12 まおーさまがんばる
ドーーーンと目の前に置かれた魔導水晶。
建物の最奥に置かれたそれは遠方の窓から取り入れた柔らかな光を受けて慎ましく煌いている。
自ら志願した一番手ではあるがやはり視線を受けるとプレッシャーが重くのしかかってくる。
だが案ずることはない。
俺はこいつの攻略法を知っている。
魂込めるのみ!
多分。
「ぐぬぬぬぬ」
俺は両手で掴むように水晶玉にべったりと触れると歯を食いしばって力を込めた。
無心で込めた。
程なくして球の中心から淡い光が漂い始める。
イカン、これはAランクの光だ、見覚えがあるぞ……。
腹の底に力を込め、顔面を紅潮させ、魔導水晶に更なる圧力を掛ける。
何なら割れてしまえ!
物理的にでも構わん!
さあっ!
しかし願い虚しく水晶玉はぼんやりと光を滲ませるだけ。
「Aランクです」
審査官の無機質な声が静かに響くと同時に遠巻きに聞こえる控えめな歓声。
そう、世間的に見てAランクは十分に立派な成績だ。
でもダメなんだ、Aランクじゃパーティーカーストの最下層なんだよ……。
俺は肩を落として席を立つと少し離れた所にある丸椅子にぐったりと座り込んだ。
「ふはははは、サムの顔が真っ赤なのじゃ」
意気消沈する俺にケタケタと笑いながら死体蹴りを見舞う鬼畜魔王。
いつか泣かす。
俺は深く心に誓った。
「ねえねえ、次あたしがやってもいい?」
俺の矜持を賭けた闘いをニヤニヤしながら見ていた能天気田舎娘が名乗りを上げた。
「知らねーよ。勝手にやれよ。バーカ」
「うっわ、感じ悪っ!!」
全てがどうでもよくなってきたのでテキトーにあしらう。
とはいえやはり結果が気になるから魔導水晶をガン見する訳ですが……。
さて、所定の位置に着いたセシルだが何やら水晶玉に触れてブツブツ小声で呟いている。
いや、あれアウトだろ。
「詠唱は禁止事項です。一旦手を放して下さい」
審査官が警告を発する。
「えっ!? いや、これは違うの、魔導水晶を破裂させるイメージをしただけで……」
「……直ちに測定に移ってください。指示に従わない場合は登録資格消失となります」
「そんな……」
アホだ、アホ過ぎる。
そんなこと審査官に言ったら機嫌損ねるに決まってるだろ……。
「Sランクです」
「もう終わり!?」
セシルが魂の抜けたような顔つきで俺の横にある丸椅子にぐったりと座り込んだ。
周りからすれば想定外の好記録に場内が歓声に包まれるがその一角にジメジメとした空気が漂い始める。
「……あたし、昔から急かされると実力が発揮できなくなるの……」
セシルが床を見つめながらぼそぼそと呟く。
言われてみれば思い当たる節だらけだ。
初対面の時も頭が混乱してイノシシから逃げることしか考えられなかったのだろう。
逆に覚醒状態の時は自分のペースで動いているからしっかりと結果を残せている。
咄嗟の判断が的確であるならこいつは今頃どうしているのだろう……。
少なくとも俺と出会っていないのだけは間違いない。
力なく下を向き溜息をつく姿が物悲しさを滲ませる。
基本的に一言余計な性格だが落ち込む姿を見せられるとやはり励ましたくなるものである。
俺はセシルの肩を叩こうとスッと左手を持ち上げる。
だが、そのタイミングを見計らったかのようにセシルはチラリと俺の方を横目で見て喋りだしてきた。
「でも、でもね、あたしSランクだったの。息も切らさず、顔も赤く染めなくてもSランク。心配しないで、この結果を胸にあたしはこの先も生きていけるわ」
そう言いながらセシルは僅かに口元を緩めた。
……このクソガキが!!
宙をもがくやり場のない俺の左手が実に滑稽だった。
「次はお主が行くのじゃ」
「畏まりました」
さて、ギルドの隅っこで繰り広げられた底辺の争いが一段落着いたと同時にクーリエが指名される。
結果に興味が無いのだろうか、それともランク付けというもの自体に対して興味が無いのだろうか、クーリエはしずしずと席に着くと優しく撫でるように球体の表面に手を置いた。
本当に力を込めているのだろうか、朧気に瞬く灯火からではクーリエの秘めたる能力は微塵にも感じ取れない。
「潜在魔力は非常に高いように見受けられますが結果が伴いませんね。得意な魔法は御座いますか?」
「いえ、特段得意な魔法というものは……」
審査官の問い掛けに戸惑い気味の言葉で応じるクーリエ。
2人して『困りましたねえ』といった表情で見つめ合っている。
「クーリエ、サムがメイレンに襲われておるのじゃ」
太陽が生まれた。
いや、一瞬太陽かと思ってしまったそれはクーリエの魔法を一身に受けた魔導水晶であった。
与えられた力を光に換える球体はどれだけのエネルギーをもたらされたのだろうか、煌々と輝き放つまま一向に光の解放を終える気配がない。
「とっ、SSSランクです」
瞬時に静まり返った屋内に顔をひきつらせた審査官の判定が告げられる。
だが突然の出来事に圧倒されて観客から歓声が起こる気配はない。
「カッカッカ、メイレンが此処に居る筈がなかろう。それにしてもお主は実に分かりやすい奴じゃのう」
「はっ、はうー」
スカーレットの言葉にクーリエが頬を染め上げる。
その赤らみは水晶玉の眩い光に照らされながらも容易に分かる程だ。
「お主の力は状況に応じる傾向にあるからのう、この場面では必要性が薄いと本能的に察したようじゃな」
「申し訳ございません。競うことにはどうしても馴染めないものでして……」
スカーレットとクーリエが会話をしている最中、俺は以前魔王城でメイレンに襲われかけた事を思い出していた。
確かあの時はメイレンが魔眼で俺を操ろうとしてきた瞬間、奴は目の前で血を吐いて倒れたんだよな……。
今のやり取りから察するにクーリエの攻撃魔法が刺さってメイレンが吐血したって事だろう……。
しかし考えてみれば成体のサキュバスを一撃で沈めるのだから実に底の知れない奴だ。
ああ、仲間でよかった……。
「クーリエ、また俺の身に危険が及んだら助けてくれ」
俺はビシッと親指を立ててクーリエに決め台詞を飛ばすと彼女は頬を更に赤く染めて微笑んだ。
まあ客観的に見れば極めてみっともない殺し文句だが細かいことは気にしちゃいけない。
セシルの冷めた視線を横顔に受けながらも俺は腕をピンと伸ばして親指を立て続けた。
……
「さて、最後は妾の出番じゃな。クーリエの力にも耐えうる魔導水晶の耐久力がどれだけの物か楽しみであるわ」
スカーレットは目を細めてニヤリとほくそ笑んだ。
こいつ、間違いなくテッペン狙ってやがる……。
恐らくクーリエを除くその場に居合わせた全ての者がそう感じたに違いない。
魔導水晶ににじり寄るスカーレット。
だがその歩みを阻むかのように男が割って入ってきた。
咄嗟に飛び出してきたのは他の誰でもない、イセリアギルドの支配人であった。
「あのー魔王様、ひとつお尋ねしますがそちらのヴァンパイアロードとはどのようなご関係で……」
両手を擦り合わせてにこやか営業スマイルの支配人がスカーレットに問い合わせてきた。
先程までの渋さは何処に行ったのだろう。
「はて、クーリエのことであるか? こやつは妾の側近であるぞ」
問い掛けに何一つ隠す素振りもなく正直に答えるスカーレット。
その滑舌の良さに言葉の信憑性を感じ取った支配人は更に踏み込んできた。
「となりますと純粋に強さにおかれましては魔王様の方が上ということで……」
「スカーレット様と私を比較する自体おこがましいです。体力、魔力、知力、戦闘力、その他様々な能力の全てが天と地の差にございます」
支配人の次なる質問に答えたのはクーリエだった。
普段前に出ることのないクーリエが申し出たのはやはり実力を示していないスカーレットよりも自分の方が言葉に重みがあると感じたからであろうか、それとも単にスカーレットに面倒を煩わせたくなかっただけなのかは定かではない。
しかしクーリエが答えたことでスカーレットの方がが格上であるという認識は滞りなく進んだ。
何やらアイコンタクトとジェスチャーで状況を察し合う支配人と審査官。
顔色はどちらも芳しくないようだ。
程なくして互いに頷きあった。
どうやら意見がまとまったようである。
「あのー魔王様、こちらの魔導水晶は非常に高価なものでして……、できれば測定ではなく他に何か強さを示す特技のようなものがあればそちらを披露して頂きたいのですが……」
支配人はにっこりと微笑みながら1つの提案を差し出してきた。
なんとか魔導水晶に触れさせない策に出たようだ。
気持ちはわかる。
高そうだもの……。
「ふむ、特技であるか……」
支配人の懇願に俯いて考え込むスカーレット。
だがふいに何かを感じ取ったかのように顔を上げて口を開いた。
「ならば妾の支配しておる蛇でも披露してやるとするかのう」
「蛇?」
俺は思わず問い返した。
「そうじゃ、蛇であるぞ」
「龍じゃなくて?」
「龍ならば角か翼があるはずじゃ。妾には無いであろう?」
スカーレットはニッと笑うと口から立派な牙が姿を現した。
龍ではないかと疑問を投げる俺に対する回答だと思うのだが龍にも牙があることは黙っておこう。
「この身体、カーネリアではサーペントデーモンに分類されておるわ。じゃがヤマトの国ではオロチと呼ばれておるぞい」
露骨に牙をむき出しにさせてスカーレットが豪快に笑う。
「カーネリアだと悪魔、ヤマトだと神か。不思議なものだな」
「むっ、サムはヤマトを存じておるのか?」
「ああ、あそこは剣の修行で暫く世話になったんだ」
俺はそう言いながら腰に携えた剣を鞘から抜いた。
「ほう、これは珍しい剣じゃな。刃先が反っておるわ」
「この形状はヤマト特有みたいだな。こんななりだが見た目と違って扱いやすいぞ」
「そうであるか。どれ、妾にもそのヤマトの剣を握らせてみてはくれんかの?」
早くよこせと言わんばかりに右手の指をわきわきさせる魔王様。
「ん? お前、剣は扱えるのか?」
何となく魔王に細身の剣という組み合わせがしっくりこないので聞き返す。
「失敬な、妾に使いこなせぬ物なぞこの世には何一つたりとも無いのじゃ」
「ホントかよ、その言葉信じるからな。頼むから乱暴に扱うなよ」
「分かっておるわい」
クーリエの表情が変わっていないところを見るとこのまま渡しても大丈夫なのだろう。
俺は剣を一度鞘に納めるとそっと柄をスカーレットに差し出した。
ガシッ!!
すかさず剣を握り締めると瞳をキラキラさせてブンブンと振り回す恐怖の魔王様。
「バカっ! 危ないだろがっ!」
「カッカッカ、これしきの物、手足のように操ることなぞ造作もないわ」
風切り音を立てずしなやかに剣を振り回すスカーレット。
本当に初めて触る道具なのだろうか、闇雲に振り回しているかのように見えたその様はまるで剣を用いた舞を演じているようで格の違いというものをまざまざと見せつけられる。
「どうじゃ? なかなかのものであろう」
「そうだな、お前が魔王じゃなければあまりの理不尽さに発狂していたかもな」
こんなチビッ子でもキャスバル大陸を統べる全知全能の魔王だ、素質の差を嘆く必要は何ひとつ存在しない。
「俺もまだまだだな」
スカーレットから戻って来た剣の重みを感じながら俺は清々しい気分で己の未熟さを知った。
「ところで魔王様、そろそろ特技のお披露目をして頂きたいのですが……」
スカーレットの剣術を静かに見守っていた支配人が一息ついた隙に割って入って来た。
腰の低さを保ちつつも要所できっちりと要求を伝える。
できる男だ。
「おお済まない。待たせておったか」
「いえいえ、滅相も無いことです」
スカーレットは支配人に一言告げるとゆっくりとカウンターの前に立ち、屋内にいる全員をまんべんなく見渡した。
足を半歩開いてにこやかな笑顔でゆったりと構えている。
いったい何を話すのだろう。
「我が名はスカーレットと申す。このような身なりではあるが一国を治める王でもあるぞ」
スカーレットはゆっくりと一語一語噛みしめるように喋り始めた。
緩やかに紡ぐその言葉に威圧感は無い。
だが傍らにクーリエが真剣な眼差しで佇んでいる。
それだけで外野から野次が飛んでくる気配は封じられていた。
「さて、皆の者は蛇と聞いて何を思い浮かべるかの? 神か邪悪か、力か生命か、それとも単なる生物のひとつに過ぎぬか」
問い掛けだろうか、それとも誘導尋問だろうか、俺はなるべく表情に出さないように次の言葉を待った。
「思うがまま。全て正解じゃ」
スカーレットは瞳を閉じると簡潔に答えた。
何が言いたいのだろう……。
疑惑の眼差しが彼女に集まった瞬間を狙っていたかのように目を見開くと瞬時に鋭い眼光が場を支配した。
ただ睨まれているだけ。
なのに首筋がぞわぞわとして呼吸が苦しくなる。
視線は身体の中に深く入り込み、まるで肉体を吟味されているかのような感覚だ。
頭がぼんやりとして平衡感覚を失いかけたその時、急に視野が開けた。
途端に鮮明になる意識。
体は、何ともないな。
「そして今、主らが感じたものも蛇じゃ。であるが今のは戯れに過ぎん。これから神と列する蛇をご覧頂くとしよう。貴重な経験じゃ、有り難く思うがよいぞ」
スカーレットは二カッと笑いながら懐から取り出した革袋をカウンターの上に置いた。
「この中に硬貨が入っておる。命が惜しい者は1枚ずつ受け取るがいい。サム、済まぬが全員に配ってはくれぬか?」
「ああ、別に構わないぞ」
俺は足取りがおぼつかないかその場で足踏みをした。
大丈夫、普通に感覚はある。
床の反発に手応えを感じるとカウンターに向かい、置かれた革袋を手に取り中身を確認する。
中にはカーネリア小銅貨と同じくらいの大きさの鈍色の硬貨が詰まっていた。
「これは……、見たことがあるな」
「ん? それはキャスバルの流通貨幣じゃぞ。まあ大した値打ちも無いがこの際あれば何でもいいのじゃ」
そうそう、キャスバル通貨だ。
鉄を円盤状に形成しただけと言っても過言ではないそれはその見た目に相応しい価値なのだろう、乱雑に扱われていたと思われる傷が至る所に付いている。
そんな安っぽい小銭をギルドにいる奴らに1枚ずつ配った。
「終わったぞ」
「ご苦労であった」
スカーレットは俺に礼を述べるとおもむろに歩き出した。
「まだ受け取っておらぬ者はおるか? 命に係わる事じゃ、躊躇う理由は無い筈であるが貰ってない者は正直に名乗り出るがよい」
静まり返った場内に最終確認の声が高らかに響く。
反応は無い。
どうやら全員受け取ったようだ。
「支配人よ」
「はい、何でしょう」
「階上には誰も居らぬな?」
「ええ、この時間は無人となっております」
「そうか、では始めるとするぞ」
スカーレットは歩みを止める。
ぽつんと中央にひとり。
間もなくそこから声らしきものが届いてきた。
いや、そもそもこれは声なのだろうか。
判らない……。
頭の中に直接流れ込むような感じがするそれは声なのだろうか。
解らない……。
聞き取れない波のようなさざめきを声と呼んでもいいのだろうか。
分からない……。
だが俺は今、これまでに感じたことのないうねりのような波動を全身に感じていた。
生暖かいそれは優しい陽射しのように身体を内部から温めてくれるようだ。
「ではこれより冥界に住まう蛇を呼んでみせよう」
甘い吐息のような波動に混じってノイズのようなスカーレットの声が届いた。
耳から感じるそれは間違いなく声であろう。
「神が民に求めるものは忠誠心じゃ。腰にどれだけ大量の金貨を携えようがそんな者は無価値に等しい。さあ、願うがよい。さあ、祈るがよい。さすればその命、この場に限り見逃すとしよう」
スカーレットは話を終えると右の手のひらを上に向けて肩の高さで前に差し出した。
手のひらは人差し指と中指を残して折り曲げられる。
伸ばされたままの2本の指先に光が宿る瞬間だった。
スカーレットの指先が真上に向けられると同時に床から何かが湧いてきた。
無数の青白い何かが床から現れては音も立てずに天井へと消えていく。
その何かは俺の身体をも容易くすり抜けていく。
すり抜ける度にその何かは皮膚を撫で、骨を撫で、魂を撫でる。
同時に感じる浮遊感は肉体をこの世のしがらみから解き放ってくれるようだ。
嗚呼、この流れに身を任せれば俺は何処に辿り着くのだろう……。
時間という概念から解放され、俺という存在の全てをさらけ出され、意識さえも連れ去られそうになった時、またしても耳元にノイズが走った。
「感覚に流されるままに身を委ねたその先は冥界、すなわち死じゃ。まだこの世界で生きたいのならば腹に力を込めて強く命を乞うがよい」
『死』という言葉を受けてハッと目が覚めた。
そうだ、この得体の知れない何かは蛇で間違いない。
スカーレットの言う神と列する蛇。
生きたくば抗うのではなく受け入れろ。
俺は薄汚れた硬貨を強く握りしめて強く、ひたすら強く願った。
俺はまだ死ぬ訳にはいかない!
俺にはまだやるべき事が……あったっけ?
と、とにかく今ここで死ぬのはまっぴらごめんだ!
神よ、俺はアンタに牙を剥くつもりはこれっぽっちもない。
だからもう少しこの魂、ここに留まらせてはくれないか。
…
……
………
俺は……、ここにいる。
当然だ。
あれ? 今、何を……。
「寝坊助がやっと起きたのじゃ」
声が聞こえる。
目の前に8つの瞳。
「今のは……」
「ん? 蛇じゃが?」
そうだ、思い出した。
スカーレットが蛇を召喚したんだった。
「あの蛇は日頃から目的も持たず無駄に魂をすり減らすような怠け者の心に深く付け入るのじゃ。サムはちと気合いが足りておらぬようじゃな」
俺にダメ出しをしながらもカッカッカと高らかに笑うスカーレット。
彼女は笑顔を崩さぬまま横に立つクーリエにちらりと目を向けた。
「それにしてもクーリエはあの蛇が大の苦手だった筈じゃが。はて、お主何か新しい生き甲斐でも見つけたかの?」
「そそそそそそれは……」
主の囃し立てに必要以上に反応する側近。
頬を染め上げた側近は軽く俯くと垂れた前髪の隙間から上目遣いでこちらを窺ってきた。
うおおおおお、なんつー破壊力や……。
「ちょ、ちょっとクーリエ、アンタ何処でそんな技覚えたのよ!」
「いや、お前が割り込む場面じゃないだろ……」
セシルがいきなり割って入って来たので取り敢えず制しておく。
「ねえねえすーちゃん、私あの蛇さんにお賽銭取られなかったよー」
ルシオンは手のひらを広げてくすんだ小銭をスカーレットに見せびらかしている。
「なんと! 冥界の蛇をも凌駕するとは誠恐るべき豪胆さよ」
こいつらもホント、何なんだよ……。
「サム様」
「どうした?」
「私は、言葉に表せない程に満たされております」
クーリエはそう言いながら俺を見つめると優しく微笑んだ。
「どうかさまよえる私の魂をお導き下さいませ」
「そりゃ難題だな」
俺はクーリエに近寄り、頭を優しく撫でた。
ゆらゆらと揺れる漆黒の翼を眺めながら。




