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見えざる第三者  作者: ザ・ディル
一章 二〇一六年
4/21

四話 勉強は大変なことだと分かりました

 

 「ああああああああ!! わかんない!!」


 私は絶叫している。というのも、


 「えー、なんでライムわかんないのー? これくらいライムならちょちょいのちょいだよー」


 はいダウトー、ダウトだよ、この紗良とかいう私の親友の言っていることは間違ってるよ。


 私はさっきまでオープンキャンパスに行くことに決め、勉強にも精が出る……と思っていたんだけど正直もう心が折れそう…………。なぜかと問われれば、単純明快。勉強の内容が全く頭に入ってこない。


 「ねー、これホントに数学の基本問題なのー? 実は数学の超応用問題じゃないのー?」

  

 私はどうしても納得できなかったので、小学生っぽいことを言ってみた。するとそれを知ってか知らずか、紗良はクスっと笑いながらカバンから何か--参考書のようなものを手に取ってテーブルに広げてページをペラペラめくり、あるページで止めた。


 「じゃあ数学の超応用問題見るー? リミットをxから無限に--」


 「ああああああああ! き・こ・え・な・い!」


 私は耳を塞いで数学の問題を聞くのを拒否。というか今紗良が喋った内容が私がするべき内容の範囲だと思いたくない。じゃないと国公立大学受かる未来なんてゼロオブゼロ。受かる未来が創造できない。


 「まあこれは数学Ⅲでやる範囲なんだけどねー」

  

 数学Ⅲというのは文系大学に入る私には関係ないはず……。ということは--、


 「--私にとって関係ない?」


 「うん関係ないよー」

  

 見事にやられた。私が数学--というか、高校の勉強のことをほとんど知らないからってからかってくる。だけどそんな反面、わけがわからな過ぎた問題を今後解くことがないことに安堵感を覚えた。だから、紗良を怒る気はしない。なにか違和感を覚えたかもしれないけど、どうでもよくなってきた。

  

 「はあ、よかった。そんなものが受験であったらお終いだよー」

  

 「普通にこれよりムズイ問題なんてけっこうあるし、何だったら問題の途中の文章内容は数Ⅱの範囲内で理解できると思うよー」

  

 なんか不意に心臓をナイフを刺された気分なんだけど、なんか不意にトラックに轢かれて異世界転生してしまって茫然としてしまった状態なんだけど。

  

 「紗良……、何を言っているの……?」

  

 ビビる。あんな呪文みたいなものを習わなくてはならない範囲だと信じたくもない、というか真実にしてほしくない。だから、聞き返していた私がいた。

  

 「そのまんまだよー。ライムが耳を塞ぐ前に私が喋っていたのは数Ⅱの範囲なんだよー」

  

 「なん……だと…………………………………………?」

  

 やはり真実だった。あまりの衝撃に三点リーダを十六個も使ってしまったほど、私にとっては衝撃だった。

  

 「いやだって二年の微分を使う前にやる範囲だよ。しかも基礎だよ」

  

 「……数学、やめていい……?」

  

 まるで即落ち2コマ。

 よっしゃー! 勉強頑張るという1コマから、友達が勉強の問題を言葉にし始めてまったく意味が分からず、やる気が削がれるどころか絶望する2コマ目。

  

 「でも、結構簡単にわかるよー。なんなら私が今日中には解説できるような内容だよー」

  

 紗良の話す内容はホントに嘘がないと言ってもいい。もう付き合って六年ほどになるのかもしれないけど、一度も嘘を()いたことがない。もちろん、嘘になってしまったことはある。例えば、じゃんけんで勝つと言い出して負けることは当たり前にある。これは紗良でも該当する。

 けれど、私が死にそうになって紗良がその場で死ねば助けることができる。そんな状況になって、紗良が「じゃあ死ぬね」と言えばその場で死ぬことを選んでしまう。それほどまでに自分が嘘をつくのは嫌いなんだ、私の親友は。

 だからこのときの私には希望が見えた。それは親友として、紗良がどのような性格を知っていることを利用しているような気がして後ろめたい気持ちはあったが、当の本人はといえば私がそんなことを考えることはないと思っていて、会話を続けるかのように私の目を見ているようだった。だから、教えてもらうことにした。

  

 「お願いします解説してください、紗良さん、紗良先輩、紗良様」

  

 「じゃあお願い」というのも素っ気なく、味気なかったと思い、尊敬的意味も込めて適当な敬称つけた。

  

 「じゃあ教えてしんぜよう」

  

 紗良も乗り気なのかこの遊びに付き合ってくれるようで、なんとなくうれしいと感じた。

  

  

  

  

  *****

  

  

  

  

  

 数Ⅱの内容を教えてくれること三時間。ついに私が三時間前にまったく意味の分からない内容について解説し終わり、「ふう」と声を漏らした私たちがいた。

  

 「いやーなるほどそういうことね。大体、というか多分完璧に理解できたわ」

  

 私は話された内容をしっかり理解できた(と思う)。正直、勉強のことでは紗良に頭が上がらない。高校受験の時も助けてもらったし、たぶん紗良に出会ってなければ今頃は家にいてニート生活の可能性が濃厚なのかもしれないけど、それは考えたくないのでゴミ箱に捨てるようにニートをゴミ箱に捨てる。

  

 「よかったよかったー、ライムが理解できたようで。まだまだ本当はやらなくちゃいけない勉強があると思うけど今日はもう終了だー」

  

 紗良は満足したのか声を大にして叫んだ。

 ここである考えが浮かんだ、思い出したというほうが正確だけど。

  

 「紗良、今からコスプレ衣装を着ない?」

  

 「えー今からー?」

  

 紗良からの反論。もちろん心得ている。今現在、時計の針は十時を指している。このままコスプレ衣装を着て、写真を撮っていたりしたら、夜中になる(もう夜中なのかもしれないけど)。

 だけど引くわけにはいかない。明日からも勉強三昧だと考えられる。ならばその前に私なりの欲を満たしたい、そんな他者からはどうでもいいような理由で私はさらに反論する。

  

 「うん、今からだよ。今からすれば夜だから月が綺麗でいい写真とか取れそうじゃない?」

  

 「うーん、確かに。でもそれなら明日以降でもいいんじゃない?」

  

 ここで私が「明日も勉強三昧だから駄目」と言ってしまえば「じゃあ、私の気分が乗ったときでー」といわれる未来しか想像できない。だから私はその前に策を打つ。

  

 「でもさあ、今日じゃないとできないことがあると思うんだけど」

  

 今日じゃないとないとできないことがある。そういえば納得してくれるだろうと思い、そう話した。

  

 「今日じゃないとできないことって?」

  

  あっ……。うん。

  普通に考えればわかることだった。今日じゃないとできないことがあると話せば必然的に紗良が聞き返すのは当たり前。私はそんなことを可能性の範疇にさえも入れていなかった。そんな私は如何に私の頭が悪いかの証明を自らしてしまった大馬鹿野郎だった。私は混乱して頭がパニック。慌てて次の策を考えているけれどその考えは一向に浮かばない。

  

 「…………」

  

 必然的に黙ってしまう。

  

 「えっと、実は嘘を()いてた感じ?」

  

 まさにその通り、図星だった。

 私は何も言えずに時が過ぎ去るのは気まずいと思い私はホントのことを言葉にする。

  

 「ごめん、嘘ついてた。でも今日コスプレをしたい、だからしちゃダメかな?」

  

 人に嘘をつくのはダメだけど、紗良に嘘をつくのはもっとダメだ。というのも紗良にちょっとした訳があるからだ。ちょっとしただと済まない出来事だったのかもしれないけれど、本人はちょっとしたことと言い張っているのでちょっとしたことということにしている。

 だから、嘘をついたということを認めるのは怖かった。紗良が怒るんじゃないかって。紗良が私に殴りかかってくるんじゃないかって。でも、私は事実を言った。嘘が嫌いな親友に、もう一度嘘をつきたくなかったから。

  

 「--しょうがないなーライムはー、いいよ。一つ言っておくと、私はそんなどうでもいい嘘は気にしないよ。私が気にする嘘は人を心の底から裏切るような奴っていったでしょー」

  

 「うっ……そうだけど、でも……」

  

 例えそうだったとしても、今のはダメだ。親友として最もダメなことをしてしまったのかもしれない。許されない、許されるわけが--、

  

 「まあいーや、これで口実が一つできたね。じゃあ」

  

 本当に気にしてないのか、私が嘘をついたことを口実にして何かするつもりだ。

  

 「じゃあ?」

  

 「コスプレした後に私の好きなことやらせて」

  

 「えっ」

  

 それだけ? と聞こうとするが、よくよく考えてみる。好きなことをやらせるということはつまり、部屋を暴れたりするのかもしれない。そう思い、あらかじめその目を摘む。

  

 「私の家を壊したり汚したりするのは無しよ。それ以外なら好きなことをしてもいいよ」

  

 「やったー! じゃあさっそくコスプレしよー!」

  

 多分、最悪の事態にはならなくては済みそうだ。

 そしてコスプレをすることに高揚が収まらない私がいた。


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