SCENE-007 >> 獣の献身
目が覚めると、体が熱くて寒かった。
「フェイ。少しでいいから、何か口に入れた方がいい」
奴隷に落とされてからは迂闊に体調を崩せるような環境でもなかったから、熱で頭がぐるぐるずきずきするのも、喉が痛くて息が苦しいのも体が慣れていなくて。言うまでもなく、気分は最悪。
「たべる、ない」
「フェイジョア、頼むから」
「ほっとく……」
実の親にだって、これほど甲斐甲斐しく世話を焼かれた覚えはない。
毛布の中に潜り込んで丸くなった私のことをやんわりと、有無を言わせない力で引きずり出したジルが、唾を飲むのも億劫な口に冷たい水を流し込んでくる。
「んぅっ」
こくり、こくりと喉を動かす度に走る痛みから逃れようと気怠い体で力いっぱい藻掻いても、ジルの手に掴まれている顔と抱き竦められた体はびくともしなかった。
「……もういいっ」
からからに乾いた体が「もっと」と水を求めてジルへ縋るのに、痛む喉が「もういやだ」と顔を背けようとする。
何をどうしたいのか、自分でもわけがわからなくなっている私が小さな子供のようにぐずぐずと泣きだしても、ジルは呆れることも、うんざりした様子を見せることもなかった。
「俺はあなたを苦しめてばかりいるな」
それは違うと叫びたいのに、熱に冒された体はけほけほと咳き込むばかりで、少しも私の思うとおりに動いてくれない。
散々暴れて、泣いて、熱が上がってぐったりとした頃に、固形物とは呼べないどろどろとしたものを食べさせられて。
「フェイジョア、大丈夫だ。これで少しは楽になる」
甘く囁いてくる声に騙されて飲まされた薬の苦さにまた暴れたところで、本格的に意識が濁った。
ムーンの「嘆きの獣に心慰の花を(Another Side)」もよろしゅう。




