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学武会のパートナーに困っているのは、ガルディウスだけではない。
夕陽色の髪に、猫のように吊り上った勝気な金色の瞳という珍しい色彩の組み合わせが人目を引く一年生が、頭を抱え込んで嘆いていた。
「何故だ!何故なんだっ!?」
パートナーの勧誘に連敗すること――その数すでに両手で足りず。
声をかけては逃げるように去っていく同級生たちに、バーデルは嘆かずにはいられない。
(そりゃあパッと見、強くは見えないかもしれないけど!)
身体能力重視の武闘科にしては、小柄で細身。
けれどバーデルは身体能力には自信があった。
確かに身体はまだ成長過程であり発展途上――どちらかというと発育不足で人より優れているわけではないが、それを補うには余りあるほどの高い魔力値がバーデルにはある。
魔力を肉体に循環させ身体能力を向上させる気(魔力)の運用は、武闘科においても重要視されており、高い魔力値はバーデルの肉体不足を補って余りある。
「実技の成績だって悪くないのに何でみんな嫌がるんだよ!」
そんなバーデルの嘆きに、ルームメイトのムントは溜息とともに答える。
「そりゃあ誰だって、味方からの攻撃は御免こうむるさ。」
そんなムントの言葉に、バーデルは眉を吊り上げる。
「俺は味方を攻撃しようと思ったことなんて一度もないぞ!」
「思ってもないくせに、やりまくってる方がよほど性質が悪いよね。」
「うっ……そ、それは……」
反論できずに、バーデルは項垂れる。
身体能力だけを見れば、新入生の中でもバーデルは上位に位置するのだ。本来であれば、こうもパートナーに苦労するはずがない。
しかし、バーデルには異名があった。
『標準狂いの狂戦士』
それこそが、バーデルがパートナーが見つけられない元凶なのだ。
「武器オタクで色々な武器を使いたがって、そのくせうまく扱えず武器をすっ飛ばしてあらゆるものを破壊すること数件……いや、数十件だっけ?」
「そ、それは……学武会ではすっ飛ばすような武器を使わなければいいだろ!」
対魔獣戦闘であればともかく、学武会は対人戦いだ。魔獣との戦いで重要視される特殊な武器は必要ない。
仮に対魔獣戦闘としての評価であった前衛タイプのバーデルに求められるのは、火力となる後衛の守りと魔術の発動までの時間稼ぎだ。武器の威力が低くともそれほど問題はない。
好きな武器が使えないことはバーデルとしては不満だが、それでパートナーが見つかるのならば学武会でぐらいは我慢するくらいの心積りはある。
「まあ、武器選べば味方への攻撃の確率は半減くらいならするかもしれないけど……」
「だろっ!?」
しかし、それでも――そう主張してもパートナーが見つからないのだ。
「それでもまだ危ない。半減くらいじゃ、安心できないよ。」
「なんでそんなに臆病なんだよ!」
「責任転嫁しない。悪いのは魔力を制御できないバーデル自身のせいだからね。」
「し、仕方ないだろ!魔力値高すぎるのはうまれつきなんだから!」
バーデルの魔力値は880000。
武闘科でありながら、今期新入生の中でクロードに次ぐ高魔力値の持ち主なのである。
しかしその高すぎる魔力値が問題だった。
魔力の制御がお粗末なバーデルは、戦闘中にその高濃度の魔力を無作為に放出してしまう。
術にもならないただの魔力の塊――しかし、高濃度過ぎるその魔力は、直撃した味方を『魔力酔い』にしてしまう。
お酒に酔うのと似た症状で一過性ではあるが――その症状が戦闘中に出てしまうのは致命的だ。
魔法使いとしての成功が約束されるも同然の高魔力値。
それなのにバーデルが魔法科に入らず――しかも、魔法科系の授業を一切とらない理由は、魔力制御が苦手なこと。そしてもう一つ。勉強嫌いで筆記を極力避けたためだ。
「魔力制御を身につけるには魔法科が一番なのに嫌いだからって避けてたんじゃ、いつまでも変わらないだろ。問題は魔力値じゃなくて馬鹿すぎることだと思うけど。」
「う、うるさい!教科書見ると蕁麻疹が出るんだから仕方ないだろ!」
武闘科一年バーデルこと、『標準狂いの狂戦士』。
ある意味ガルディウス以上に、パートナーにはしたくないと思われている残念な一年生なのである。




