それぞれの思い
「そろそろいい頃合かな?」
一人、制御室から移動したゼレンはコツコツ歩きながら、大きな扉の前に立たち、右側に設置されている操作パネルを弄る。扉のロックを外すと、中に入っていく。
中は広くも、沢山のカプセルに囲まれており、その全てに、現在のノオンの肉体と同じ擬似肉体が収められていた。
それらを無視し進んで行くと、部屋の中央に二倍程の大きさのカプセルが置かれていた。近寄り、操作パネルを弄り出す。
「ああ……ユリスティーナ! やっと会えるね!!」
愛おしそうな眼差しで言う彼の目に映るのは、長い紫色のウェーブかかった二十代くらいの、成人女性の姿をした擬似肉体だった。
その容姿は、どことなくノオンに似ているが、彼女よりも女性的な顔つきをしていた。
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「おい! これちゃんと降りれるんだろうな?」
空中に浮かされ、勝手に移動させられているのが不満なのか、シャインがラファを睨みつけながら言う。
「安心しなさい! 私の魔術は完璧だからね!」
「……その割に。呪い受けたり、拘束、外せなかったり、してたけど?」
フレナのツッコミに、ラファは引きつった表情を浮かべると、
「あ、あれは油断と禁書のせいさ! それより、二人とも私が渡したアレ、ちゃんと持っているだろうね?」
無理矢理話を切り替えるラファに、二人はため息をはきながら、渡されたものを手に取る。それを確認すると、
「うんうん! よし、じゃ……そろそろだよ!」
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「うう……うっ……!!」
悔し涙を流しながら、それでも拘束をなんとかしようともがいていた時だった。
胸元のポケットから、突如、淡い光が発せられ、光は徐々に強くなっていく。
「コレは……確か、フレナさんにもらったお守り?」
お守りはポケットから飛び出ると、『翼』に引き寄せられ、バチバチと音を立て、ノオンの拘束を解き、炭化した。
「! すごい……。こんな効果があるなんて!」
そこまで独り言を言ったところで、慌てて拘束具から離れ、走り出す。
(バカバカバカ! ほうけてる場合じゃないよ! まずは逃げて……体勢を立て直さなきゃ!)
とにかく『翼』から距離を取ろうとする彼女の元に、あの女の声が響いてきた。
「あら? どこに行かれますの? ノオン・アスラフィル!」
「その声、ラフルさん!?」
警戒しながら、周囲を見渡す彼女の前に悠然と現れたラフルは、目が笑っていない笑顔で、
「どうやって拘束を外しましたの? ……まぁ、いいでしょう。もう一度、戻って頂きますわよ!」
そう言って、ラフルが杖を構え、無詠唱でノオンに向けて魔術を放った……瞬間だった。
弾丸と小さな稲妻と矢が、ラフル目掛けて飛んできた。




