不死属との戦い
けれど、助けるなら一刻の猶予もない。
わたしは決断した。
「大丈夫。わたしたちは最強だから。でも……お姉ちゃん。約束して。危なくなったらすぐ逃げてね?」
「ええ」
ソフィアお姉ちゃんは、深刻な表情でうなずいた。万一、お姉ちゃんやセレナに危害が加わるような状況になれば、わたしが身を盾にして脱出路を切り開く。
わたしはセレナを振り返った。
「セレナ。悪いけど、付き合ってくれる?」
「仲間じゃないですか。水臭いことを言わないでくださいよ」
セレナはにっこりと笑う。
やるしかない。
女性冒険者がまた一人倒れ伏す。
それと同時にわたしは敵へと踏み込んだ。
お姉ちゃんが背後で杖をくるりと回す。
「汝に加護を! ブレッシング!」
お姉ちゃんの支援魔法の加護。
これがあれば本当に最強になれる気がする。
女性冒険者たちは突然の乱入者に驚いたらしい。一番若いポニーテールの少女冒険者が、こちらを振り向く。
わたしは彼女たちに声をかけ、励ます。
「そのまま防御に徹していて! こいつらはわたしが……倒すから!」
彼女たちはうなずくと、円陣で防御体勢に入る。
消耗しきった彼女たちは反撃に転じられない。せいぜい、何体かのアンデッドの注意を引き付けていてくればいい。
わたしは魔法剣で、アンデッドの一体を斬り捨てた。アンデッドとはいえ、胴を斬れば活動を停止する。書物の知識通りなら。
幸い、斬ったアンデッドが復活する様子はなかった。
アンデッドの群れがこちらに注意を向ける。
わたしはそのまま魔法剣を振りかざす。
「灼き尽くせ! ファイア・ストーム!」
炎の奔流がアンデッドを包んだ。暗殺者にしては、豪快すぎるこの技も、今は頼もしい。
一気にアンデッドの何体かを焼き払う。
あと少しだ。だけど、そこでわたしの行動に隙ができる。
アンデッドの一体がわたしに襲いかかった。
わたしはとっさに防御態勢を取るけれど、間に合わない!
そのとき、短剣がそのアンデッドを斬り裂いた。
「リディア先輩がソフィア様を守るのが役目なら……私はリディア先輩を守るのが役目ですからね!」
セレナが短剣でアンデッドの攻撃を華麗に捌く。
「ありがとう、セレナ」
「お礼を言うのはまだ早いですよ」
わたしたちは背中合わせでアンデッドを迎撃する。
残りは三体!
わたしの魔法剣がアンデッドの一体の頭部を捉える。同時にセレナの短剣が別のアンデッドの核をえぐった。
最後の一体。おそらくアンデッドの頭目は、かなり手強そうだった。
でも、わたしやセレナが倒す必要はなかった。
お姉ちゃんが杖に最大限の魔力をこめて、魔法を発動していた。
「闇を祓え。ホーリー・ブレッド!」
天から光の束が降り注ぎ、アンデッドの頭目を突き刺す。
その神々しさに、わたしは見とれてしまう。これが……お姉ちゃんの、本物の聖女の力なんだ。
あまりにも強大な魔法の前に、アンデッドは一瞬で跡形もなく、消え去った。
つまり……。
「勝った……」
わたしはほっとして、がくっとその場に膝をつく。
危なかった。今回ばかりはかなりの危険を犯してしまった。
もしわたしがファイア・ストームを放った後、アンデッドの一撃を受けていたら、死んでいたと思う。
そうなれば、回避型のセレナも一人ではアンデッドを殲滅できない。誰もお姉ちゃんを守れず、全滅していたかもしれない。
見ず知らずの他人の人助け。そんなことに、あまりにも大きな危険を冒すなんて贅沢は、昔のわたしには許されていなかった。
暗殺者のわたしは人を殺すことが使命だったのだから。
でも、今は違う。お姉ちゃんを、みんなを守ること。それがわたしが自分で望んだ答えだからだ。
「リディア。ありがとう」
お姉ちゃんはわたしの髪を軽く撫でる。その心地よさに、わたしは「もっとして」とせがみたくなる。
けれど、お姉ちゃんはすぐに、傷ついた冒険者たちのもとへと向かった。
二人、重傷を負っている。とはいえ、お姉ちゃんの治癒魔法があれば、命は助かるはずだ。
わたしはお姉ちゃんが冒険者たちを助けている姿を見て、そして、彼女たちから泣いて感謝されているのを見て、思う。
お姉ちゃんには、公爵家や王子殿下なんか必要ないんだ。
本物の聖女は、いつでも、どこでも、他人から必要とされる。
人殺し。公爵家の暗部。誰かを殺すことしかできなかった、わたしとは違う。
でも、今、この瞬間はわたしはお姉ちゃんに必要とされている。
たとえいつか、お姉ちゃんがわたし以外の大事な人を見つけたとしても。
面白い、続きが気になる、ヒロインが可愛い!と思っていただけましたら
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