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しまんちゅ・すろーらいふ   作者: げんごろう
3/4

ちんぷる

※サブタイは下ネタではありません

時間は少し戻り、枢達が海へ向かうその前



「くあぁぁぁ・・・よく寝たわぁ」


ツンツン頭の男、赤尾弘大(アカオコウダイ)はベッドから起き上がった

ふとケータイを手に取ると、いくつかのメッセージが届いていることに気づく


圭人

『今からイカ釣り行くんやけどこれんかな

 今日は釣れる予感


 あと釣れたイカ捌いてください』


最夏

『およごーーー(о´∀`о)

 枢ちゃんの海デビューだよーーU・x・U』


「いや誰だよ。てかこれどー読むんだよ」


そういえば、転校生がどーとか言っていたのを思い出す

夜勤明けで睡眠を貪るつもりであったが、可愛い弟ぶん達のお誘いである

流石に泳ぐのは疲れるので、イカ釣りにでも行くかと寝起きの体を動かした

釣竿と釣れたイカを入れるための袋を車に積み込み、くわえたタバコに火をつけ発進する


「バターと醤油で炒めるか・・・いや、刺身だよなやっぱ」


などと今夜の献立を妄想した

このように釣れることを前提に臨んでしまうと、全然釣れなかったりするのがお決まりなのである


ーーーーー


海岸に着き、車を降りてあたりを見渡すと、ちょうど対岸にある防波堤で圭人が竿を動かしていた

釣竿を持ち、歩いていこうとすると


「きゃあああああああああ!!!」


と、ただならぬ悲鳴を聞いた


驚いて振り返ると、最夏があたふたしているのを発見した

まさか、誰か海に落ちてしまったのだろうか


(何か使えそうな物は・・・!)


万一溺れている可能性を考え咄嗟に周りを見渡し、長い棒や浮力のあるものはないかと探すが、あたり一面の防波堤

使えそうなものは見当たらない


「くそ!!行くしかねぇか!」


溺れているものを助けるために自分も飛び込むというのは、実はかなり危険な行為である

パニックを起こした溺者に捕まれ、そのまま一緒に溺れてしまうことすらあるのだ

しかし、危険だからといってなにもしないわけにはいかない

溺れた者の救出方法も一応は心得てある

手にした釣竿を放り出し最夏の元へ駆け出す


「最夏!」


「あ、こう兄ちゃん!枢ちゃんがねぇ?」


海面を確認するとあたふたしている女の子が見えた

どうやら相当パニクっているらしい


「おちつけ!今行く!」


「ちょっとまっ・・・」


最夏が何か言いかけたようだが、すでに飛び込んだ後だった

すぐさま体を浮上させ女の子に近寄る


「おい!大丈夫か!?」


「だれ!?こっちくんな変態!!」


「だれが変態じゃ!とにかくおちつけ!」


変態という言葉が心にささったが、思っていたより大丈夫そうで一安心だ

とりあえず落ち着かせ陸にあげようとしたが片手でバチャバチャとこちらに海水をかけてきた


「もーほんと最悪!絶対スマホ壊れてる!」


「なんだそういうことか。てかそんなに手足動かしたら・・・」


言いかけたところで枢の動きが止まり、急に青ざめた表情になった


「やば・・あしつった・・・・」


「いわんこっちゃねぇ!」


本当に溺れてしまうような事態となってしまった

流石にこれは放っておけないと弘大は考え、枢の手を取りそのまま自分の方に引っ張る


「ちょっ・・・!離し・・!」


水中ということもありろくな抵抗もできず、そのまま引っ張られ体を180度反転させられる

そして頭をガッチリと腕で支えられ・・・


赤十字水上安全法の技術の1つ


チンプルである


「よーし動くなよ〜。そして深呼吸だ」


(え???まって???)


「体の力を抜いて〜。まだ足痛いか?」


(頭の上から声がする???)


「お前が転校生とやらか?来て早々防波堤ダイブなんて、飛ばしてんなー」


(どーゆー状況!?!?)


全く状況を飲み込めない枢であった

意を決して飛び込んだら、スマホがポケットに入ったままで

そしたら訳の分からない男が飛び込んできて

そいつに手を掴まれたと思ったら、なんか引き寄せられて

ここまで考え、枢の頭が導き出した答えは1つだった


「ち、痴漢!」


「どうしてそうなった!」


変態だの痴漢だの散々な言われようである

だが枢からしてみれば赤の他人に、しかも異性にいきなり触れられれば、このような反応は当然と言えば当然だ


「離しなさいよ!足つったくらいで溺れる訳・・・、痛っつ・・・!」


「わかったから大人しくしてろ。とにかく陸にあがるぞ」


そう言うと弘大は枢を抱えたまま泳ぎ出した

ふと防波堤の方を見上げると、最夏が頭だけひょっこりと出してこちらを見ている


「こう兄ちゃんすごいねぇ。消防士さんみたいだよぉ?」


「みたいじゃなくて消防士だっつの。今日は非番だけどな」


(消防士???え・・・。私って助けられてるの?)


その言葉を聞いた瞬間、枢は急に冷静になり自分の言動を思い出す

助けようとしてくれた人に対して痴漢だの変態だのぼろくそ言ってしまったのだ

陸に上がったらちゃんと謝ろうと枢は考えた


「梯子登れそうか?」


「あ、えーっと。はい、大丈夫そうです・・・」


急に大人しくなったな、と弘大は不思議に思ったが暴れられるよりはマシなので触れないことにした

先に梯子を登り、後から登ってきた枢に手を差し伸べる


「ほれ、掴まれ」


「ありがとう・・・ございます・・・」


「2人とも、大丈夫ぅ?」


陸にあがると最夏が声をかけてきた

こんな時でもいつものおっとりとした調子だ


「最夏、えっと・・・。この人は?てか、あんたお兄さんなんていたっけ?」


こう兄ちゃんと呼んでいたが、最夏は確か一人っ子だったはずだ

何か複雑な事情でもあるのだろうか、と余計なことを考えてしまう


「あ、枢がちゃんは初めましてだねぇ。こう兄ちゃんだよぉ〜」


「それで分かるか!赤尾弘大だ。兄ちゃんとか呼ばれてんのは小さい頃から一緒で、その名残みたいなもんだから気にすんな」


どうやら枢が思っていたようなことはないらしい

歳の離れた幼馴染というものだろうか


「初めまして、長谷川枢です。その・・・さっきはすいませんでした。変なこと言っちゃって・・・」


「あー、気にすんな。たしかにあの状況じゃ勘違いしてもおかしくないしな」


どうやら許してくれるらしい

優しい人で良かったと枢は胸を撫で下ろした


「弘兄ぃ。なんかあったと?」


と、向こう岸で釣りをしていた圭人がいつのまにかそばまで来ていた

手には釣竿とバケツ、その中にはイカが2匹ほど入っている


「なんもねーよ。てか釣れてんじゃん。」


「さっすが圭人ぉ。おっきいイカさんだねぇ」


2人が圭人の方により、その釣果を確認していると圭人は普段半開きの目を見開き


「ま・・・まだ釣れそうやけん。また後でー」


と顔を赤くしながらそそくさと去っていった

その様子を枢は不思議に思い、ふと最夏を見るとその原因が明らかになった


体操着が濡れたことにより、最夏の下着が透けてしまっていたのだ

具体的には淡い黄色のやつが

これを見て逃げていくとは、意外と紳士なところもあるじゃないかと少し見直した


「どーしたのかなぁ?へんな圭人」


このことに関して本人は全く気にしてないらしい

というより気付いてないだけかもしれない

だとしたら少しだけ、圭人がかわいそうに思えた枢であった


「最夏、圭人もお前も大人になったのさ・・・」


「????」


弘大がよく分からないフォローを入れていたが、それでも気づかない様子の最夏であった

その弘大の視線はバッチリ最夏の胸元を捉えて、なにかを悟るような目をしていた


「やっぱ変態じゃない!!!」


「ななななな・・・なんのことかね!?!?」


いい人かなとか考えていたが、やはりただの変態のようである

弘大と枢はぎゃーぎゃーと言い合い、それを最夏は笑顔で見守っていた


その様子を対岸で見ていた圭人は


「あん2人、やっぱ相性悪かねぇ・・・」


と、遠い目をしながら呟いた











最後まで読んでいただきありがとうございました!


この4人を中心に物語は進みます


感想ご指摘等もらえると嬉しいです

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