ルームメイトⅡ:ガルディウスの仮面②
「そこまで徹底して外さないなんて……ますます気になるな。」
ジェイクの言葉に、「確かに……」とハルルクも同意する。
アルティナとの一件以降、関わり合いになりたくないという思いばかりが先行し、気にも留めていなかったが、人間一度気になりだすと、それまでと同じ無関心ではいられないものだ。
しかし――
「あいつに外せって言ってみるか。」
そんなジェイクの発言には、ハルルクは首を振る。
「言っても外さないと思う。同室になったばかりの時、部屋でくらい仮面は外せよって言ったことがあるけど、きっぱり断られたし……。」
見るからに気の弱そうなガルディウスの拒絶は、意外だっただけに良く覚えている。
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「すみませんが、嫌です。」
思いもよらないきっぱりとした拒絶に、ハルルクは思わず目を瞬いた。
「……ええと、何で?」
「つけてないと落ち着かないので……。」
ガルディウスの言い分に、ハルルクは首を傾ける。
「普通、逆じゃないか?」
「そうかもしれませんが、おまえの感性は普通じゃないってよく言われます。」
(……確かにそんな悪趣味な仮面を平然とつけて過ごすなんて、普通の感性の持ち主であればしないだろうな。)
思わず納得してしまうハルルクだが、感性とは別問題で――人目がない個室の中でで装飾品――まして仮面など、普通は邪魔にしかならないと思うのだ。
仮面の下に隠したいものがあるとすれば話は別だが――そう考えて、はっとする。
「……別に俺は、仮面の下がどうなってるかなんて言いふらしたりしないよ?」
そんなハルルクの気遣いは、当の本人にあっさり否定された。
「いえ、別に仮面の下は関係ありませんけど。」
――仮面の下に深刻なトラウマでもあるかと思えば、そういうわけでもないらしい。
「ええと……じゃあ外せば?そんな仮面姿で常時そばにいられたら、俺は落ち着かないよ。」
面と向かって言えるほど気の強いハルルクではないが、正直ガルディウスの仮面は悪趣味な上、薄暗い中見たりしたらかなり不気味だと思っているのだ。
そんなハルルクの言葉に、ガルディウスは目に見えてわかるほどに肩を落とした。
「そ、そうですよね。」
消沈しながらも納得したような言葉に、やっと朝起きて一番に見ると心臓に悪い不気味な仮面姿から解放されるかと安堵したハルルクだが――
「こんな素敵仮面が常に視界に入ったら、うっとりしちゃって平常心は保てないですよね。」
そんな的外れなガルディウスの発言に、思わず即時に否定する。
「いや、それはない。」
きっぱりと言い放ったハルルクに、ガルディウスは安堵の息をもらして嬉しそうに言った。
「じゃあ、仮面をつけてても問題ないですね!」
「……え?」
――思いもしない展開に唖然としているうちにガルディウスは授業へと向かってしまい、その後、ハルルクはアルティナからの脅しを受け、それ以上仮面の話題に触れることはなく今まで来たのである。




