どうやら、ただものではない敵のようだ。

さっきのイカどもとはけた違いの『敵意』を感じる。

正直、何か恨まれるようなことをした覚えはないが、ただ野生の魚や海中生物に襲われるのとは段違いの『敵意』をこの肌にびりびり感じる。

例え、こいつが透明だったとしてもわかるほどだ、多分こいつがイカの召喚をしていたやつか。



「……正直、私たちは何か悪い事したか?

 立ち入り禁止だったとか?又は、ソウル狩りの途中であなたの同胞を……」


「……オ、マ、エ、エ、イ、ユ、ウ……

エ、イ、ユ、ウ、シ、ス、ベ、シ、!」



っち、問答無用かよ!

言葉はしゃべれるくせにそいつは、こちらに一方的に物を告げると襲ってきた!

せっかくしゃべれるんだから、コミニケーションしようぜ!敬語使ってやったんだし!

そいつはこちらがまともに構える暇もないスピードでこちらに接近、そのまま、腹を突き破らんかという速度でパンチをしてきた!!



「……っぶほっ!」


突然の衝撃に当然、上手くガードすることができず、そのまま後方へと吹き飛ばされる。

ちょっとスクリューを加えられたパンチだったのか、体がぐるぐると回転する感じがとってもバトル漫画チックであった。

なお、自分はやられる側の模様。



「……うげぇ。」



……が、幸い殴られたのが『スク水』部分だったおかげか、ダメージはちょっとお腹と頭の中がシェイクされただけで済んだようだ。

運よく意識もはっきりしている。

まあ、すこしだけ胃の中が逆流し、喉の奥から酸っぱいものが込み上げてきた程度だ。

ごめん、うそ、ちょっと口の中から血の味がするなこれ。



「……シ、ン、デ、ナ、イ、?」



自分に接近してきたときのスピードに比べて、やけに緩やかな速度で、そいつは近づいてきた。

おうおう、生きてるそ生きてるぞー。

もし自分が死んだと勘違いして立ち去ってくれるとうれしかったんだけどなー、お兄さんは。



「……ツ、ギ、デ、シ、ネ、!」



そういってそいつは再び、こちらへと突っ込もうと姿勢を低くし……



「それはもう読めたあぁぁぁぁ!!」



そいつが突っ込むのと合わせて、右腕を伸ばし、ナイフを突き出す!

そのカエル人もどきはまっすぐ、こちらへと突っ込んできて……



「……。」



その頭をわずかに横にずらすことで、自分のナイフを躱してきた。

その顔は爬虫類面をしているのにこちらがはっきりとわかるくらいの笑みを浮かべていた。

そして、次こそは確実に此方を仕留めるためか、そのでかい鉤爪のついた指をこちらの眼前に突き出して……



「……ギュ!ギュラララララララァァァァァァ!!!!!!!」



奴の醜い悲鳴がこだました。

その爪が届く前にこちらの刃が向こうの体を突き通るのが先だったようだ。

そう、奴は自分の素早いスピードによって自ら、こちらが【左手にかまえていた槍の方へとぶつかってきたのだ】。

まあ、先ほどまで奴はこの槍の存在には気付いてなかったから仕方ないだろうけどな。



「……もしお前の体の鱗が固かったと思うと……マジでつんでたぞ。

 あと、ひるんでくれて、ありがと……さんっ!」



そのまま、怪物が槍に貫かれて呆けている間に、こちらはさらに追撃を開始する。

左手だけで持っていた槍を両手に握り直し、そのまま槍の刃をかちあげる。

が、やはり、切れ味が足りないのか、それとも水中であるからか、俺の槍の技量が足りないのか、肉をかき混ぜることはできても、とどめを刺すことはできない。

というか、むしろ『変形』の影響で槍の方にひびが入ってるのが原因か。



「……やっぱり、この槍、奇襲にはいいけど、槍としては3流品だな。」



まあ、ネタばらしをすれば今回の槍による奇襲。

あれは、事前に何度か凶螺が渡してくれた『指輪に変形する槍』のおかげでどうにかなったのだ。

奴が突っ込んでくるのに合わせて、右手のナイフで刺し違えるふりをして、実は左手の変形指輪によるカウンターが本命、即興としてはなかなかの作戦だったんじゃなかろうか?


先日、凶螺に変形機能はいいから、槍としての性能を上げろと言ったのに、なぜか変形スピードを一瞬にした、この槍を凶螺が渡してきたときはどうなることやらと思ったが。

こういうを人間万事塞翁が馬とかいうのだろうか?



「ギュ、グフ、ギュラ、ギュラ……ラ……!!」


「なあ、叫べるんなら、普通にしゃべってくんない?

 まあ、かといって見逃す気はないけど。」



流石に此方を問答無用で殺しに来た相手を許せるほど人間はできていない。

腹にデカイ穴をあけているそれは、透明な腫液と紫の粘液を吐き出しながらふらふらとこちらを睨みつけてきた。

それは明らかに弱っており、今すぐに死んでも不思議でないと思えた。


……まあ、だからと言ってこっちもすでに種が割れてしまった上に今のも壊れそうな変形槍1本、ナイフが1本。

どっちが有利かははなはだ疑問だが。



「ギ、ギ、ギギギギギうぇヴゅrうあyvぶwyfs!!!!」



そいつは巨大なうめき声をあげ、わけのわからない言語を口にする。

目や体が発光し初め、おそらく何かの魔法を行使しようとしているようだが……



「……おそい。」



それより先に、自分のナイフが奴の喉を貫いた。

焦りのあまり、呪文でとどめを刺そうとしたんだろうが、さすがにそれを敵の目の前でやるのは悪手ってもんだ。



「ぎ……グ……」


「お、おお?し、死んだのか?」



奴の体がぴくぴくと痙攣し、そのまま動きが止まった瞬間、水中であるのにその体から、青い炎が上がる。

そして、奴の全身がその炎に包まれ鷹と思うと、そのままボロボロと灰のように崩れ落ちたのであった。


……いや、正直、この死に方はあんまりに異常過ぎだろ。


いやいや、今までイカみたいに消えたり、普通の生き物みたいに体が残るパターンの2種類だったけど正直これはいくら異世界でも異常だっていうのは自分でもわかる。

もしかして、自分、やっちゃいけないことやっちゃった?

ああ見えてあれが転送魔法だったり、自分を生贄に捧げて―とかいう魔法だったりは……



―――――――――――――――――――――――― 


【お知らせ】おめでとう!あなたの行いはかの【神】に認められました!


▼あなたは報酬として【密偵魔道の呪文石】を手に入れた!


―――――――――――――――――――――――― 



うん、大丈夫そうだね!

といあえず、周りの安全を確認してスマホの方を見ると、今までに見たことがないそんな文字が浮かんでいた。

まあ、レベルが上がった上、ソウルも上がっているとりあえずは倒せたのであろう。

それで報酬までもらえた!

そう!命の危機は去ったのだ!


それにしても、今回はまじで危なかったなぁ。

何度も死んだかと思う場面があったし、未だってまだ奴に殴られた腹が痛い。

これは凶螺にちゃんとしたお礼を……



「って、そういえば凶螺は?」



ふと、それを思い出し、凶螺がいた方を見る。

自分がすでに召喚師の方を倒したからかイカが消えているのが、ファンタジーのセオリーというやつではあるが……。

どうやらちゃんと件のイカ達は1匹残らず消えているらしいようだ、よかった。

その証拠に元気そうな、スライム状態の凶螺がこちらに向かってどんどん近づいてくる。



「おー!こっちは既に元凶を倒したから、もう戻っても大丈夫だぞー

 今回はいろいろありがとうな~!!凶螺がいなかったらと思うと……

 って、おい、聞いてる?」



件のスライム凶螺はすでに敵はいないのに、そのスライム状態のままでどんどんこちらへと近づいてくる。

しかも、その速度はかなり早く、こちらの声に反応しているようには見えない。



「もしかして凶螺~、その状態だとお話しできないとか?

 それだと、倒し終わった時、どうやって元に戻る気だったのかな~

 ね~、聞いてる?」



いやな予感がしつつも、一握りの望みをかけて、自分は凶螺へと呼びかけを続けた。

……しかし、どうやら、自分の予想は悪い方向にあたってしまったらしい。

凶螺という名の巨大粘液の塊は、そのままのスピードでこちらの方へと向かってきて……



「みぎゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」



そのまま、自分は二度と味わうまいと思ってた、粘液の塊にぶち込まれたのであった





今回も掲示板パートなし

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