表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仮面の紋章使い  作者: 9BO
Chapter4:番狂わせの学武会
54/76

50

 学武会におけるパートナーは事前の申請が必要である。


 そして、その締切まであと三日――そんな時に、パートナーが見つからず困っていたバーデルは、思いもよらない相手から声をかけられた。



「おまえに学武会のパートナーを紹介してやろう。」

 

 そんな第一声。

 パートナーを求めてやまないバーデルにとって、ありがたい内容の言葉ではある。

 しかしその声の主が問題だった。


「ユ、ユハス!?」


 魔法科2年の、あまり良くない意味で有名人であるユハス。

 そして、バーデルにとっては学院内の評判以前に、目の前の人物とは不本意ながら関わりがあった。

 ここ数年、面と向かって話すことこそなかったが、魔法具の製造で有名なユハスとは、家ぐるみのつきあいがある。


「久しぶりだな。あと、学院では先輩と呼べ。下級生。」

「ぐっ……ゆ、ユハス先輩。」

「それでいい。」


 不敵に笑うユハスに、バーデルは表情をひきつらせる。

 物心つくころからの付き合いであるが、断じて気心の知れた相手ではない。

 むしろ、全身全霊で警戒すべき相手――ユハスはバーデルにとっての天敵なのだ。

 嫌悪すべきというよりも、小さいころから骨身にしみた絶対的な強者と弱者。 

 身体的にはバーデルの方が強いのだが、小さいころからありとあらゆる方法で苛められてきたバーデルにとって、ユハスは恐怖の象徴なのだ。

 とはいえ、ユハスが学院に入学してから、二人に接点はなかった。


(もう、縁が切れたと思って清々してたのに!)


 突然の恐怖の象徴との再会に、バーデルは戦慄する。


「い、いきなり何の用だ!」

「そう毛を逆立てるな。言ったろう。パートナーを紹介してやるって。」


 パートナーのあてもないまま、締め切りまであと三日。

 それが事実であれば、ありがたい言葉ではあるが――その言葉を信じられるほど、バーデルのトラウマは小さくない。


「そんなことを言って何を企んでるんだ!もう騙されないぞ!!」

 

 警戒心もあらわに睨むバーデルに、ユハスは肩をすくめる。


「別に今回は騙す意図はないんだが……」

「嘘つけ!」

「……そこまで期待されると、企まないわけにはいかないか?」


 そう言ってにやりと笑うユハスに、バーデルは震えあがる。

 企みがあるかないかは、すでに問題じゃない。

 仮にあったとしてもこのままだと、さらにひどい企みになってしまう。


「う、嘘です嘘です!ごめんなさい企まないで!!信じる!信じるから!!」


 土下座する勢いで全面降伏するバーデルに、ユハスは鼻をならす。


「フン。はじめからそう言え。面倒くさい奴め。」

「…………っ!」


(あ、相変わらずムカつく!)


 ふるふると怒りに震える拳を握りしめながら、バーデルは耐える。

 そんなバーデルにユハスは言った。


「まあ、安心しろ。今回はおまえで遊ぶつもりはないからな。」


 ユハスの遊び相手というのは、いじめの対象のことだ。

 嘘など平気でつくユハスだが、その言葉には嘘はなさそうだとバーデルは悟り、少しだけ安心する。少しだけだ。

 何故なら――


(今回の犠牲者が誰だかはしらないけど……ユハスの奴、いつも以上に悪い顔してやがる。絶対碌なことにならないぞ、コレ……)




 こうして不安も抱えながらも、バーデルはユハスからパートナーの紹介を受けることになったのである。



   

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ