第4部 迷える天使
「…どういうことか説明してもらえるかの?」
ミカエラが手に持っていたナイフはサツキの体ではなくもう一人の主、魔王ローランの掌だったのだ。
小さな手から流れる血は点々とベッドを彩る。
ミカエラは正気に戻った。
「……」
ミカエラは混乱していた。
なぜ人を殺めようとしたのか、過ちであることを理解しようともせず行動に移したのだから。
「もうよい。そなたのことじゃから、どうせあの女神の命令じゃろう?」
ローランは掌から赤色に塗られたナイフを引き抜いて投げ捨てた。
こくりと頷くとわあっと涙があふれる。
その場に崩れ、赤いカーペットの上に純情な涙をこぼした。
「……」
ローランは膝をつくミカエラを抱きしめた。
「真面目で謙虚なそなたが人殺しなど、故意でやるはずではないじゃろう。だが、そなたがやったことは決して許されることではない」
必死に頷くミカエラ。
「…償いたいか?まあ、いいえという選択はそなたにはないじゃろうがな」
ミカエラがあらゆる恐怖に踊らされ、震えているのがわかる。
「ならばカイザーを討ち、あの魔王に天使をやめたいと願え」
「……!」
「もはや二つの罪を背負ったそなたに天使を続ける必要はない」
その言葉を聞くと彼女は俯き、
「私には天使として生きる資格はない…」
と消える泡のように呟いた。
「このくらいにしておこうか。もしそなたが天使として生きる道を選んだならば堕天した自分に人格を喰われる覚悟をしておけ」
ミカエラはローランの忠告を聞くと眠気と倦怠感に襲われそのままこくりと眠った。
「やれやれ、脱力して眠るとはな…そなたもさぞかし辛かったじゃろう」
魔王はその小さな手で彼女の頭を撫で、彼女が元居た部屋へと魔法で転送した。
「ヤツの情報を集めるためにもミカエラを引き抜いたのじゃが…逆に天界側に利用されるとはの」
ローランはベッドの上で考えていた。
「ミカエラ以外の天使の参加者がいないというのもかなり不自然なことじゃ」
サツキの寝顔を見ると満足したようにベッドから立ち上がりドアのほうへと足を運んだ。
「姉上、人を愛していたそなたが何故サツキを憎むのじゃ…」
扉の開閉音とともにローランの姿はなくなり、サツキは何も知らずにスヤスヤと眠っている。




