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忌避された破壊魔法使いの私、嫁ぎ先の辺境公爵さまにかけられた呪いは、なぜか私にだけ発動しませんでした  作者: 秋名はる


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第42話 エルミールの結婚祝

屋敷に戻ってきてから、再び平穏な毎日が訪れた。


今日は、再びエルミールとエドワードが、私達の屋敷を訪ねて来てくれていた。


前回は、途中で私が失踪してしまったために、二人は慌ただしく帰っていってしまった。今回はその埋め合わせもあって、暫く滞在することになっていた。


屋敷で過ごして数日たったある日、エルミールは唐突にこんな提案をしてきた。


「お姉様、そういえばわたくし……

 まだ、お姉様からエドワード様との結婚祝いをいただいていませんわ」


確かに、彼女が正式にエドワードと結婚してからもう随分経っていた。


「たしかにそうだったわ。

気がつかなくてごめんなさい」


私は慌てて立ち上がったものの、ここで腕を組んで考え込む。


(……とはいったものの、何か私に贈れるものがあったかしら)


「そうですわ。私、何か宝石が欲しいです。

お姉様が洞窟で掘り当てた宝石達、そのうちのどれかをわたくしにくださいません?」


悪びれもない笑顔。


確かに、あの採掘場は今絶好調で、無尽蔵にに宝石が取れている。


大半は販売用に出荷してしまっているのだが、それでも一部の収穫は私のもとに届けられていて、その数はどんどん増えていた。


王都セントラルでも噂になっていましたわ。

 北部の宝石窟は、今絶好調だとか。少しくらい頂いても良いでしょう?」


良い案だと思った。


私はもともと宝石や装飾品といった光り物に興味がない。炭鉱で引き当てた宝石達は、今は使い道もなく持て余していたのだ。


念のため、その話をユリウスに提案すると、彼も了承してくれた。


「もちろんだ。あそこで採れた宝石は、すべて君の好きなようにしていい。

 採掘師に質の良い原石をいくつか選ばせよう。

 君が良ければ、妹に気に入ったものを選んでもらえばいい」


というわけで数日後、採掘場から宝石の原石を抱えた宝石商が屋敷を訪れた。


加工品ではなく原石のままにしたのは、その方がエルミール自身が好みの形に加工して用いやすいだろうという判断だった。


宝石商が蓋を開けると同時に、エルミールの瞳が輝いた。


「……なんて大きくて、美しいのでしょう!」


箱の中には、こぶし大ほどの原石がぎっしり詰まっていた。


赤、青、緑、透明――色とりどりの宝石たちが、原石のままにも関わらず眩い光を放っている。その大きさと輝きからどれも最高級品なのだろうということが一目で分かった。


「やはり、この中で一番高価で貴重なものといえば……この透明なダイヤモンドですわね」


エルミールは箱の中央でひときわ存在感を放つ大きな透明石を指さした。


「さすがエルミール様、お目が高い。

 これはこの地で採れた、最も高品質のダイヤモンド原石のひとつです」


宝石商は嬉しそうに胸を張った。


「フェンネル、よければ君も一つ選んでみたらどうかな?

 まだ自分で採掘した宝石を手に取ってみたことはなかっただろう」


不意に、後ろで見守っていたユリウス様がそんな提案をしてくれた。


嬉しい申し出に、私は箱の中を覗き込んだが、何分宝石たちに詳しくない私は、一体どれを選んだらよいか悩んでしまう。


そんな様子を見ていたエルミールが横からこんなことを言い出した。


「お姉様はこういった装飾品には詳しくありませんから、代わりにわたくしが選んで差し上げますわ。

 そうですね……これなんていかがでしょう?」


そう言って、エルミールが箱の隅から取り出したのは、なんだか少しくすんだ薄緑色の原石だった。


「ちょっと霞んで薄汚れていますけれど……お姉様の瞳の色にそっくりですわ」


受け取ってみれば、確かに瞳の色に似ている。

けれど、ぼんやりと曇っていて、どこか脆そうでもあった。


すると宝石商が、控えめに口を挟んだ。


「エルミール様、確かにその原石も稀少ではありますが……

 これはもともとの硬度が低く、装飾品への加工には向きませんよ。」


「あら、よいではありませんか」

エルミールは笑って言う。


「もともとお姉様は装飾品に興味がありませんもの。

 この程度で十分でしょう?」


「そ、そうね……」


確かに、自分にはこの前ユリウス様から送られた使い切れない装飾品もある。更に自分用に追加で必要とも思えなかった。


 それに、この原石は確かに色が薄くてくすんでいるけれど、この控えめな色合いが、なんだか自分と重なって見えてしまい、逆に少し愛おしく思えてしまう。


「なんだか……愛着が湧いてきました。

 せっかく勧めてくれたことですし、私はこれにしようと思います」


私が原石を受け取ると、エルミールは満足そうに微笑んだ。


宝石商が帰り、エルミールも部屋を去ったあと。

一人で原石を眺めていると、不意にユリウス様が声をかけてきた。


「あの場では言わなかったが――その宝石には、装飾品にはない価値があるんだ。」


ユリウス様は、私の手にある薄緑の石に視線を落としながら続けた。


「その石は“燐葉石フォスフォフィライト”と呼ばれる。

宝石商の言うとおり硬度が低いため、装飾品にはほとんど用いられない。しかし磨けば、春の湧き水のような透き通る光を放つ、とても貴重なものなんだ」


「まあ、それは知りませんでした」


「そもそも硬度の低い燐葉石が、こんな大きさの原石として採掘されることは滅多にない。私も、今までにほとんど見たことがない。この世に二つとない、極めて貴重な石だ。

私は君がそれを選んでくれたことが、なんだか私は嬉しいよ」


その言葉に、心がほのかに温かくなった。


「そうだったのですね。

 幸運にも私の手元へ来てくれたこの石……大事にしたいと思います」


微笑むと、ユリウス様も優しく笑みを返してくれた。


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