信一 ♠ まだまだいます
動画を見終えると、ユッカがつぶやくように声をもらした――『強い……』
俺も最初に見た時には、その走りに鳥肌が立つほどだった。
北海道に強い2歳牝馬がいるらしいという話を聞いて、リアルタイムで見ていたのだが、まさに衝撃だった。
グリーングリンは完全にいったんは抜け出されていた。そこから差し返すのは並大抵のことじゃない。しかも、さらに突き放している。
その突き放された相手・ビューンフライも強い馬だ。先日、川崎競馬場で行われた全日本2歳優駿JpnIというJRA馬も含めた2歳ダートチャンピオンを決めるレースで2着になっている馬だ。
その比較からもグリーングリンが強いことは間違いない。
今まで勝ち味に遅かったのが開眼したとなると恐ろしいほどだ。
グリーングリンはこのレースの後、すぐに北海道から茨城へと移動しているらしい。
その場所が、地方競馬におけるダービー養成所とまで呼ばれているあのバラキングステーブル。
南関東競馬の認定外厩でもあるここは小林同様にトレーニング施設と厩舎がある。
そこへは行ったことはないが、調べたり話に聞いたりしたところによると、小林と違って他の競馬場からも休養やトレーニングのため馬が預けられ、共に調教されているらしい。
施設が充実していることはもちろんのこと、強い馬たちが集まり、厩舎の垣根を越えて一緒に調教されているので、ともに磨き合う環境になっているのだろう。
さらにスタッフが海外からも招集され、調教の質も高められているとのことだ。
グリーングリンはそこでさらに力をつけるべく調教されている。
俺はユッカにそのことを説明しつつ、次なるライバル馬へと話を向けた。
アイウォンチュー
浦和競馬の古久保厩舎に所属している馬だ。南関東競馬のトップトレーナーで獲得賞金は地方競馬において全国1位である。
戦績は7戦3勝
成績からはそれほどインパクトはないが、レースの展開を握るのはまさしくこの馬であろう。
彼女の異名は、折り合い知らずのアイウォンチュー。
とにかく飛ばしに飛ばしまくる。相手が強かろうが弱かろうがハイラップで後続をちぎって逃げていく。そして、勝つ時は鮮やかにちぎって勝ち、抜かれてしまえば惨敗という馬だ。
だが前走はちょっと違った。そのレースというのがあの全日本2歳優駿JpnIだった。
次話は全日本2歳優駿JpnIになります。
次なるライバル馬は、なんだか口ずさみたくなる『折り合い知らずのアイウォンチュー』です。




