1.お喋りな婚約者
初めまして。せいざと申します。初めての投稿で文が乱雑かも知れませんが、楽しんでいただけたら嬉しいです。
「アマリア、君はもっと積極性を持った方がいいよ。学園生活が始まってもう三ヶ月も経つし、新しい事にチャレンジするチャンスだよ!」
「そうですわね」
「僕なんか最近は乗馬クラブで優秀な先輩方に期待されているんだ!初夏に開催されるお披露目会の選抜メンバーに認められてね。巧みな綱捌きに皆が口を揃えてーー」
十四歳になる貴族の子女が人脈作りと学業を極める為に入学するトワール学園。
春の陽気がまだ感じられるテラスの一角で、婚約者で子爵家の次男であるダルトン・ミハエルはいかに自分が優秀で期待されているか、そして……伯爵家長女のオルタオ・アマリアがいかに向上心がなく魅力がないかを一方的に捲し立てていた。
四月にこの学園に入学して早くも三ヶ月が経つ。
周りにはようやく学園生活に慣れてきたであろう学生達が楽しげに会話をしている。
テラス席は人気スポットの様でアマリア達以外にも多くの生徒が座っており、少々声が大きいミハエルは周りから眉を顰められ不愉快そうな視線を向けられていた。
しかし本人は気付かずお喋りが止まることはない。
(ミハエル様は本当にお喋りがお好きなのね。先日我が家でお会いした時も、王宮でのお茶会で周りに人集りができるほど場を盛り上げたとか、剣術の授業で見本になり騎士団志望のクラスメイトに声をかけられたとか…五分で終わる様な内容がミハエル様の話術にかかれば壮大な冒険譚のようになります。素晴らしい才能ですわ)
ミハエルとの長年の付き合いで取得したスルースキルを発揮しつつ、そんな事を考えていたアマリアに気づいたのか、ミハエルがもう一段階大きな声でアマリアの名を呼んだ。
「アマリア!聞いているのか!」
ハッと現実世界に戻されたアマリアは婚約者に視点を合わせる。
「申し訳ありません、ミハエル様。少しぼーっとしておりました」
アマリアの返答に気分を害したのかミハエルの眉間に皺が寄る。
「またか!君は本当に何も考えず生活しているんだな!」
「申し訳ありません」
「忙しい中、こうやって時間を作って交流しているのに……君がその様に体たらくでは伯爵家の先行きも危ぶまれるよ!僕が君の家に婿として入らなかったらどうなっていたことか!」
やれやれ、と首を振り大凡仲の良い婚約者の間では交わされないであろう侮蔑お含言葉を投げかけた。
アマリアが産まれた伯爵家には男児がおらず婿を迎えるのが決まっていた。貴族としては珍しい恋愛結婚をしたアマリアの両親はアマリアの事をとても可愛がっており、婚約者探しの時も慎重に行動していた。
では何故、慎重に選んでいたはずの婚約者であり将来大事な娘と領地を支える婿がこの様な鼻持ちならない男に決定したのか……
厳選に厳選を重ねた婚約者候補達には口を揃えてこう言われたのだ。
「君は見た目もパッとしないし何より会話が弾まない。」
ということである。
両親から見たらアマリアは目に入れても痛くないほど可愛くて大切な娘、しかし他人からみたらそうでもなかったのだ。
毛量が多くウェーブした栗色の髪の毛、前髪に隠れがちな瞳は分厚い眼鏡の奥に平凡なヘーゼルブラウン、小ぶりな鼻に小ぶりな口、喋ることがそんなに得意ではなく根っからのインドア気質。
貴族が社交界で地位を確立するには領地経営だけではダメだ。魑魅魍魎跋扈する華やかな社交界を話術と外見の魅力で渡り歩かなければならない。
候補に上がった子息達にはことごとく断られてしまい、最終的に辿り着いたのがミハエルだったのだ。
鼻持ちならない男だが、白金のうねりのないショートヘアに、キリッとした目元にブルーの瞳、すっきりとした鼻に形の良い口元、手足の長いスラッとした体躯が人目を引く見た目なのだ。
このペラペラで自己評価の高い喋りも、知らない人から見れば魅力の一部になる。
アマリアの両親の前ではアマリアを蔑む様な言動を流石に控えているので婚約が破棄されることもなく今日まできたわけだ。
読んでくださりありがとうございます!




