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忌避された破壊魔法使いの私、嫁ぎ先の辺境公爵さまにかけられた呪いは、なぜか私にだけ発動しませんでした  作者: 秋名はる


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第21話 北部の魔物討伐

ある日、いつものように午後のお茶の時間を満喫していると、ちょうど公務から戻ったばかりのユリウス様に声をかけられた。


「フェンネル、ここにいたのか」


「ユリウス様、お戻りだったのですね」


彼は、また暫くの間外遊に出ていた。

私は席を立って、ユリウス様の方に駆け寄る。


「ああ、用事が早く済んだので、ひと足早く戻ってきたんだ」


「それは良かったです」


私が微笑むと、どうしてだかユリウスさまは一瞬だけ寂しそうな顔をする。


「_フェンネル、後でまた私の部屋に来てくれないか。話しておかねばならないことがあるんだ」


私は首をかしげたが、ユリウスさまはそのまま去っていってしまった



* * *



屋敷へ戻ると、どうしてだかさっきまでのんびり仕事に励んでいた使用人たちの様子が落ち着かず、どこか物々しい空気が漂っている。


胸騒ぎを覚えながらユリウスの部屋へとついていくと、彼はソファにもたれかかり、静かに息を吐いた。


「……実は、これからまたすぐに遠征に出なければならなくなった。」


低く響いた声は、どこか重たかった。


「えっ? ……それは、また急ですね。」


せっかく屋敷に戻ったところだったのに、私は思わず言葉を詰まらせた。

少し多忙すぎではないかと、胸の奥に不安が広がっていく。


「今度は、どちらへ……?」


問いかけようとしたところで、ユリウスは顔を上げ、真剣な眼差しで続けた。



「実は、辺境に潜んでいた魔物が再び目覚め、農民たちに被害を与えているらしいんだ」


「まさか……!」


私は血の気が引いた。


「そんな、でもあの魔物は」


ユリウス様が討伐仕掛けた魔物は、消息を経って、そのままどこかに姿をくらましたはずだった。


「ああ、奴は私がこの石を抑えている間は大人しくしているはずだった。

 しかし――どうやら、いよいよ私の力をもってしても抑えが効かなくなってきたようだ。

 私は、これからその地へ赴き、やつの動向を探ってくる。だが……今回は兵を投入しても太刀打ちできるかどうか」


それを聞いて、私は思わず声を荒げていた。


「そんな……危険です。行ってはいけません。

 ただでさえ、あなたは“石の呪い”を受けたままなのに……!」


「黙って見ているわけにはいかない。

放っておけば、やつはやがて市街地へ――いや、南部にまで進行するかもしれない。」


「それは……そうですが……。」


私は唇を噛んだ。


「ならば、私も――一緒に行かせてください」


前から思っていたことだった。私の攻撃師としての力を彼のために役立てたい。

だが、彼は当然のようにこれを拒否した。


「だめだ、危険すぎる。君には、これまで通り屋敷を任せたい。辺境での噂が広まれば、街の人々も動揺するだろう。皆を安心させる“よう努めてもらいたいんだ」


真剣な顔でそう言われてしまえば、もう何も言い返すことはできなかった。


「_留守中を任せるために、というわけではないが、君に渡したいものがあるんだ。」


ユリウスはふと立ち上がり、机の引き出しから小さな化粧箱を取り出した。


箱の蓋を開くと、中には薄緑色に光る小さな宝石が嵌め込まれた、繊細な銀のペンダントが収められていた。


ただの宝石ではない、この石はなにか魔力を秘めていることが一目で分かった。


「私が不在の間、これを身につけていてほしい。

君が無事でいることが、これで分かるようになっている。……お守りのようなものだ。」


そう言って、ユリウスはそっとそのペンダントを私の首にかけた。

透き通るような新緑の輝きが、ランプの灯りを受けてきらめく。なんだか本当に今生の別れみたいだ。


納得できないと思い私が再び顔を上げると、ユリウスもまた真剣な顔をして私の方を見下ろしている。


「すまない_。君が屋敷にやってきてから、君には苦労をかけてばかりいる。

 もし私にこの呪いがなければ、ここまで気負わせることもなかっただろう。」


「ユリウス様……」


彼は思い詰めていた。そんなことを気にする必要はないのに。


私にとって、彼と過ごした日々は、何にも代えがたいものだった。実家で家族と過ごしていた時とはまるで違う。私がこうしてここで穏やかに過ごすことが出来たのは、外でもない彼のおかげだった。


私は、泣きそうになりながらうつむく。

すると、不意にユリウスさまが私の両肩を抱いて、こちらに向き直らせる。


そのまま私の頬を指先でそっとなぞると、ひたいに優しく口づけを落とした。


ハッとして見上げれば、ユリウスさまの澄んだ淡紫の瞳が覗きこんでいたいた。


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