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見えざる第三者  作者: ザ・ディル
一章 二〇一六年
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六話 百合ゆらら

百合回。というかレズ回。

物語にはほとんど支障がないと思いますので、苦手な方は飛ばしてください。

 

 彼女たちは、こよなく狂気を愛しているわけではないが、だからこそ…………なのだろうか? 自然と狂気で溢れていた。狂気を支配して、笑い狂っていた。

 狂って狂って、狂いを享受して貪って舐めずりまわすように、狂いで満ちていた…………そのはずなのに、今の紗良の行動を見て思わず、アラムは息を漏らす。


 「なにあれ…………」

 

 「なにアレー? たのしそー! 私たちもしない、アラムっちー?」

 

 いつも通り能天気なラギムは黄金の目をキラキラ輝かせながら、アラムに訊いた。

 

 「ば、馬鹿じゃないの……。あれは…………そもそも何がしたいのかもわからないわ…………」

 

 アラムでさえ異常にみられるような行為はまさしく狂人のソレと言ってもいい。

 ラギムは、アラムの声に耳も貸さずに、

 

 「じゃあ、私たちもあの道具を使ってやってみよー!」

 

 そう言いつつ、ラギムはどこから取ってきたのだろうか…………そのブツを取り出す。

 そのブツは--歯ブラシだった。それも、ラギム、アラムの二人分。ラギムは片方をアラムに渡した。

 

 「ふむふむー。こんな感じかなー?」

 

 そういいながら、紗良とライムの真似をする。

 それは、互いが自分の歯を磨かずに、相手の歯を磨く--狂いの女王でさえ想像の範疇を超えるものだった。というか、意味を理解できなかった。

 このとき、アラムは初めて人間に恐怖を抱いていた。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 

 <数分前>

 

 

 私は確かに、紗良に何でもしていいとは言った。それも何も物を壊さない、という条件で。

 そして要求されたのは--歯ブラシごっことかいう、意味不明な要求だった。

 

 

 「ライム? それでいいよね? 私、ライムの出した条件は守っているし、喧嘩とかでも何でもなく、ただただ歯磨きを使って人の歯を磨くだけだよ」

 

 「いや、それが意味不明って言ってるの! 聞いたことないよ、お風呂で背中洗いっことかのほうがまだわかるよ!!」

 

 「それっていわゆるテンプレでしょー? だったら、もっとユニークな方法で百合百合できる方法を考えたってわけよ。それが人の歯を磨くプレイよ!」

 

 この私の友人である紗良はクレイジーエスパーサイコレズと言ってもいいような、そんな人間だとつくづく思い知らされる。

 まあ、今回は、紗良に嘘をついてしまったから割り切るしかないけど……。

 それはそれとして、

 

 「いいけど、どうすればそれって終了になるの? 永遠に続けるわけじゃないでしょ?」

 

 「そうだよね。個人的には今日ずっとやっていたいんだけど…………」

 

 「ダメ。しかも今日って今深夜一時回っているから二十三時間もやるってことでしょ? 人の歯をさすがに二十三時間も磨きたくはないよ」

 

 「だよねー。じゃあ、一時間--」

 

 「歯磨きに一時間とか狂気の沙汰じゃない!?」


 「分かったよー。三十分でいい?」

 

 「いやあ、三十分もきついよ…………」

 

 思わずため息をついてしまう、私。

 それに堪えたか堪えなかったか知らないけど、

 

 「じゃあ十分ならいい?」

 

 「……まあ、十分なら」

 

 私は承諾した、してしまった。

 何か悪魔に魂でも売ってしまった。そんな誇張しすぎる感覚に襲われるが多分…………多分気のせいだと思う。

 

 

 <現在>

 

 

 そして今、私は気のせいだったことではないことを痛感していた。

 

 歯磨きを誰かに磨かれるというのは非常にヤバいことに今更気づく。

 私の頭の中は何かで汚染されていたようだった。いや、もう汚染されていると言っても過言ではない。

 

 

 口の中で自身の思い通りにならない歯ブラシがあらゆる方向に行き来しながら、私は快楽に蹂躙されていた。

 あの時、紗良という親友がクレイジーサイコパスレズということを埒外へと置いていた。

 その結果がこれだ。レズのプレイへと(いざな)われた。

 要するに紗良という人間は合法的に私の体を弄れる理由が欲しかった。頭おかしい。

 

 口の中に物を入れられてそれが暴れるように私の中が蹂躙され続ける。吐き気がするが、快楽も付きまとってくる。吐き気がするが気持ちよくもなっている。さらには、

 

 「ぅん%$&(ライムも早く動かして!)」

 

 このクレイジーサイコアマレズが要求したのは“歯ブラシごっこ”なのだ。私は紗良の歯を磨かなければならない。その事実をなんとなくしか思っていなかった数分前の自分はどれほど愚かだっただろうか。

 気持ちよさに、吐き気に、快楽に溺れながら他のことを要求される。これがどれほど辛いかと言えば、長距離を走りされながら英語や数学の問題を解けと言っていること異常だと--今の私はそう思っている。

 辛さを振り切って、私はえいえい! と必死に歯磨きをするけど…………、絶対効いてなよね!? これ!?

 おかしいよ。笑ってるもん、このレズ!

 って言っている間に--、

 

 「ぅぐぅ!? はぅ」

 

 紗良の滑らかな歯磨き捌きが私の歯に快感を与え続けて気持ち悪くて気持ちがいい。


 …………そろそろ限界がきている。腕をずっと浮かせながら、快感に耐えてそして紗良の歯を磨く。かなりキツイ。でも多分、まだ五分も経ってない。

 

 「&%&#」

 

 

 紗良が歯磨き粉とヨダレが絡み合っているから何を言っているか分からないけど、笑っている顔を見れば心底怖いことを考えているに違いない。

 ていうか何? 貞操が危ないなんてもんじゃない。もう奪われている気が--、

 

 「んーー!!」

 

 「ぅえっ!?」

 

 歯磨きしながらちょっと押し倒さないでよ! なんで私が床に這いつくばらないといけないの!?

 

 「--ぐっ…………へへっ!!」

 

 ちょっとその顔はマジでやめて!! 犯罪臭が! ってなんかヨダレかかってる!?

 

 私はあまりに怖すぎて逃げそうになるけど、"嘘"をついてしまったことを思い出すと、この状況を受け入れるしかなかった。

 そしてこの状態でも紗良の神のような手捌きが私の口の中を蹂躙していく。

 

 「ラ……イム……」


 「さ……ら…………?」

 

 「いぃ…………?」

 

 もはや何が『いい』のか分からなかった。

 おかしな感覚によって私は首を縦に振った。

 その瞬間、

 

 「ありがと…………んっ」

 

 「んにゅ!?!?」

 

 キ--キス!? しかもなんでディープなの!?

 

 「んっ…………」

 

 「あっ……」

 

 ここらへんで私の正常な意識は壊された。

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 もう…………散々だった。あの後のことは頭がボーッとして思い出すこと自体が難しいけど、今現在はなんとなく思い出している。とにかく、酷いものだった。レズの性欲発散器具にしかされていなかった気分だ。


 

 「もう…………お嫁になれない…………」

 

 「ごめんごめん。あまりにライムが可愛かったからさ。悪い」

 

 「というか私、歯磨きっこまではいいと言ったけど……その…………キスまでするとか……バッカじゃないの!?」

 

 「ごめん悪かったって、興が乗っちゃたからさ、ついつい理性を失いかけたよ」

 

 「いや完全に失ってるよね!?」

 

 理性は互いに失っていたと思う。それほど、……キスをされた後も酷かった。地上波に絶対放送できないようなもの…………まあ、地上波に放送されたら私は自殺する。それほど酷いと言えた…………。

 

 「うーん悪かったと思ってるよ。実質的に嘘吐いちゃったし」


 …………。紗良は嘘が大を超えるほど大嫌いだ。それでも許容できる嘘は許す。それが私の親友だ。

 そして自分が嘘をついてしまったときの絶望は尋常ではない。親友だから、今まで見てきたからわかる。澤山紗良という人間が、どれほど嘘が嫌いで、どれほど自分が嘘をついたことを嘆いているか、なんとなくわかっていた。だから、


 「産まれてから一度も嘘を言わない人間はいないよ。そして私は今の嘘にそこまで傷ついていないよ」


 嘘だ。傷つきはした。だけど、紗良を責めるほど私は屑じゃない。


 「ホントに傷ついてない?」


 「嘘だと思ってるの?」


 バレれば、彼女は壊れかねない。それほどの禁忌に入っている。親友だから一度だけ紗良の秘密を聞いたけど、それ以降紗良の口からその話を聞いたことは無い。私の推測が正しいなら、それほど話したくない内容を話したってことは私に嘘をつかれたくないか、紗良自身が嘘をつかないように見張っててほしいという意味合い。恐らく後者だ。根拠は少ないけど……。

 だからこそ、この状況で私が虚勢を張らなければ絶対に紗良の自我がブレて崩壊する。


 「…………良かった」


 私はその言葉を聞いて安堵した。





 *それは『彼女』たちは心読めないので知ることができず、しかし『彼女』たちには戯言なのかもしれない*

 *そもそも彼女たちは監視対象しか見れない*


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