Ⅻ 悪役
セレナを殺そうとする三人の男を前に、わたしは戦う覚悟を決めた。
わたしは予告なしに一歩踏み込んで、男の一人に斬りかかる。
男は避けようとしたが、わたしの魔法剣の餌食になる。先手必勝!
残りの二人の男が顔色を変える。
「貴様……! こいつら全員殺してやる!」
男の一人が、魔法剣を振り下ろした後のわたしに襲いかかる。
わたしは一瞬だけ焦った。避けれないかもしれない……!
でも、セレナが短剣でその攻撃を防いでくれた。
「セレナ……!」
「私なんかのために……戦ってくれてありがとうございます」
「セレナを仲間にしちゃったもの」
わたしは微笑むと、セレナも嬉しそうにうなずいた。
セレナの短剣が男の喉元をえぐる。そして、最後の一人の男に、わたしは襲いかかった。
男の剣が、わたしの剣を弾き返す。仲間二人を殺されたのに、男は冷静だった。
最後の男はかなりの手練のようだった。わたしに倒せるだろうか?
でも、やるしかない。
「ブレッシング!」
お姉ちゃんが支援魔法を唱え、わたしたちを強化してくれる。
わたしはもう一度、男に斬りかかった。
男は冷めた目でわたしたちを見る。
「ああ、そうか。君も俺と同じ人殺しか」
「……違うっ! わたしは誰も殺したくなんてなかった!」
「言い訳だな。自分たちの幸せのために、俺たちを殺そうとしている」
「それはあなたたちが、セレナを殺そうとするから……!」
「俺たちも悪だが、君たちも等しく悪だ。わかっているのか?」
「たとえそうだとしても……わたしは悪役になってでも、お姉ちゃんたちを幸せにするんだから!」
わたしは魔法剣の角度をわざとずらし、男の右の胴の下へと入れようとした。男は難なくそれをかわしたが、わずかに隙ができる。
「ファイアボール!」
そこにわたしは炎魔法を叩き込んだ。男は悲鳴も上げずに倒れ、わたしは魔法剣でその胸に止めを刺した。
……終わった。
これで殺し屋の男たちは倒した。正当防衛……だと思う。あのままならセレナは殺され、わたしたちの身の安全の保障もなかった。
わたしは、自分が正義だとは思わない。わたしもお姉ちゃんも、他の人達からすれば、悪人なのかもしれない。
それでも、わたしたちは自分の幸せを求めている。それが悪いことでも、わたしは戦い続けると思う。
お姉ちゃんを、わたしの大事なものを守るために。
セレナはほっとした表情になり、そして、青い瞳に涙を浮かべた。
「あ、ありがとうございました……」
「ううん。セレナを仲間にしたのはわたしたちだもの」
「あの……私、このままだとまたご迷惑をかけてしまうかもしれません。他にも追手が……」
いるかもしれない。でも、それはわたしたちも同じだ。
わたしはセレナの肩をぽんぽんと叩いた。
「大丈夫! セレナがわたしたちの力になってくれるなら、わたしたちもセレナの力になるから」
「こ、これからも……わたしはリディア先輩たちと一緒にいていいんですか?」
わたしとソフィアお姉ちゃんは顔を見合わせた。そして、わたしもお姉ちゃんも微笑んで、うなずいた。
「もちろん!」
リディアはぱっと顔を輝かせた。
「やっぱり……リディア先輩のこと大好きです!」
「わ、わっ……抱きつこうとしないで!」
そんなわたしたちを見て、お姉ちゃんが頬を膨らませる。
「仲間としては認めるけど、リディアをとっていっちゃダメなんだからね?」
セレナはくすっと笑った。
そして、言う。
「私、ソフィア様のことも大好きです!」
「え? ええ!?」
ソフィアお姉ちゃんが、顔を赤くした。でも、満更でもなさそうな表情だったり……。
やっぱり、セレナは警戒しておかないと。
お姉ちゃんをとられちゃうかもしれないから。
<あとがき>
これにて第二章完結! 次はいよいよ聖女アイリス登場です……!
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