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クエストを始める前に、ユハスには確認したいことがあった。
「おい、アルティナ。こいつの身体能力はどんな感じだ?」
「なんでそんなことを聞くの?」
「こっちはゴーレムを操って戦うが、ゴーレムの攻撃手段は物理攻撃がほとんどだ。ある程度加味して操らないと、魔法を使わせる前に倒したんじゃ本末転倒だろ。」
実戦であればそれでもいい。相手の苦手につけ込むのがむしろ定石だ。
しかし今回のクエストの目的を思えば、そういうわけにはいかない。
ガルディウスに魔法をしっかり使ってもらわなければならない以上、相手に魔法を使うゆとりを残す必要があるのだ。
「そんなの本人に聞けばいいのに。」
ガルディウスとユハスの親密化を図るアルティナからすれば、自分を挟まないでもらいたいところだ。
そんな事情など知らないユハスは、自論で応じる。
「俺はこいつが言う得意不得意がどういうレベルか知らないから、聞いてもあまり参考にならない。おまえの基準ならわかるからそれを基準にしたいだけだ。」
体を動かすのは得意です!――例えばガルディウスがそう答えたとする。
しかしその得意というレベルが、ユハスの考えるものと一致するとは限らない。
主観に基づく主張には個人差があり、ガルディウスのことを良く知らないユハスからすれば判断基準にするには曖昧すぎるのだ。
「まあ、そういうことなら。」
ユハスの言い分は、納得できる。
所詮はゴーレム。ユハスの得意分野でもない魔術に、ガルディウスが追いつめられるとは思わないが――
「ガルの身体能力は素だと残念ながら一般人以下ね。強化の魔法は使えるから、回避に限定すれば魔法使いとしてはそこそこ動ける方だと思うけれど……クロード君みたいなのと比べちゃ駄目よ。」
魔法だけならあのクロードにも負けないのでは――そう思うアルティナだが、どう贔屓目で見てもガルディウスの身体能力は高くない。近接戦闘も混ぜて二人が戦えば、残念ながらガルディウスは瞬殺されてしまうだろう。
「あんな人外を比較する気はない。」
呆れた表情でそんなことを言うユハスに、アルティナは首を傾ける。
確かにクロードは魔法使いとして歴史でも稀にみる逸材だ。
魔法を使われてはアルティナとしても勝てる気がしない。
だが、武闘一本で戦えば――負ける気もしない。
「人外って……。たしかにクロード君は優秀ではあるけど、魔法はともかく武闘はそこまでではないでしょ。」
「それはおまえ基準だ。人外2号め。」
「…………私も人外カテゴリーだったのね。」




