69.言葉って良く聞かないと思い込みで間違った捉え方をするよね?
一応、私は両手を上げた。
やっぱり、銃口を向けられたら、こうなるよね?
「鋭いですね。どうして、私の脳内チップが、私の胸ポケットに入っているって分かったんですか?」
「俺の胸部はレーダーになっていてな。脳内チップから出される信号をキャッチできるんだ」
「そうでしたか」
「ラヤ。お前は、俺の好みの容姿だったんでな。害を成す者でなければ、俺の側室に迎えようと思っていたが、残念だ」
ステガは、そう言うと指に力を入れて、銃の引き金を引こうとした。
でも、一瞬、私の方が早かった。
「死ねぇっ!」
一撃必殺の言葉。
私が、そう唱える(?)と、ステガの首が切断されて宙を舞った。
彼の頭部は生身だからね。
アキみたいに、
『ケケケケケケ』
って展開は無いだろう。
でも、念のため、
「出ろ!」
私は大量の食用油を物質創製魔法で作り出して、ステガの身体……首以外の部分ね……にかけてやった。
さらに、
「電撃魔法!」
私はステガの身体に電撃を放った。
と言っても痴漢撃退レベルの電撃だからね。
電圧自体は、そんなに大したものではない。
でも、この電撃魔法を受けて、彼の身体の金属部分から、一瞬だけど『パチッ』と音を立てて小さな火花が出た。
そして、私の思惑通り、そこから食用油に引火して、彼の身体は一瞬にして火達磨になった。
この身体が、首を失った後に勝手に動き出すようにプログラムされているとかがあるとイヤだったんでね。
さっさと始末したかったんだ。
さらに私は、
「物質転送!」
火達磨になった機械の身体を建物の外に転移してやった。
多分、ここは地上から五百メートルくらいのところだと思うけど、ここからヤツの身体は自由落下する。
地面にぶつかって粉々に四散することだけは間違いないだろう。
でも、どうして首ちょんぱ魔法が発動できたかって?
ヒントは、ラフレシア様の言葉。
『なら今一度、その時の内容をキチンと確認すべきだな』
って言われて、最初は、意味が分からなかったけど、チャットボット機能に再確認したら、ラフレシア様が私に伝えたかったことが分かったんだ。
私がシルリア世界に転移したばかりの時に、私がチャットボット機能に質問した内容を、こっちの世界に来てから再質問したんだよね。
そうしたら、
『Q:今の私の魔法装備は?』
『A:基本的にバージェス世界から転移して来る直前と同様』
『Q:相違点は?』
『A:結界魔法を追加した点と、最凶魔法がシルリア世界においては人間に対して発動しない点』
との回答。
つまり、シルリア世界以外の人間には有効ってことだ。
私は、全ての人間に効かないって思い込んでいたけど、それは私が勝手に脳内に、そう刷り込んでいただけ。
でも、事実は違っていたんだ。
これは、ラフレシア様に感謝だよ!
本来なら、ここですぐにラフレシア様にお祈りを捧げたいところだけど、今回は、やるべき作業を優先させていただく。
ステガの身体を建物の外に落としたから、そのうちステガの死がバレるとは思うけど、でも、まだ多少の猶予はあるはず……と思う……。
今、ステガの首は、完全に無機物のように転がっているだけ。
私は、
「出ろ!」
ゴミ袋を物質創製魔法で出すと、彼の首を拾い上げ、そのゴミ袋の中に入れて、袋ごとアイテムボックスの中に収納した。
それから、
「出ろ!」
私は消火器を出すと、ステガの身体から燃え移ったところを急いで消火した。
火の気を感知されて誰かが来ると面倒だからね。
これで、この部屋の件は、一先ずOKだろう。
私は、部屋を出ると、さっきの奴隷兵……彼のことは奴隷兵Aと呼ぼう……彼に言われた通り、一つ下の階に降りた。
その階のフロアには、既に百人近い奴隷兵達が屯していた。
約束通り、彼が招集してくれていたんだ。
それにしても仕事が速いね!
じゃあ、早速、私の方も作業に取り掛かるよ!
「みなさん。済みませんが、一列に並んでください。これから順番に金属チップを取り出しますので、お願いします」
こんな小娘のお願いだけど、奴隷兵達はスンナリ受け入れてくれた。
多分だけど、奴隷兵Aが予め彼等に言うことを聞くように言っておいてくれたんだろう。
私は端から順に、
「物質転送!」
有言実行で、彼等の脳内から金属チップを取り出していった。
でも、彼等は見た目には何ら変わらないからね。金属チップが取り出されたことに実感がない様子だった。
すると、奴隷兵Aが、
「くたばれステガ!」
と声に出してくれた。
周りの奴隷兵達は、奴隷兵Aの全身に激痛が走るんじゃないかと心配していたようだけど、奴隷兵Aは、なんともない様子。
これを見て、他の奴隷兵達も脳内チップから解放されたことを理解してくれた。
ここで私は、アイテムボックスからステガの首を取り出して、近くのテーブルの上に置いた。
まさに晒し首だね。
「みなさん。ステガは私が打ち取りました。これがステガの首です」
「!!!」
さすがに、これは余りにも衝撃的過ぎたようだ。
一瞬、奴隷兵達は言葉を失ったよ。
でも、脳内で状況整理ができると、
「やったぜ!」
「くたばりやがった!」
「これで自由だ!」
奴隷兵達は歓喜の声を上げた。
さらに、一人の奴隷兵が剣を抜くと、
「こうしてやらねえと気が済まねえ!」
ステガの首を脳天から真っ二つに切り裂いた。
これを見て、他の連中も、
「俺も!」
「俺だって!」
次々とステガの頭部を細かく切り刻んで行ったよ。
相当恨まれているね、これは。
そんな中、奴隷兵の一人が、
「これでステガは終わりじゃない。地下のクローン工場に急がないと!」
と私に言ってきた。
「どう言うことです?」
「俺は、この星の奴隷兼研究者だけど、この城の地下ではステガのクローンが作り出されているんだ。ステガの死後、三時間以内にクローンの一体が目覚めて活動を始めることになっている」
「分かりました。全てのクローンを葬ります。では、そこに案内出来ますか?」
「ああ」
でも、その前に、その奴隷兼研究者のステータス画面を覗き見した。
万が一、この人がステガの信者で、私を罠に嵌めようとしていたらマズイもんね。
もっとも、見た限り全然問題無さそうだったけど。
だって、デカデカと、
『自重していたけど反ステガ』
って書いてあったもん。
「では、私はクローン工場に向かいます。他の方々は城内にいる王族の者達や、今、城内に来ている貴族達を捕まえて、この城を占拠してください。それから、奴隷達にとって都合の悪い装置もあれば、その破壊もお願いします」
「了解!」
「それから、チップを外されていない他の奴隷達は、殺さずに捕らえてください。彼等からも私がチップを抜き取ります!」
「おおっ!」
有難いことに、ここにいる奴隷達は、私の指示に従って動き出してくれた。
一方の私は、言葉通り研究者に連れられて地下工場へと急いだ。
一応、奴隷兵Aにも付き添ってもらってね。
少し時間がかかったけど、無事に地下工場に辿り着いた。
そこには、高さ二メートル以上の大きなカプセルが沢山立ち並んでいて、その中にはステガのクローンが一体ずつ入っていた。
カプセルの中は培養液で満たされていて、その中でステガのクローン達は立ったまま眠っているような感じだった。
彼等には、何本ものチューブが身体のアチコチに接続されていた。
そのチューブから酸素や栄養素が送り込まれているっぽい。
クローンの一体が目を覚ました。
どうやら、コイツがオリジナルステガの後釜になるようだ。
でもね、そうはさせないよ!
「死ね!」
私が、そう唱えた直後、目を覚ましたクローンを皮切りに、全てのクローン達の首が次々と刎ねられていった。
さすがに、これを見て研究者も奴隷兵Aも顔が強張っていたよ。
さらに私は、
「出ろ!」
生活必需品と言うことで、金槌を三本出した。
これで行けるとイイなぁ。
そして、二人に一本ずつ渡すと、
「装置を破壊しましょう!」
「了解!」
三人で一斉にカプセルを割り始めた。
さらに、クローン工場内の他の装置も次々と叩き壊して行ったよ。
とにかく、クローン作製を完全に停止させなくちゃならないからね。
とか何とか言いながらも、たまには、こういった破壊も楽しいもんだけどね。
一先ず破壊活動完了!
そして、私達は上の階へと戻った。
すると、既にステガの正室や側室、子供達、さらには今日、城に訪れた貴族達まで全員お縄になっていた。
他にも脳内チップが除去されていない奴隷達が何十人も縄で縛られていたよ。
彼等は、まだ反ステガ行動を起こせないからね。
当然、クーデターを起こした奴隷達と戦わざるを得ない立場にある。
それで縛らざるを得なかったってことだ。
この奴隷達は、急いで解放してあげないと可哀そうだ。
なので、
「物質転送!」
彼等の脳内から、順番に金属チップを取り出してあげたよ。
「これらが、アナタ方の脳内を支配していた忌まわしきチップです。私の魔法で取り出しました。もう、脳内チップに怯える生活から解放されました」
「本当か?」
やっぱり、そう簡単には信じられないよね。
でも、先に脳内チップから解放されていた奴隷兵の一人が、
「解放されていなかったら、俺達は、こんなことできねえだろ!」
と言ってくれた。
既に、反ステガの行動をまともに起こしているわけだもんね。
これが脳内チップを恐れる心配の無いことの一番の証明だよ。
「それじゃ俺達は、本当に自由なのか?」
「そうです。でも、この星を完全に開放するためには、奴隷とされた人々全員から脳内チップを取り除かなければなりません。それから、貴族達も全員、捕らえる必要があるでしょう」
「たしかに」
「なので、先ず、奴隷全員の解放です」
私達は、取り敢えず、この場で縛られていた奴隷達の縄を順に解いていった。
もう、彼等は反ステガ軍とムリに戦う必要がなくなったわけだからね。
でも、奴隷って全部で五十億人もいるんだよね?
果たして、チップ取り出し完了まで何日かかるかな?
いや、何ヶ月?
何年?
これは大変な作業だよ。
すると、元奴隷兼研究者から、
「たしか、ステガの部屋に脳内チップを遠隔操作する装置があったはずだ。それを使って機能停止すれば問題ないはず」
と有難い言葉が。
「本当ですか?」
「ああ」
「では、急いでそこに」
「おお、ついてこい!」
私は、彼の案内でステガの部屋へと急いだ。
脳内チップの機能を停止できれば、無理に急いで取り出す必要は無いし、すぐに奴隷全員で貴族を捕える方に一丸となって動いて行ける。
それこそ、奴隷が奴隷じゃなくなったことを、まだ捕らえられていない貴族達に気付かれる前に。
多分、城内で捕らえられた王族貴族以外は、まだ現状を知らないはずだもんね!
「ここだよ」
研究者が指し示した部屋は、城の中央に位置していて窓が一つも無かった。
城の外には一切面していないけど、せめて廊下と部屋の間には窓があってもイイんじゃないかって思ったよ。
これだと、どう考えても日光が届かない。
まあ、その分、蛍光灯の光が天井から激しく降り注いでいたけどね。
研究者が、その部屋の中を漁り始めた。
私は、その装置がどんな形をしているのか分からないから、探しようが無いんだけどね。
十数分後、
「あった。これだ!」
ようやく、研究者が、脳内チップの遠隔操作機器と思われるモノを見つけた。
一応、私の方でもチェック。
ステータス画面を開き、チャットボット機能を立ち上げて、早速質問文を入力した。
『Q:これが脳内チップの遠隔操作装置で間違いない?』
『A:間違いない』
『Q:使い方は?』
『A:スイッチを押して言葉で指示すればよい』
なるほど。
と言うわけで、私は、
「その遠隔操作装置を貸してもらえますか?」
と研究者にお願いした。
「使い方、分かるのか?」
「はい、女神様に問い合わせました」
「はぁ?」
「大丈夫ですから」
研究者は、半信半疑な顔をしていたけど、私が魔法で脳内チップを奴隷達の頭の中から取り出したり、魔法で金槌を出したりしているのを見ているからね。
私なら何とかするかもしれないと思ってくれたんだろう。
一先ず、遠隔操作装置を私に渡してくれた。
私は、それを研究者から受け取ると、スイッチを押しながら、
「全ての脳内チップは、その機能を未来永劫停止せよ!」
と言ったんだけど、そうしたら研究者は、
『そんなんでイイの?』
とでも言いたげな顔で、私の方を見ていたよ。




