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ガルディウスと共に、リードリーフを持ち帰ったアルティナが見たものは――
学園一の美貌の持ち主であるサザーラは、無事に戻ったガルディウスの顔に手をあてる。
「ガル君のことだから、大丈夫だとは思っていましたが……。さあ、よく顔を見せて。」
男同士とはいえ性別を感じさせない美貌の持ち主であるサザーラにこれだけ至近距離から顔を覗き込まれれば、まともな美的感覚の持ち主であれば誰もが思わず頬を染めるだろうが――仮面に覆われたガルディウスの顔がどうかはうかがい知れない。
「はい。」
従順に従うガルディウスを、熱い視線で見つめサザーラは甘やかな吐息を漏らした。
「ああ、良かった。傷一つなくて。」
「……先生にもっと見てほしいから。」
教師と生徒。そして男同士の禁断のラブシーン――かと思えるような光景だが、アルティナには聞こえてしまった。
声にされなかった言葉までもが。
声なき言葉を補えば――
「ああ、良かった。(仮面に)傷一つなくて。」
「……(自慢の仮面を)先生にもっと見てほしいから(傷は絶対つけません)。」
「……もうヤダ、この2人。」
どこまで仮面中心な二人に、アルティナは乾いた笑みを浮かべたのだった。
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後衛に徹したとしても、体力に乏しい魔法使いが洞窟に潜れば、感じる疲労は少なくない。
「もう今日は部屋に帰って休んだ方がいいわね。」
そんなアルティナの言葉に、ガルディウスは頷く。
体力の限界ということはないが、無事院内クエストの報酬として単位貰え、特に他にしなければならないこともない。
「アルティナさん、クエストにつきあってくれてありがとうございました。」
「いいのよ。私も久々にガルと共闘できて楽しかったし。それより、ガル。疲れてるかもしれないけど、早速明日にでもユハスの研究室に行きましょ。私の都合で悪いんだけど、明後日から武闘科の野外演習で半月くらい学院を出るから、明日を逃すとしばらくユハスの研究室まで案内してあげられないの。」
「僕は構わないけど、いいんですか?野外演習の準備とかあるんじゃ……」
「もう準備はできてるから大丈夫。どっちかというと、演習よりも学院にガルを一人置いていくことが心配なくらいだから。」
「ぼ、僕は、大丈夫です。」
学院内で浮いてしまっていること、男子生徒の妬みを買ってしまっていることは、ガルディウス自身も理解している。
絶対的に味方になってくれるアルティナの存在は心強いが、アルティナに頼り切りになるのはガルディウス自身抵抗があるのだ。
「うーん。まあ、妬んだ男子に攻撃されるようなことがあったとしても、身を守ることに関しては心配してないんだけど……。ガルって字がほとんど読めないのに、私以外に助けてくれそうな人ってサザーラ先生くらいしかいないでしょ?」
「うっ……が、頑張ってユハスさんと仲良くなりますっ。」
「その人選はあんまりお勧めしないんだけど時間もないし……まあ今回は、渡りに船だものね。」
念のため……サザーラとガルディウスの間に恋愛感情なんて一切ありません。ただの仮面愛。




