Ⅺ 決意
目の前の男たちは、セレナが暗殺者であることを知っている。
わたしは心臓がどくんと跳ねるのを感じた。
このままだと、危険だ。わたしとソフィアお姉ちゃんの正体もバレるかも……。
セレナも顔を青くしている。
男たちはいったい何者なんだろう?
あらためて、わたしは男たちを観察する。
人数は三人。三〇代前半ぐらいかな。全員腰から剣を下げていて、黒い外套を着ていた。
身なりは冒険者風だけど、目つきが鋭い。わたしはこういう目をする人間をよく知っている。
暗殺者だ。
わたしはおそるおそる問いかけた。
「あなたたちは誰ですか?」
「君たちはセレナの冒険者仲間かな。大人しくしていれば、君たちの命までは取らない」
どうやら、わたしたちの正体は知らないみたいだ。ほっとする。
逆に男たちの狙いはセレナにあるみたいだ。
「つまり、セレナのことを殺すということですか?」
「そのとおり」
「何の恨みがあってそんなことを――」
わたしは言いかけて、口を閉じた。わたしたちは暗殺者で多くの人を殺してきた。
わたしはお姉ちゃんの護衛のついでの暗殺が多かったけど、セレナはほとんど暗殺専門で、殺した人間の数はかなりになると思う。
それだけ恨まれていてもおかしくない。正体を隠しているとはいっても、誰が殺したか、どこかから漏れてもおかしくない。
今までは公爵家の権力で覆い隠していたけれど、今は公爵家も落ち目だから……。
暗殺された人の家族が仕返しに来たとか……。
男の一人がにやりと笑った。
「俺たち自身はそのセレナという女の子に恨みはないさ」
「え?」
「金をたんまりと積まれて雇われてね。そいつを殺せば金がもらえる」
男の一人が下卑た笑いを浮かべる。わたしは怒りでかっと自分の顔が熱くなるのを感じた。
この男たちは金のためにセレナを殺そうとしている。
わたしはお姉ちゃんを守るために、セレナを殺すべきかもしれないと考えた。セレナはわたしたちの正体を知っているし、今も危険に巻き込まれている。
でも、わたしにはできなかった。セレナは昔も今も、わたしの仲間だったから。
「り、リディア先輩……」
セレナが震えながら、わたしの服の袖をつまむ。セレナは青い瞳でわたしを見上げていた。
守って欲しいと言っていたのは、こういうことだったんだ。セレナはたぶん任務でここに来たわけじゃない。追われて逃げてきたんだ。
そこでわたしたちに出会った。それはセレナにとって救いに見えたかもしれない。
どんなに絶望的な状況でも、わたしにはお姉ちゃんがいた。セレナは一人ぼっちだったんだ。きっと、とてもつらかったと思う。
わたしは……どうするべきだろう? きっとセレナ一人ではこの状況を切り抜けることはできない。
わたしたち三人でなら、男たちを倒すことができるかもしれない。でも、絶対に勝てるとは限らない。セレナを守ろうとすれば、お姉ちゃんが危険にさらされる。
わたしは迷った。どうすれば……。
「大丈夫。リディアの望む通りにしていいよ」
わたしが驚いて振り返ると、お姉ちゃんが優しく微笑んでいた。
「いいの?」
「もちろん。私は優しいリディアが好きだもの。私たちは最強なんでしょう?」
二人でなら、セレナだってきっと救えるはずだ。
わたしはお姉ちゃんにうなずいた。わたしはお姉ちゃんだけじゃなくて、セレナのことも守ると約束したんだ!
わたしは、魔法剣を抜き高く掲げた。






