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「お嬢様っ、急な仕様変更困るんですけどっ!」


朝っぱらから、シェリルが怒鳴り込んできた。


「お客様の急な仕様変更くらい対処できないようじゃあ一流の商人にはなれないわよ。」


「くっ・・・。」


「それで、出来たの?」


「10列のは、2つだけですが。」


「ちゃんと出来てるじゃない。」


私は、2つのそろばんを受け取った。


お父様と一緒にいたコットンに話しかける。


「コットン、これ10列のを作ったから、前に渡したのと交換してくれる?」


「なんとっ!ありがとうございます。」


深々と挨拶して、5列の物と交換した。


お父様は、呆れた顔でこちらを見ていたが、無視だ、無視。


「はい、ビル。使い方は、アリスに聞いてね。」


私は、そう言って5列のそろばんをビルに渡した。


「えっ?姉さんが教えてくれないの?」


「人に教えるのは、教える側も勉強になるのよ。」


「うん・・・。」


くっ、しょげる弟も可愛いじゃないかっ!


「モーゼス、はい、これ。」


私は10列のそろばんを執事長に渡した。


「ありがとうございます。使い方は、アリスお嬢様に習います。」


うん、出来る執事は、違うわ、やっぱ。

こっちが言わなくても、理解してくれる。


シェリルが、お父様に、出来上がった5列のそろばんを渡していた。

これは、明日にでも王宮行きになりそうだ。





アリスとレントン商会へ赴く私は、ついにアレを解禁した。


「お姉さま、おもちゃですか、その剣みたいなの?」


「見た目は、おもちゃだけどね。性能は王宮騎士のお墨付きよ。」


「うわぁ。」


正直、使いたくはなかったが、妹を守る為なら、仕方がないっ。


「いい、皆、今日はアリスを全力で守りなさいっ!」


私は、本日の護衛10名に向けて激を飛ばす。


兵士たちは私から、やや離れた位置に居る。

クロヒメが隣に陣取っているので、仕方がないのだ。


「「「・・・。」」」


兵士たちからの反応がない。


「ちょっ!あなた達、精鋭じゃないの?」


私は不安になった。


「えっと、私どもは、お嬢様とアリスお嬢様を守るのが仕事です。」


「違うわっ!本日のあなた達の仕事は、アリスを守る事よ。わかった?」


「「「・・・。」」」


ポンコツだ、こいつ等ポンコツだ。


「この場だけでも、お嬢様に話を合わせておかないと、あなた達、交代させられますよ?」


「「「・・・。」」」


リリアーヌめ、まる聞こえだっ!


「いい、全力で、アリスを護衛しなさいっ!」


「「「はっ!」」」


嘘くさい返答が返ってきた・・・。


もういい、アリスは私が守る。


正門で、いつもの如く、クロヒメがひと騒動起こす。


「クロヒメ、行ってくるからね。」


そう言ってアリスが、優しく頬を撫でるが。


クロヒメは、終始、頭を振って、いやいやをかます。


アンとブレンダが苦労してクロヒメを抑える。

下働きのアンだが、すっかりクロヒメ担当が定着したようだ。


本来、危険を少しでも下げる為、馬車で向かう予定だったが、アリスが歩いてみて回りたいというので、いつも通りの歩きとなった。

妹の我が儘を叶えるのが姉の使命だ。


左手で、アリスと手を繋ぎ歩く。

私の利き手は、右手だから、左手で繋いでいる。


左腰に帯刀していると手を繋いでいる左手が、剣の出し入れで怪我する危険があるが、何せ私のは、超不快ソードだ。鞘もなければ、刃もついていないので、安心安全だ。


ちなみに私の服装は、いつものなんちゃってでは無く、普通のお嬢様風だ。

私がなんちゃってだと、アリスへの危険が跳ね上がる。危険を分散する為、私もお嬢様然として、立ち振る舞う。


私、アリス、リリアーヌに護衛が10名。計13人のはずが、何故か14名いる。


14名いる・・・。


映画のタイトルやん・・・数違うけど。


「シェリルは、何処までついてくるつもりなの?」


「本日は、1日付き添う予定です。そして直帰します。」


直帰ほど素晴らしい物はない。

定時より早めに帰ってもいいし、普段行かないような場所に行ってもいいし、映画を見に行ってもいい。

何だか得したような気分になる。


前世の記憶が薄っすらとあるから、シェリルの気持ちはわからんでもないけど。


「どうアリス。街の感想は?」


「人が多いです。すっごく。」


小さい子は、とかく頭が動く。

右向いたり、左向いたりと、それが溜まらなく可愛いのだが。


「アーマード領の街と比べたら、どう?」


「うーん、街を歩いたことないから、よくわかりません。」


そりゃそうか。

貴族が街を歩くなんて、そうないだろうし。

今も街の人が、こっちを見ては目をそらしてる。

護衛が10名もいるし仕方がないか。

私は平常心のまま、右手はフリーにしている。

いつ何時、何があっても対応できるように。


で、何事もなくレントン商会へ到着する。


「今日は人が多いですね?」


「私の妹のアリスよ。」


「えっ?妹??」


「アリス・イデ・アーマードです。」


ペコリとアリスが挨拶をする。


「ご丁寧にどうも。エンリといいます。それでお嬢様、本日はどういった?デザインの件ですか?」


「そっちはまだよ。」


「では、どのような?はっ!まさか新たなアクセサリーを作る気ですか?」


エンリから期待の眼差しが向けられる。


「これを金属で作って欲しいんだけど。」


私は、そう言って木製のかき混ぜ棒を差し出した。


差し出した、かき混ぜ棒は、女性用で、料理長たちが使用している物より、若干小さく、持ち手も女性が握りやすいようになっている。


「これは何ですか?」


「かき混ぜ棒よ。料理道具の一つね。」


「料理道具なんですね。すべて金属にするんですか?」


「ええ、そうよ。出来るかしら?」


「はい、問題ないと思います。」


「ちょっと待ちなさい。」


大人しくしていたシェリルが声をあげた。


「えっと・・・、アリスお嬢様のお付きの人ですか?」


「違いますっ!」


「えっ、誰なんです?」


「アーマード商会のシェリルと言います。」


「アーマード商会?そんな商会が?」


「くっ、これだから都会の商会はっ!」


「アーマード領の商会よ。」


私がエンリに説明してあげた。


「ああ、貴族お抱えの商会なんですね。申し訳ありません。そういう事に疎いもので。王都の商会なら把握しているんですが・・・。」


エンリが、火に油を注いでしまった。


「アーマード商会は、王都に支店がありますっ!」


「す、すみません・・・。」


「どうせ田舎の商会と思っているんでしょ?」


被害妄想も甚だしい。


「思っていません。」


「まあいいわ。そんな事よりも、安請け合いして大丈夫なのかしら?金属で、かき混ぜ棒が作れると思っているの?」


「これくらいなら、問題なく。」


「な、なんですってっ!王都には、そんな職人がいるってこと?」


「王都にはいないと思いますよ?」


「じゃあ、どうすんのよっ!」


「ドワーフに依頼します。」


「はっ?ど、ドワーフに伝手があるわけ?」


「伝手も何も、このエンリは、ドワーフの職人の弟子よ。」


私がシェリルに説明した。


「そ、そんな・・・。」


愕然とするシェリル。

まあ、シェリルの事はいいや。


「という事で、エンリお願いね。あと、手で持つ部分は何かしらの装飾をお願い。」


「女性用ですか?」


「ええ。」


「もしかして、ダリア用なのですか?」


シェリルよりも長く黙っていたリリアーヌが声をあげた。


「まあ、そうだけど。」


「料理道具に、装飾なんて不要です。ましてや木製があるのに金属製が必要ですか?」


「木製は、やはり壊れるでしょ?」


木製と言っても、早々壊れる物ではないが、当家では、過酷に使用されているので、やはり心許ない。


「なんて勿体ない。」


ダリア用が気に食わないんだろう、無視だ、無視。


口うるさい連中をほっといてアリスに声を掛ける。


「アリスは何か気になった物でもある?」


「お姉さま、私もブローチを作ってみたいの。」


「欲しいんじゃなくて、作りたいの?」


「はい。」


妹の願いは、極力叶えなければっ!

しかし・・・。


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