29話 その頃のD班
C班が楽しそうすぎる。
踊ったり飛んだり跳ねたり走ったり。めちゃくちゃ楽しそうなんだけど。
どうしたんだろう? ちょっと心配になった。
日向君も気になったみたいで聞きに行った。
「スキル検証中だそうだ」
そうなんだ。
C班のスキルはなんか難しそうなのがたくさんだったんだけど、使いこなしているの、凄いな。
ふと漆原さんを見ると、漆原さんは複雑な顔していた。
もしかして、C班に居たかったのかな。
うちの班は今のところ、地面に這いつくばって鑑定しながら石拾いくらいしかやる事がない。
地味だ。
日向君は草を高速鑑定しながら石を拾っている。楽しそうと言えなくもない。ごめん……言えない。ただの作業人にしか見えない。 女子のとうみょうさんと鈴山田さんもしゃがんで鑑定している。
そうだ! 昨日の夜にやないさんから『とうみょう』さんの漢字を教えてもらった。
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「骨董品のとう、だよ」
「え、僕、こっとう品の漢字がかけないんだけど……。品はわかるけど」
「ええー。じゃあ、うんとね、草冠わかる?」
「うん」
「草冠に重たいって漢字。それでとうって読む。それと明るいで董明さん」
「なるほど、草が重くて明るい」
「そう。覚えた?」
「ありがと。ついでにやないさんの漢字もわからないんだけど」
「ああ?」
やないさんがカツアゲ高校生みたいな顔になった。
「ええと、やなぎ? やなぎって木辺になんだっけ?」
「柳ではない。ええと、家の梁なんだけど」
「家の針?」
「絶対違うハリを想像してるな。屋根の梁……」
「やねいさん?」
「くわっ! 天井の……てか、父親にそう教わったけど、今時の家で梁が見えるうちって、普通にないよね。かなりお洒落な古民家とかならともかく」
「あの、屋根井さんでいい?」
「よくねえわ! 誰か、紙とペン貸してー」
やないさんが書いてくれたけど、初めて見る漢字だ。
「梁井、これ、ポチャ次郎には説明ムズイわ」
天才日向君でも説明出来ないとは、やないさん、大学で習う漢字かな。
「ふぅ、もうさ、ひらがなでいいや」
「ポチャ次郎、日向はわかるか?」
「うん。前に聞いた。日に向かうで日向。意表を突きすぎじゃない? 普通はひむかい君って呼んじゃうよね」
「いや、おめえだけだ。因みに、鈴山田はわかるか?」
「うん。それはわかる。鈴木さんと山田さんの合体。あれかな、鈴山田さんのご先祖様は、鈴木にしようとして途中で気が変わって山田にしたのかな」
「さあな、どうだろな」
「ポチャ次郎、俺の名前は書けるよな?」
「え、うん。ポチャ太郎君」
「ちげー! そっちじゃねえよ。善哉、善哉のほう!」
「あー、えっ? ぜんざいって漢字あったんだ? お汁粉の上級バージョン」
「いや、まぁ、汁粉でもあるけど」
「太郎、ポチャ次郎にはまだ無理だ」
「てか、お前、草凪って自分の名前は書けるんだろうな」
「…………」
「……」
「……」
「もう、寝ない?明日も早いよ」
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そうだ、そこで話は終わったんだ。
そう言えば漆原さんの漢字は書ける。小5の時に漆にかぶれて、なんか悔しくて漢字を覚えたっけ。さんずいに大きい傘の下に水。だったよね?
漆原さんの方を見ながら地面に漢字を書いた。
「ポチャ次郎、それ足りない。漆原の漆は、大の字じゃなくて、そこは木だ」
え、僕、ずっと間違えて覚えていた!
「ごめん……」
「漆原、付与の練習、俺たちに体力回復かけてくれ」
「……私、付与のやり方知らない」
みんなはC班の方を見てから、漆原さんをもう一度見た。
漆原さんは飛んだり踊ったり走ったりしたくないのかも。
「漆原さんは漆原さんのやり方でいいと思うよ? 踊ったり飛んだりは、その、それが好きな人とか得意な人はそうすればいいと俺思うし。漆原さんは自分で好きなポーズを決めればいいと思う」
漆原さんは一瞬、変な顔をした。僕ごときが偉そうに言ったから怒ったかな。でも、腕を小さく肘から上げて人差し指で僕を指した。
「リジェネ……、強化、解呪……あと、なんだっけ。跳躍」
ボソボソ小声だったけど僕になんかたくさんかけてくれた!
跳躍? C班が飛んでたやつかな? ちょっとジャンプしてみた。
「ぎゃああああ!」
みんなの頭より高くまで飛び上がってしまった!
身体測定の垂直飛びは最高記録が8センチだったのに! これ、2メートルはいってる! やばい、今、身体測定やってほしい!
飛んだけど着地に失敗。地面を転がった。
「いたた……」
「あ、ごめん。大丈夫?」
漆原さんは悪くないのに謝ってくれた。
「ええと、回復! 怪我回復!」
漆原さんが僕の腕を指差しながら呪文を唱えた。あ、僕の肘から血が出ていた。擦りむいてたのか。でも傷が無い! 肘をさすってみたけど痛みも無かった。
「回復!」
「怪我回復!」
「怪我回復!」
「うわあああ!」
凄い勢いでC班が僕のとこに駆け込んで来て、皆が僕を指差して唱えた!
「リアル怪我人! どうだ?」
「ポチャ次郎、痛いとこないか?」
「もう治っちゃった?」
「ちょっと服を脱いでみろ」
「や、やめてぇ」




