あと 18人 のこり39人
「……ぃ、ぉい!!」
? 声がする…………
「おい、起きろ! 起きろと言っているんだ!!」
だってさ、だれかさん
「おら起きろ高橋!!」
「ほら、よんでぇ……って、俺!?」
「やっと起きたか」
「おう、おはよぅ……あぁ?」
呆れ半分怒り半分の顔の親友の声で目ざめた俺は、デカイ欠伸をかまし辺りを見回ておかしな事に気づく。
「あ……ぁ? 学校?」
そう、目が覚めた場所は俺がいつも通っている、聖カトリシア学園の、自分の所属するクラスの教室なのだ。
別に、これが朝とか昼とか放課後とかなら構わない。(いや、つかいつも寝てるかもしんねぇ。)だが、
「お前、記憶で一番新しい記憶を言ってみろ」
「え、なんかそれかっけぇ言い回しだな。
ん~……と、たしか、家帰って、漫画よんで、夕飯食って、パソやって、間食食って、ネトゲやって、晩飯食って、新しいゲームやって、ほんの数秒勉強して、寝た」
「もの凄い悪い生活だな。どんだけ食ってるんだ」
「いち、にぃ……一日八回?」
「どうでも良い情報をどうも。それでその体型だから不思議だ」
「きちんと体動かしてんだよ」
「無駄にな」
「うっせ。お前は?」
「食事をして勉強をして寝た」
「うわぁ、つまんねぇ生活」
「もう高校生にもなるのに、お前のそのゲームやネット漬けの方が異常だ」
そう言って来る俺の友人、鬼島雷兜に「そう言うヤツ多いぜ」と心の中で返し、今の状況を頭の中で整える。
俺は確かに寝た。うん、好きなアニメキャラとの夢が見れます様にって思いつつ寝た。
なのに、
「なんで、学校にいるんだ……?」
「外を見たが、完全に夜だ」
雷兜の声に反応して、ブラインドの上がった窓に目をやるとそこには満月がぽっかりと間抜けに浮いている。
「……、お前、いつくらいに目ぇ覚めた?」
「俺は起きてからすぐにお前を見つけて起こした。流石に、一人じゃ対処できん事もあるしな」
「んー……」
月明かりで明るい教室を見回し、なんで俺ら二人が教室に……、とか考えていると、俺は黒板に目がいった。
なにか白い紙が貼ってある。
「ん?」
「? なんだ…………
名簿?」
「だな」
黒板に磁石で貼ってあったもの。それはこのクラスの名簿だった。
「あー、俺まだ全員名前覚えてねぇや」
「もう夏だぞ」
「興味ねぇんだよ」
「俺もだがな」
「ははっ。
しっかし、…………なんで俺ら二人なん?」
「知るか。俺が起きた時はここにいたし、お前しかいなかった」
「そか」
返事を返し、俺は他に何か無いかと目で探す。
と、すぐに黒板の文字に気がつく。
「?
『○ 0人 あと18人
× 0人 のこり39人』
………………あぁ?」
「なんだコレは?」
「俺が知る訳なかろうがぁ」
「使えん」
「うっせ」
○は黄色で、×は赤のチョークで描かれていた。なんなんだ、コレ。
「つか、いい加減帰るか。もうすっかり目ぇ覚めちまったけどな」
「誰でもそうなるだろう」
「あぁ……あ、でも令雄とかだったら寝てそうだよな、あの脳筋」
「アイツはバカなだけだ」
「あははっ。
あ! 氷川とか寝てそーじゃね? 『眠いんです……』とかいって。あー、アイツ可愛いよなぁ」
「変態か」
「そうだが。
あぁ、大丈夫。俺、氷川には手ぇださんって」
「ふん、言ってろ」
「とか言っちゃってさぁ、ほんとは好きなん見え見えだっつーの」
「……」
氷川も多分お前の事好いてるだろうよ、と思いながら口には出さずニヤニヤしながら雷兜を見ていると「キモイぞ」といわれマジで落ち込みつつ「へーい」と返し、帰ろうと教室の扉にむかう。
「ったく、でも何で俺こんなとこにいんだろ」
「この時間の学校は立ち入り禁止なはずなんだがな」
「先公たちのいたずらだったりして」
「無い」
「ですよねぇ〜」
つか、「と、いう夢をみたのさ」って落ちじゃないかな。
ま、帰るか。よし、ゲームが俺を待っている。
ガラッ。
と、扉を開けようとしたその時、
『ガッ……ガガッ!』
「? 放送?」
「うん。でも何で?」
「だから俺に聞くな」
『ッガ…………………………
こんばんは、3年C組の皆さん。
』
ノイズの混じった音と、機械で変えられた耳障りな声。その両方が教室のスピーカーから流れて来た。
「誰の声だよ……」
「静かにしろ。聞こえん」
『急にゴメン……“ガッ”ね〜、こんなとこつれて来て。
でもね、今から君たちにやって欲しい事があるんだ。きっと楽しいよ』
? やって欲しい事?
『今ね、この学校は中から出ら“ガガッ”れないようになってるんだ。だから帰ろうとしても無駄だよ。
でもね、専用の“ガッ”出口を使えば出られるんだよ“ッ”』
「出口……だと?」
「とりま最後まで聞いてみよーぜ」
「あぁ」
『その出口はね、十八個用意されているよ。“ガガッ”みんな、ソレを探してここからでてね。
ちなみに“ガガッ”出口は一個一回しか使えないから』
「「……」」
『そして、全ての出口が使えなくなったとき、この校内に殺人鬼が校舎内にいる生徒を殺してしまいます。「悪い子はいねぇが〜」ってね』
「なっ」
「しっ! 落ち着け」
『だからみんな早くこの学校から逃げて下さい』
ぷつっ。
「…………………………」
「だってさぁ」
「お前、なんでそんなに軽いんだ」
「ん〜、なんでだろーねぇ」
「……はぁ。
いい、とりあえず出口を早急に『あ、ごめ〜ん。一つ言い忘れてた。今現在、この聖カトリシア学園“ガガ”内には三人の“鬼”、つまり殺人鬼がいまーす。殺されない様に気をつけてね』
「……んーと、リアルに鬼ごっこなん?」
「らしいな」
「うわぁ、俺体育で一番嫌いなのに、鬼ごっこ」
「太れ」
「だが断る。
んーじゃまぁ、……仲間でも探しますかねぇ」
「だな」
俺は頬に冷や汗が伝うのを感じつつ、教室の扉を開けた。




