66.感動の再開?
本66話(第69部分)でラヤは一旦宇宙に旅立ちます。
その後、原始時代にも行ったります。
73話(第76部分)までシルリア世界(ラヤが本来いる世界)から離れます。実質、シルリア世界の話は74話(第77部分)からになります。
フユミが、目の前の八百屋の娘を見て、
「凄い美人。しかも、ムチャクチャエロい身体ね。あれなら、男に困る人生だけは絶対に無いでしょうね」
と言葉を漏らしたけど……。
真実を告げるのが怖いな。
でも、言うしかない。
「実は、彼女がアキさんです」
「えっ?」
「前世の記憶も持っています。それから、今まで言っておりませんでしたけど、アキさんは人間ではなく魔力で生きる人形です」
「えぇぇっ?」
「ただ、一般には人形であることは分かりません。実際、町の人達も人間と勘違いしているようですので、そのまま人間として暮らしています」
「だったら、人形として生まれた意味って?」
「以前の私を倒すため。それが理由です」
「どう言う意味?」
そりゃあ、ピンと来ないよね?
まさか、首ちょんぱ魔法への対抗手段だなんて。
「アキさんは、私に対抗する切り札として、予めこの世界に転生させられたんです。当時、私は、この世界のサタンに召喚されて、しかも誰でも簡単に殺せる首ちょんぱ魔法を与えられました。でも、アキさんは、首を刎ねても死ななかったんです。首を拾って自らの魔法でくっつけました。その後、ビビった私はアキさんの仲間の手で殺されたんです」
私が説明して、フユミは合点が行ったようだ。
たしかに生物でなければ、首を刎ねられても元に戻せるもんね。
「じゃあ、ラヤちゃんは亜紀と、まともに戦ったんだ」
「フユミさんには言い難いことだったので、今まで言えませんでしたけど……。じゃあ、声をかけに行きますよ」
「ちょっと待って。また、心の準備が」
「中身は見た目ほど若くないくせに、何を今更」
「その言い方、ちょっとヒドイ!」
「ほら、行きますよ!」
私は、フユミの手を引いてアキのところへと強引に突き進んだ。
できれば、私はアキの顔を見たくはなかったんだけどね。
だって、未だに、あの、
『ケケケケケケ!』
を完全には忘れられないから。
ただ、アキの方も私に気付いたっぽい。
急に警戒した表情に変わったよ。
やっぱりアキの中では、今でも私は破壊者ラヤなんだろう。
「アキさん」
「もしかして、ラヤ?」
「そうです」
「全然成長してなくない?」
「それは、お互い様です」
「ある筋から、別の異世界で聖女に変身したって聞いてたけど、この世界に何の用? もしかして、また破壊しに来たんじゃ?」
「違います。ちょっとリニフローラ様からの依頼があって、この宇宙の別の惑星に出張なんです」
「じゃあ、ワザワザ途中で寄ったってとこ?」
「そうです。あと、首ちょんぱはしませんから安心してください。それで、どうせならって思って挨拶と、それから会わせたい人がいて」
「会わせたい? もしかして、その隣の女性のこと?」
「ええ。じゃあ、フユミさん、挨拶して」
この時、フユミは妙に緊張していた風に見えた。
十年ぶりの娘との再会だもんね。
そりゃあ、色々話したいことはあると思うけど、いざとなると言葉が出てこないってヤツだよ、これ。
「ええと、アナタが亜紀ね?」
「はい。アナタは?」
「前世の名前は篠原芙由美」
「えっ?」
「アナタの前世の名前は篠原亜紀よね?」
「もしかして、お母さん?」
「ええ。それにしても、随分と綺麗になっちゃって。男に不自由してないんじゃない?」
「でも、一緒になったのは女性でね」
「えっ?」
「この娘。ヴァナディスって言うんだけど、彼女が私の嫁」
「あら、この娘も凄い美人。亜紀がお世話になってます」
なんだかんだ言いながら、フユミもアキと普通に話が出来ているじゃん。
まあ、最初の取っ掛かりさえ何とかなれば、後は問題無いってことだよね。
ただ、娘の相手が旦那じゃなくて嫁って言うのを、フユミは普通に受け入れているよ。
それはそれで凄いな。
実を言うと、私がこの地に来た理由は、アキの件だけじゃない。
もう一人、挨拶したい存在がいるんだ。
それで私は両手を合わせて祈りを捧げた。
すると、急に空が分厚い雲に覆われて、辺り一面が薄暗くなった。
そして、
「我を呼ぶものはお前か?」
と男性の声が聞こえて来たかと思うと、突然、空に十二枚の真っ黒な翼を持つ邪気に満ちた者……ラフレシア様が現れた。
「はい。お久し振りです」
「久し振りだが、女神側に寝返った裏切り者になど、俺には用は無い!」
「一応、一言、お礼を申し上げに来ました」
「礼だと?」
「今、私は異世界を転々としていますけど、地球にいた頃に比べて、今の方がずっと充実していますし楽しいです。この全てのきっかけをお与えくださったのは、誰でもないラフレシア様です。今でも、心より感謝しております」
「ふん。感謝などされる覚えはないぞ」
でも、あのまま地球に居続けていたら、私は精神崩壊していたと思う。
だから、ラフレシア様には本当に今でも感謝しているんだよ。
「ラフレシア様にお与えいただいた最凶魔法は、今でも私の最高の武器になっております。ただ、人には発動しないように制限されていますけど」
「ん? 誰がそう言った?」
「女神ロリダ様から頂いたチャットボット機能からの回答です」
「なるほど。なら今一度、その時の内容をキチンと確認すべきだな。それで、この世界には、ワザワザ俺に礼を言うために来たのか?」
「それもありますけど、実は、リニローラ様からの依頼でデボニアンの世界に行くことになりまして」
「デボニアン? あんなところに行くのか?」
「はい」
「俺は勧めんがな。あそこは、あの世界の堕天使マンドラゴラが支配する世界でな。さすがに俺の目から見てもヒドイ世界だ。やめるなら今のうちだぞ」
ええと……。
ラフレシア様は、言うなればブルバレン世界のサタンだよね?
その悪魔にヒドイって言われるのって、どんなレベル?
さすがに、
「そ……そうなんですか?」
私の声も少し震えたよ。
「一応、忠告はしたぞ。どうも、イヤなヤツが来る気配がするんでな。俺は、ここで退散させてもらう。無事を祈っているぞ!」
そう言うと、ラフレシア様は別の次元に転移したんだろう。
その場から完全に消えてしまった。
もはや気配すらなかった。
そして、その数秒後、まるでラフレシア様と入れ替わるかのように女神リニフローラ様が私達の目の前に姿を現した。
「ラヤ」
「お久し振りです」
「面倒をかけるけど、よろしくお願いね。あと、アキ」
「はい?」
「アナタに会うのは、これが初めてですね。ラフレシアが召還した者達を何人も排除してくれて、アナタにも礼を言います。ありがとう」
「いいえ、別に私なんか」
この時、アキは謙遜していたけど、実際に私もアキにヤラれたからね。
たしかに、アキは女神様が召還した最終兵器だと思うよ。
「では、ラヤ。この宇宙艇に乗りなさい」
リニフローラ様が、そう言いながら、私達から少し離れたところを指さした。
すると、そこに戦闘機のような物体が現れた。
さすが女神様。出せるモノが違う。
そして、私が、それに乗り込もうとした時だ。
何故か、フユミが私の後を付いて来た。
どうやら、フユミは自分もデボニアンの世界に行くと思っているらしい。
「フユミさん。デボニアンに行くのは私だけですけど」
「何で?」
「そもそも、フユミさんの同行許可が出ているのはブルバレン世界までです。デボニアン行きはロリダ様から許可されていません」
「ちょっと待って。まさか、一人で行く気?」
これを聞いてアキが、
「さっきのラフレシアの口調からすると、とんでもない世界なんでしょ? だったら、ミチルさんを連れて来るから、私とミチルさんも一緒に行くよ」
と言ってくれた。
かつては敵同士だったけど、一応、心配してくれているんだね。
でも、その申し入れは受け入れられないよ。
「アキさんには、この世界を守るって使命があるでしょ。それからミチルさんって、あのドラゴン級の魔力を持つ人ですよね?」
「ええ」
「彼にも、同じくこの世界を守る役目があるはずです。それに、この宇宙艇は一人乗りですから」
「えっ?」
「なので、私一人で行くってことで。それがリニフローラ様のご意志でもあるんじゃないかと?」
もし、同行OKなら複数人乗れる宇宙艇を出すはずだよね?
それを、敢えて一人用にするんだもん。もう、私一人で行って来いって言っているのと同義語だよ。
恐らくだけど、私一人で行くのにも意味がある気がする。
ただ、アキもフユミも納得できない様子だ。
「そんな危険なところに一人で行かせるなんて」
「さすがにラヤちゃん一人ってわけには」
すると、
「他の者はラヤの足手まといになります。なので、アキもフユミも、この地でラヤの帰還を待っていなさい」
とリニフローラ様の鶴の一声が。
それと同時に、その場に居た人達は、私以外全員が金縛りにあったようだ。
強引な手に出るな、リニフローラ様。
「では、行ってきます!」
「いってらっしゃい」
私に声をかけてくださったのはリニフローラ様ね。
他のみんなは声を出したくても出ないみたいだった。
私は、単身で宇宙艇に乗り込むと、起動スイッチを押した。
宇宙艇は、いきなり垂直に急上昇した。しかも、ジェットエンジンみたいな噴出が無い状態でだよ!
まるでUFOみたい。
さすが、人智を超えた宇宙艇だ!
そのまま、宇宙艇は一気に宇宙空間へと飛び出した。
これで二度目だな。宇宙に出るのって。
でも、宇宙の風景って地上から見るのとは全然違うんだよね。星々の輝きが、もの凄く綺麗だよ。
宇宙空間に出て間もなく、私の頭の中にリニフローラ様が直接語り掛けて来た。
姿は見えない。
声だけだ。
「ラヤの身体は、病原体や毒物など、害をなす異物を体外に瞬時に物質転送する能力が備わっています。故に病気にもならなければ毒物にも侵されません。しかし、その能力を今から停止します」
「えっ?」
「これから一旦、眠りにつき、目が覚めた後、二十四時間経ってから、その能力は復活します」
「それって、どんな意味があるのでしょうか?」
「今は言えません。それから、宇宙艇は自動操縦でデボニアンの世界に向けて移動します。特にラヤが操縦する必要はありませんから」
そう言われた直後、私は突然の睡魔に襲われた。
さすがに耐えきれない眠気だね、これは。
どうやら、薬を嗅がされたっぽい。
一応、居眠り運転はイケナイって思っていたんだけど……、でも、自動操縦だから別に問題ないか。
そして、そのまま私は、操縦室の中でグッスリと眠りこけてしまった。




