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SCENE-008 >> 幸福の形をした女
泥のよう重く纏わり付いてくる闇の底で、懐かしい魔力の匂いをかいだ気がした。
(アレッサ……どこにいるの?)
どんなに呼んでも答えが返った例しはない。
きっと、もう二度と会えないのだと薄々わかっていながら、どこかで諦めきれなくて。
今度こそはと抱いた期待を何度も何度も何度も何度も裏切られてきたのに、性懲りも無く藻掻いてしまう。
愚かな私を、あの薄情者は笑うだろうか。
「おはよう、お寝坊さん」
柔らかい女の声に鼓膜を擽られ、寝起きの体がぶるりと震える。
「あ……」
そうしようと意識するより早く瞼が上がって、視界へ飛び込んできた赤毛の女に見覚えはない。
それなのに、一目でわかった。
「アレッサンドラ? ほんとう、に……?」
「そうよ。はじめまして、私はジーナ。――あなたは?」
ばくばくと脈を打ちはじめた心臓の音が、うるさいくらい耳の中で響いて聞こえる。
「わたし、は……」
フェイジョアと、答える声は自分でも笑えるくらい震えていた。




