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最終話 封鎖完了

世界は再生へと動き出した。


あれから更に数日が経ち、

奴らはただの屍となった。


そして僕は待っていた。

再び連中と出会う、この瞬間を。


遂に従業員用通用口の頑丈な扉が開き、中から10人程の男達が出て来たのだ。



アスリートかと思う程の鍛え上げられたその体に、角材を握りしめる僕の手は震えていた。


実行部隊だと思われるその男達の中には、あのコンビニで略奪をしていた3人組もいて、

何か因縁のようなものを感じつつも、平静を装いながら段々とその距離を縮めて行く。



すれ違う瞬間、僕は全力で角材を振り下ろす。



狙いはリーダーと思われる細身の男。

その姿は父の会社の防犯カメラで見た、父を殺したあの略奪者集団のリーダーに間違い無かった。


しかしその男は、絶対に避けられないであろうと思った僕の一振りを当たり前のようにかわし、軽口を叩きながら僕をその集団の中心へと蹴り飛ばす。




倒せなくてもいい。


半殺しにされてもいい。


一度でも良いから、

こいつらに一撃を食らわせてやる!


父の受けた痛みの100分の1でも良いから、

こいつらに分らせてやる!



数え切れないほど振り下ろされた角材は一度も男達に当たる事なく、僕は男達の拳を浴び続けた。


歯は欠け、鼻は折れ、片目はもう見えない。

片腕も折れ、角材を握れなくなってしまった僕は、

とっさに足元に落ちていた、ただ長く広く枝を伸ばしただけの木の棒を拾い、闇雲に振り回した。


男達は完全に油断していた。

遂に届いたのだ。

やっと届いたその先端は、猫の爪ほどのわずかな痛みであったが、確かに男達に痛みを与えていた。


だがその直後、僕はその場に倒れ込んだ。

逆上したリーダーの手には、さっきまで僕が持っていた、僕の血が滴る角材が握られている。


殺されるかもしれなかった。


しかしその時、僕を救う様に奴らのスマホが鳴った。

電話に出た男達は慌てふためき、急いでその頑丈な建物の中に戻って行く。





あの連中の略奪行為。


その行動はあのコンビニ、父の会社、その他数多くの防犯カメラに写っていた。


その映像はあの連中の、救世主としてのリモート会見の直前である今の時間に合わせ、

妹達によって一斉に公開されたのだ。


今頃あの連中は、その思わぬ出来事に慌てふためき、

その威信の全てをかけて映像を削除しているに違い無い。

もしかしたら、会社の車や社員証までも略奪者に奪われた事にして、全てをやり過ごしてしまうかもしれない。


いずれにしてもあの実行部隊は、

完全にその対応が終わるまでは、

あの建物から姿を表すことは無いだろう。


しかし、どんなに連中がその力を使おうとも、

必ずその映像はみんなの記憶に残り続ける。

その車を、社員証を見るたびに思い出し、

その記憶の片隅で、いつまでもくすぶり続けるのだ。




全て終わった。




僕は這う様にして自分の車に戻り、静かに車を発進させた。

まるで酔っ払いの様にフラフラとしながら進む車は、

建物の扉にぶつかり止まり、

もう動く気力も無い僕は、

車のシートに座ったまま、

静かに目を閉じた。













実は僕は、

妹にも相談せず、

ある研究をしていた。


それは、


"奴らの命を延ばす研究"




分かったのだ。

奴らの細胞は低温度で冬眠状態になり、その寿命を延ばすのだと。


そして見つけたのだ。

あのコンビニのバックヤードの冷蔵室で、冬眠状態にある最後の1人を。




あの長く、広く枝を伸ばした木の棒は、偶然あそこにあった物では無い。

奴らの唾や体液をたっぷり塗って、僕があそこに置いた物だ。


最初から持っていたら、不審がられて当たらなかったであろうその切っ先。

その切っ先はあの男達の肌を切り裂き、その体内に確実に奴らの細胞を送り込んだ。



妹達が何をしようとも、

こいつらは絶対にその力を失う事は無い。

こいつらは僕らから全てを奪い続け、

こいつらが僕らの未来を決めて行く。

きっとそれはとても効率的で、

この世界を素晴らしいスピードで、

変えていってくれるのだろう。


でもそんな未来、僕はお断りだ。


どんなに遠回りしようとも、

僕らの未来は僕らが決める。

何も思わず人を殺せる様な奴らに

世界を変えて欲しくなど無い。







封鎖は完了した。






しっかりとバリケードの施されたこの建物には、

ここ以外の出入り口など一つも無い。

従業員通用口の扉を必死で開けようとする音が何回も聞こえる。

30分程前まで僕らを傷付け続けていたあの10人は、今頃社内で暴れ回り、その鍛え上げられた体で、次々とその仲間を増やし続けているだろう。






僕はこれから家に帰って、またいつもの自分の部屋に篭ろうと思う。


この手を汚してしまった僕には、

みんなに合わせる顔など無いのだから。


でも、もう僕は大丈夫だ。

僕を愛してくれている家族がいる。




だから僕はこの世界がいつまでも終わらない様にと、

いつまでも想いながら生きて行くのだ。






最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。

最初はもっと陰鬱としたものを考えていたのですが、父が出てきたあたりから主人公が暴走を始め、元の構想は影も形も無くなってしまいました。

でも、愛せる主人公になったなぁと思えて喜ばしい限りです。

厚かましい様ですが、感想等ありましたら是非お願いします。

悪い所も書いて頂けると、次作にも活かせると思いますので遠慮無く書いて下さい。


アクセス数、ブックマーク、評価含む全て。

とても嬉しいものでした。

本当にありがとうございました。

また宜しくお願いします。


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― 新着の感想 ―
[良い点] タイトルの回収がとても良かったと思いました、疑問などもすぐに解決するので非常に読みやすかったです。
[良い点] 完結お疲れさまでした。 とても納得のいく最終話を読めてとても光栄です! 主人公の行動力に感情移入し、妹の活動に感動しました。 あなたの文章力に引き込まれ、最終話までサクサクと読ませていただ…
[良い点] 面白かった!
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