第22部 封印されし魔物
「……!」
サツキの目の前の景色は岩の壁でいっぱいになっていた。
あの世界から現実に戻ってこれたんだろう。と胸をなでおろした。
気づけば右手にはあのサンダールーンブレイドを握っていた。
彼の声はもう聴こえないが「お前なら大丈夫」と背中を押してくれているように感じた。
「さて、目的のものも手に入ったことだし…。ここから出ようと思うんだけども、この壁は壊しちゃっていいのかな…?」
サツキはスパーク音を響かせて剣を構えた。
「おいおいおいおいおいおいこらああああああ!」
「誰!?」
サツキは振り向くが彼女の視界には何もいない。
「やいやいやい!でよったなでよったな!英雄、魔王ときたら次は巨人か?何だろうと今度こそ、この天界最強の熾天使ルシウス・サタニエール・ルシフィリーア・アポカリプス・ジェノ・ウィングダム様が貴様を、あのローランとペルセウスを!ギッタギタにしてやんよお!コラァ!」
甲高い声を頼りに探してみるとひょいひょいと音を立てながら飛び跳ねる液状の生物がいた。
意外にも近くにいたためかサツキは「うわあ!」と驚いた。
「やっと気づいたかこのクソアマァ!俺様の正義の鉄槌受けてみやがれ!」
その単細胞生物は急にサツキの方へととびかかった。
「やばっ!」
サツキは咄嗟に剣を振り下ろした。しかし、当たりどころが悪く、剣の側面にべちゃりと音を立てて張り付いた。
「へへへ。さてはお前、ロクに剣を扱ったことがないな…?ってあばばばばばば!」
電流が液状の体に流れてしまったようだ。
刃で斬られるより効果覿面だったようで地面に落っこちると力を無くしたように這いつくばった。
「とほほ…。スライムには電撃系の攻撃が抜群なんだって…。ん?スライム?」
そしてまた急に飛び上がった。
「ああああああああああ!なんじゃこりゃああああああ!えええ!まってまって、美しいあの翼も、サラサラヘアーも、イケメンフェイスも…。全部なくなってるぅ!」
「き、君は何なの?天使とか何とか言ってたけども…」
「おいおい嬢ちゃん。そういう時はまず自分から名乗るべきって…あばばばばばばば!ごめんごめんわかったわかった!名乗るから!死んじゃう死んじゃう!」
サツキは無言で刺した剣を引き抜いた。
「ごめんごめん。僕はユキムラサツキ。ただの人間。この剣を持っていこうと思ったら君が出てきてびっくりしちゃった」
サツキは剣をすぐ近くにあった鞘に納めた。
「お、おう。早とちりして悪かったな。俺様はルシウス!最強の天使だったんだけどこんな姿になっちまった」
サツキは天使と聞いてある人物を思い出す。
「天使って…。そういえば僕の友達にミカエラっていう天使がいるんだけど…」
「み、みみみ…。お、お前なんて言った?俺様はミカエラって聞こえたんだが…」
ルシウスの声はだんだんと震えていった。
「うん。ミカエラ・ジェルエン。千の技を使いこなす完璧な天使って呼ばれてるんだ」
「あわ…あわわわわ……手遅れだったか…。ついにできちまったか…」
「えっと…ルシウス?何で震えてるの?ミカエラのこと何か知ってるの?」
「ははは…。思い出したぜ全部。まずいなこりゃ。ユキムラサツキって名前は偶然じゃなかったか…」
「……?」
「ミカエラは…お前を殺す。そして、ミカエラは時空をも崩壊させる存在。カオスエンジェルとして覚醒しちまう…」




