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2年1組、Go to アナザワルド 〜イチクミ、異世界へ〜  作者: くまの香


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38話 肉ギルド

 肉の試食から、あ、違った、魔物の解体から、一週間が過ぎた。


 肉ギルドが出来た。

 この国って動くの速くてびっくり。



 僕らの初討伐で帰還した時に魔物のお肉が食べられる事を伝えた。

 驚いていたが、お城の裏庭で焼肉してみせた。厨房は貸してくれなかったんだ。いいけどさ。

 もちろん注意事項もしっかりと、タガセンが伝えていた。


 今まで食べられないと思われていたお肉が、処理方法によって食べられるって事がわかっても、お城の人はやはり嫌がって食べたがらない。


 ただ、たまぁに獲れる鳥のお肉は高価なご馳走らしく、『肉』自体を嫌っているわけではないみたい。



「何でダメなんだろうな?」



 日向君やみんなも「大丈夫」とか「美味いから」とか伝えたけどなかなか口にしない。



「気持ちはわからなくもない」

「何でだよ」

「例えばさ、俺ら日本人は肉は好きでも絶対に『人肉』は食べないじゃん? 美味しいから食ってみろって言われて、食える?人肉」

「無理!」

「うわぁ、絶対無理」


「そんな感じなんじゃないかな」



 日向君って凄い、わかりやすい説明。うん、僕も食べられない。いくらお肉が食べたくてもソレは無理だぁ。



 結局、無理に進めないけど、僕らは裏庭で調理をした魔イタチのお肉を食べていい事になった。

 魔イタチのお肉はササミみたいであっさりしている。それでもパサパサしてなくて美味しい。だけど人間の欲ってキリがないね。僕はもっと脂のこってりした牛肉とか豚肉が食べたくなってた。



「魔豚とか魔牛とか、いないのかなぁ」


「おっ、ポチャ次郎、俺も同じ事考えていたぜ。牛丼とか食いたいなあ」



 太郎君、同志だ。



「僕はね、生姜焼きとかすき焼きいいなぁ。あと焼肉弁当。それと、あああ!唐揚げを忘れてた! 僕としたことがお弁当トップを飾る唐揚げ弁当を忘れるなんて!」


「ポチャ次郎、お前んち金持ちじゃなかった? 何で弁当ばかり出てくるんだ?」


「えっ? 僕んちお金持ちなの?」


「違うのか? 知らんがそんな噂があるぞ」


「知らない。夜はコンビニお弁当が多いよ? 前は、お掃除のおばさんが入る日に晩御飯を作ってくれたけど、ふたりだから勿体無いって綾香さんが断った」


「掃除のおばさん、それたぶん家政婦さんな。一般家庭は家政婦なんて雇えないからな。やっぱポチャ次郎んちは金持ちだろう」


「そうなんだ」


「綾香さんって叔母さんだっけ? 叔母さんは作ってくれないの?夕飯」


「うん。綾香さんの仕事が休みの日は作ってくれる。けど、綾香さん料理はあまり得意じゃないんだって。その、コンビニのお弁当って美味しいよね。種類もいっぱいだし。」



 僕らは裏庭で話しながらお肉を焼いていた。

 3日目あたりに、お城の人がチョロチョロと裏庭を通りかかるようになった。

 4日目には、焼き台の近くまで、5日目にはお肉を焼いている鉄板を覗き込む人が増えた。


 まぁね、お肉が焼けてくるちょっと焦げた匂いって、暴力的だと思う。口が緩むと涎が溢れそうになるし。

 覗いていた兵士さんのツバをゴクリと飲み込んだ音が聞こえた。


 6日目、とうとう勇者が出た。死を覚悟して魔イタチの焼肉を口にしたのだ。

 ひとり出たら、あとはもう芋蔓式に勇者が蔓延した。


『美味い!』と。



 ただ、その頃にはもう肉の在庫は無くなってきていた。


『魔物も肉が食べられる』


 それだけが広まってしまうと大変なんだって。

 この国の人が魔物を獲りに行って死傷者がたくさん出たり、毒の付いたままにお肉を食べて死んでしまう人が多数でるかもしれない。

 だから、魔物討伐は『冒険者ギルド』を必ず通す決まりが出来た。獲った魔物も一旦はギルドへ渡す。


 そして、魔物は『冒険者ギルド』から『肉ギルド』へと回される。そこで毒抜きされる。そして食べられるお肉は肉ギルドでのみ、購入出来るようにしたんだって。

 安全なお肉が国民の食卓へ出せるように。


 現在肉ギルドでは、毒袋除去の訓練が猛スピードで行われていると聞いた。

 太郎君と僕も、毒袋を取り除くお手本を見せに行った。ギルドの職員さんは怖いくらい真剣だった。やっぱり大人は凄いな。



 この1週間、僕らは討伐へ行けなかった。タガセンがお城の人と会議があるみたいで、僕らだけの行動はNGだからだ。

 

 なので部屋での勉強や中庭でスキル訓練をする1週間だった。けど、夕飯にプラス焼肉があるのがみんなの活力になった。

 味付けは塩だけでなく、厨房からなんか色々貰ってきてくれたみたいで、バリエーションが楽しめて嬉しい。


 

「なんだかんだ言ってさ、やっぱ、塩が1番じゃねえ?」


「そうだな。肉の旨さを引き立てるのは塩だな」


「あの辛いやつも美味かったぜ。とんがらしみたいな味のやつ」


「私は酸っぱい系でさっぱりが好き」


「うんうん、あのすだちみたいなの。あれ、庭で採れるって」


「でもさあ、ササミだから焼くとさっぱりしすぎなのよ。唐揚げにしたいなぁ」


「ササミフライでもいいね」


「そうなのよ。でも、油がねぇ」



 なんかこの国って、料理油が無いというか、油をほとんど使わないんだって。



「油、売ってないのか?」


「あるにはあるらしいけど、輸入品だから超高価なんだって」


「国内で油、作れないんだ?」


「そういや、油って何から作るんだ?」


「食用油でしょ……。大豆とかひまわりの種ってどこかで聞いた事ある」


「うちのキッチンにあったのって『米油』って書いてあったよ。あ、それとごま油! お母さんが豚肉にはごま油がいいのよって言ってた」


「市場に大豆や米ってあったっけ? それと……ごま?」


「あっても作り方なんて知らないぜ?」


「油もいいけど、醤油欲しくね?」



 うおおお! 醤油欲しい。当たり前に手に入る日本にいた時は意識してなかった。

 でも、塩味のおかずを食べていると、やっぱりお醤油が欲しくなる。



「日本人なら醤油だよね」

「醤油欲しいな。焼いたササミにちょっと垂らす、いいなぁ」

「いやいや、醤油で焼いて、あの香ばしい醤油の焼けた香をプラスする!」


「醤油も輸入で手に入るらしいぞ?」


「マジか」


「つっても醤油というより魚醤だと思うけどな」


「魚醤って?」


「醤油とは違うけど、まぁ、調味料の中では醤油似た位置付けか?」


「輸入品かぁ。高いのかな。でも手に入れたいな、油も魚醤も!」


「おう、俺らギルドでバンバン稼ごうぜ! ってタガセンは何をしてるんだよ、魔物どんどん倒さないと期限までに魔石も貯まらないじゃないか」


「で、どこからの輸入なん?」


「ふふ、隣だそうだ」


「隣?……海側隣国のコスタル国か。なるほど、魚類から油を……。そして魚醤も!」


「何?何? コスタルって海側だっけ」


「座学で習っただろ。お隣の国、コスタル国。主に漁業で栄えている国」


「魚あー! 魚、食いてえな」


「いいな、脂ののった鯖」


「脂ののった秋刀魚、食いたいー」


「直接買い付けに行きたいなぁ。コスタル国……遠いのかな」


「コスタル行きたい人ー!」


「はーい」

「俺も俺も」


「待て、そっちの国も魔物被害が凄いらしいぞ。今は他所よりまずはこの国じゃん」


「そっかぁ、だよなー。他所を助けに行ってる場合じゃないよな」


「あ、でも魚醤は輸入してもらえないかな。ひと瓶でいいから」




 僕らはその後も魔物討伐へは行けなかった。

 と言うのも、冒険者ギルドに持ち込まれた魔物が、肉ギルドへと流れた。

 それは魔イタチではなく他の魔物だったのだ。


 それで僕らD班の鑑定スキルと、太郎君と僕の解体スキルで毒取り除きをして見せたりと、僕らはギルドでの作業が続いた。ABC班も僕らと同行していた。イチクミは『全員行動』だから。



 僕らが持っていた魔イタチの肉はとうとう無くなってしまった。獲りに行きたいです。

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