表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化&コミカライズ】悪役令嬢に転生した私が、なぜか暴君侯爵に溺愛されてるんですけど  作者: 夏目みや
コミカライズ記念

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
68/68

ゼロニスの多忙 3

 どうしよう、彼はなにか勘違いをしている。

 胸がドキドキしながら彼の腕に手を添え、振り返った。


「そ、そんなつもりじゃ……」


 ゼロニスの表情は真剣で、唇はギュッと強く結ばれている。

 まさかこの人、私が怒って出ていくと思って、焦っているのかしら。


「もしかして、私が裏門から出ると思ってここまできたのですか?」


 思わずクスッと笑ってしまう。


「……違う」


 素直に認めないところがゼロニスらしい。そうなると、ちょっと意地悪なことを言いたくなる。


「では、どうしてここまでいらしたのですか?」


 私の声が穏やかなことに気づいたゼロニスは、拘束する手をゆるめた。

 グッと言葉に詰まる彼は一瞬目を逸らすと、スッと私を指さした。


「お前が黒い格好をしているからだ」


 指さされた先のドレスには、一部だが黒いリボンで飾られていた。


「蜂は黒い服装を好む。だからここには近づくな」

「…………」

「蜂に刺されると言ったのは、お前だろう」


 確かに言った。


 そして初対面のゼロニスの前、ここで蜂を叩き落としたっけ。

 クスクスと笑う私をゼロニスはじろりとにらむ。


 最初はこんな顔を向けられたら、怖くて震えあがっていた。彼の機嫌をそこねてしまって断罪に繋がるのかと、怯えていた。


 だけど今では――。


 ああ、いつからこんなに彼のことを、愛しいと思うようになったのか。

 不機嫌な顔も素っ気ない物言いも、すべて私を想っているからだと知ってしまったから。

 自分の気持ちの変化に思わずクスクスと笑ってしまう。


「なにを笑っている。ついにおかしくなったのか」


 ……まあ、口が悪すぎだろうと、思わなくもないけれど。


「ゼロニス様こそ、お忙しいのでは?」


 言葉に詰まり、プイッとそっぽを向くゼロニス。

 そんな彼の頬にそっと手を添える。


「私は出ていきませんよ」


 約束したじゃないですか、ずっと側にいるって。


 そう小声で伝えると、ゼロニスの頬がピクリと震えた。


「休暇を取ろうとなさっていると、聞きました」


 ゼロニスは無言で、頬に添えた私の手に触れた。


「ああ、そうだ。最近は一緒に出かける時間がなかったから」

「ええ。ですが、その為に無理して欲しくありません」


 クスッと微笑む私に、ゼロニスは真剣な眼差しを向けている。


「私はこうやって二人で会話できるのでしたら、それだけでもじゅうぶん幸せなのですから」


 ゼロニスは私の手をジッと見つめ、そっと口づけを落とす。


 柔らかな感触に頬が熱を持つ。

 ゼロニスは私の反応を楽しむかのように視線を向け、再度口づけをした。


 体を震わせると、引き寄せられた。そっと顎に手を添えられ、視線が絡み合う。

 端正な顔立ちが近づいてきたと思うと同時に唇に感じる、柔らかな感触。

 甘い口づけに、全身が熱くなる。


「俺も余裕がなくあたってしまい、すまなかった」


 静かに唇を離したゼロニスの素直な姿に微笑む。


「今日でたまっていた仕事がおおよそ片付く。そしたらオルフェンの森に出かけないか」


 オルフェンの森と聞き、目を見開いた。


「行きたいです!」


 セリーヌの舞台の聖地をこの目で拝めるなんて。

 目を輝かせる私を見て、ゼロニスはフッと微笑む。


「では、さっそくセリーヌも誘いますね!」


「は?」


「え?」


 目を細めるゼロニスを取り巻く空気が一瞬にして下がる。


「なぜ、セリーヌも連れていかねばならない」


 問い詰めるような視線にたじろぎながら答えた。


「えっ、だって、セリーヌも演じる側としてオルフェンの森に行けばイメージがわくでしょう! その結果、さらに演技に磨きがかかるかと。それなら劇場主としても嬉しいかな、と思って」


 舞台が大盛況で終われば、ゼロニスにとってもいいニュースになるはずだ。


「別に舞台の評判など、どうでもいい」


 ばっさりと切り捨てられた言葉に、思わず息をのむ。


「もしかして――」


 ごくりと喉が鳴る。


「私と二人っきりがいいとか?」


 首を傾げると、ゼロニスがクッと唇を噛みしめた。その顔は真っ赤になっている。


「えっ……」


 つられて私も頬が熱くなる。


「それならそうと早く言ってくださいよ、勘違いしてしまったじゃないですか」

「黙るんだ。その唇を閉じるぞ」


 ゼロニスはそっと手を握り直し、視線を合わせてきた。

 その静かな眼差しに、胸がまた熱くなる。


「そのくらい、察しろ」


 低く落とされた声が、やけに優しく響いた。


 そして再度、ゼロニスから甘い口づけを受けたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ