表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忌避された破壊魔法使いの私、嫁ぎ先の辺境公爵さまにかけられた呪いは、なぜか私にだけ発動しませんでした  作者: 秋名はる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/44

第30話 略奪作戦

治癒魔法のアピールがうまくいかなかったエルミールは、すぐさま次の作戦に出た。


夜、ユリウスが休んでいる私室の戸を静かに叩く。


中にいたユリウスは戸口に立っているエルミールを見て首をかしげた。


「ユリウス様、夜分に申し訳ございません。

 実は、姉のことで――ユリウス様のお耳に入れておきたいことがあるのです」


エルミールは憂いを帯びた瞳で、力なく訴えた。


彼女の様子を察したユリウスが、エルミールを部屋に招き入れると、エルミールはいつものように、今にも泣き出しそうな声で告げた。


「実は……姉の持つ“呪われた力”のことなのです。

 家族の禁忌として、誰もが口をつぐんでおりましたが……。

 婚約者であるユリウス様には、知っておく権利があると思いまして」


「呪われた力?」


ユリウスは真剣な表情で問い返す。


「ええ。実はお姉様は、私と同じく魔力を持っております。

 ですがそれは、とても危険なもので……家族も親族も皆、あの子に怯えて暮らしてきたのです」


エルミールは青ざめた顔で、上目遣いにユリウスを見上げた。


「最初は私、その次はエドワード様でした。

 姉は魔力のコントロールがうまくいかず、手当たり次第に周囲の人を傷つけてしまうのですわ」


震える手を胸にあて、言葉を続ける。


「姉のためを思い、これまで黙っておりましたが……。

 ユリウス様が危険にさらされるなんて、私には耐えられません。

 どうか――今すぐ、彼女から離れてくださいまし」


エルミールは、危機迫った迫真の演技で訴えた。

この告発を聞いて、今まで姉になびきかけていた誰もが、目の色を変えて姉から離れていった。


今回もそのはず、と意気込んだエルミール

しかし、その訴えに対するユリウスの反応は、想定外のものだった。


「――それは、フェンネルの“攻撃士”としての能力のことを言っているのだろうか」


「攻撃士……?」


聞き慣れない言葉に、エルミールは首をかしげる。


「ああ、フェンネルが自分から説明してくれた。

 自分の力を“危険”と恐れられて育ったのだと。

 だから人前で力を使うことを避けていたようだったが」


彼の思いも寄らぬ言葉に、エルミールは一瞬眉を顰めた。


「しかし、私はフェンネルの魔力を間近で見たことがある。

 私は、彼女を“危険な存在”だと感じたことは一度もない。彼女は力を完全に制御しており、むしろ有能に使いこなしている。

――ひょっとすれば、私よりも優れた魔力を秘めているかもしれない」


ユリウスは穏やかに、しかし確信をもって言葉を重ねた。


「そんな姉を陥れるような発言をするとは……。 私には理解できないな」


ユリウスがあまりにもズバッと、エルミールの訴えを切り捨てたので、エルミールは返す言葉を失った。


「で、でも……本当のことなのです。

 私もエドワード様も、彼女に怪我を負わされ、命の危険さえ――!」


必死に訴えるが、ユリウスはピシャリとはねのけた。


「私はフェンネルに命を救われた。彼女がいなければ、今も私は“呪われた身”のままだった」


(どうして……? 知り合ってまだ日の浅いユリウス様が、どうして、こんなにも姉に強い思いを抱いているの……?)


エルミールは、衝撃とともに――受け入れ難い現実を突きつけられたのだった。


「そういう君こそ……。昼間の治癒魔法の実演で、何やら怪しげな小細工をしていたようではないか。

魔力のある者から力を奪って使う――そんな術を、フェンネルは了承しているのか?」


エルミールが姉から魔力を盗んでいたことはユリウスにはバレていたのだ。


「あっ、あれは……その……。

 魔力を禁じられているお姉様の代わりに、私が有効に使って差し上げようと……」


言い訳は、あまりにも苦しいものだった。

エルミールは突きつけられた事実の前に、どうすることもできずに立ち尽くす。


「フェンネルによく言っておかねばならないな。

 ――“君の妹には気をつけるように”と」


そう言われてしまい、エルミールは引き下がるしかなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ