ルームメイトⅡ:ガルディウスの仮面①
アルデルト学院は、貴賎を問わず多くの子供たちを受け入れてはいるが、歴史に名を残す英雄を数多輩出してきた対魔獣戦闘におけるエリート育成機関である。
ハルルクの魔力値である8200という数値は、魔法科における平均的な値であるが――学院の外の一般人にとってはそうではない。
一般人の平均的な魔力値は200から300。
魔力値は500をこえれば高いくらいで――8000超えの人間など、そう滅多にいるものではない。
武闘科とは違い、入試において魔力値でふるい落とされる魔法科生徒たちは、世界各国から集まったその希少な才能を持つ子供たちなのである。
ハルルクの生まれ育った村でも学院に入学する若者は多いが、そのほとんどが武闘科であり――ハルルクの魔法科生徒としての入学は、3年ぶりの快挙であった。
とはいえ、同じ村の幼馴染たちは例外なく武闘科であり、ハルルクにとっても村の生活の中では魔術よりも武闘の方がはるかに身近なものであった。
魔法科生徒でありながら武闘科の授業も受講するのは、平均しかない魔力値を補うという目的もあるが、ハルルクにとっては魔術よりも武闘の方が慣れ親しんだものであり――むしろ気の知れた幼馴染たちと一緒に受けられる武闘科の授業の方が、ハルルクは好きだったのだが――。
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武闘科の授業の一つであり、最もこの学院において受講者の多い授業――『剣術』。
「ハルルク。おまえ、あの出来そこないの仮面野郎と同室なんだって?」
幼馴染たちと共に素振りに勤しんでいたハルルクは、幼馴染のジェイクの言葉に身をこわばらせた。
出来そこないの仮面野郎――それは学院一の落ちこぼれとして名高い魔法科の新入生、ガルディウスを示す言葉に他ならない。
「う、うん。まあね。」
声を潜めて、ハルルクは肯定する。
剣術の授業ではアルティナも一緒であるため――学年の違いで場所は少し離れているが、下手なことを言っているのを聞かれてはたまらない。
ハルルクの同室者――ガルディウスの評判はとんでもなく悪いのだ。
幼馴染であるジェイクもアルティナに憧れを、ガウディウスに妬みを抱いているため、ガルディウスの陰口を言うことが良くあるため、武闘科の授業中にガルディウスの話題になると、ハルルクはアルティナへの恐怖に怯えるはめになるのだ。
ハルルク自身は、ガルディウスのことを好きでも嫌いでもないが――落ちこぼれというだけでなく、学院一の美少女と名高いアルティナと仲が良いことから男子生徒の妬みを一身に集めている。
それだけではない。とんでもなく悪趣味な不気味な仮面を常に身に着けているせいで、必要以上に悪目立ちするのは、できることならやめてほしいと切実に思う。
「同室なら、仮面を外したところを見ることもあるだろ?あいつの素顔ってどうなってるんだ?やっぱり、相当不細工なのか?」
そんなジェイクの言葉に、どうやら今回は善意とは程遠いながらも、陰口とまではいかなそうだとほっと胸をなでおろす。
仮面で隠された素顔については、隠すほどの不細工というのが一番よく耳にする噂だ。
あとは醜い傷があるとか、とんでもなく老けているとか、実は女顔だとか――まあ、様々だが、あまり良い噂はない。
興味津々といった表情のジェイクに、ハルルクは眉を寄せる。
「いや。実は僕も、仮面を外したところは見たことがないんだ。」
ハルルクの返答を、ジェイクは笑い飛ばす。
「おいおい。まさか、寝ているときまで仮面をつけてるとでも?」
ジェイクがそういうのは、よく理解できる。できるのだが――
「そのまさかなんだよね。」
――ガルディウスは就寝時でも、仮面を着用しているのである。
「じゃあ、風呂は?」
「さすがに一緒には入らないからどうかわからないけど……風呂上りには、もう仮面をつけてるよ。」
寮は各部屋に浴室があるが、狭い。
二人一緒に入れなくはないが――この年になって一緒に風呂に入っているルームメイトは少ないだろうし、一緒にそんなに狭い風呂に入ろうと思うほど、ハルルクとガルディウスは親しいわけではない。
「風呂上りに仮面って……蒸れないか?」
「蒸れるだろうね。」
「でもつけてるんだな。」
「外しているところは見たことないって言ったろ。」




