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59.カレー!

 家に入ると、早速、

「おやつくれ、おやつ!」

 フランが早速おねだりしてきた。


 そんな兄の姿を見てフルフラールが、

「済みません。こんな兄で」

 って言いながら、非常に申し訳なさそうな顔をしていたよ。

 うん、何となく分かるよ、その気持ち。



 でもね。フランは、この世界での私の友人第一号だし、それに男子がアホなのはイヤと言うほど分かっているから。

 一応、これでも元中二男子だもんね。

 なので、フランを無下に扱うつもりは無いよ。



 私は、

「出ろ!」

 テーブルの上に人数分のショートケーキを出した。


 ただ、私は、この世界の果物のことを全然知らないから、一先ずスポンジと生クリームだけにしちゃった。

 本当はイチゴショートにしようかと思ったんだけどさ。万が一、この世界にイチゴが無かったりすると、

『ナニこれ?』

 ってなりそうだからね。


 でも、ちょっと不安はあったけど、一先ず、二人共、

「これ、美味しいですね」

「うん。ウマい!」

 結構、喜んで食べてくれていたよ。



 それと、飲み物には何を出そうか一瞬迷ったんだけど、今回はホットミルクを出した。

 本当はコーヒーでも出そうかって思ったんだけど、もし、この世界にコーヒーが存在しなかったら二人共飲めないかも知れないからね。


 一方のミルクは、哺乳類が生きる世の中なら基本的にあるだろうし、一番無難な気がしたんだよ。


 まあ、コーヒーの有無とか、どんなフルーツがあるかとか、その辺は、追ってフユミとフルフラールに確認して行こう。



 おやつタイムを終えて、私達は二階に上がった。

 本当は、乙女の居住区域だからフランには来て欲しくなかったんだけど、一人だけ一階のリビングダイニングに放置するわけには行かなかったからね。

 まあ、仕方が無い。



 フルフラールには、ハルが使っていたのと同じ位置の部屋に入ってもらうことにした。

 と言っても、一応、備え付けのクロゼットと棚くらいは付いているけど、まだ、ここには一切の家具が置かれていない状態。

 寂しいお部屋のままだ。

 当然、住まわせるからには必要な家具くらいは入れないとって思う。


 なので、

「フルフラールさん。ベッドとか机、椅子を作りますけど、どんなのがイイですか?」

 って聞いたら、

「ラヤさんのを見せてもらえますか?」

 って聞き返された。


 するとフランが、

「俺もラヤちゃんの部屋、見てみたい!」

 って言い出したよ。


 さすがに、

「それはダメだから!」

 私も超絶拒否ったけどね。

 やっぱり男子には見られたくないからさ。

 元男子のくせに、コイツは何を言ってるんだって言われそうだけど、今は一応、乙女だからね。



 取り敢えず、フルフラールには私の部屋に入ってもらい、ベッドとか机、椅子を見てもらった。

 実を言うと、私も家具は、これくらいしか置いてないんだよ。


 二階の各部屋は、全部フルフラールに割り当てた部屋と同じで、クロゼットも棚も備え付けになっている。

 他に必要なのは、マジでベッドと机と椅子程度だろうって思っている。

 それ以外は、ムリに置く必要は無いよね?



 テレビが無いって?

 そもそも、この世界には放送局が無いから、テレビもラジオも機能しない。

 それ以前に電気が無いんだけどね。



 フルフラールからは、

「じゃあ、ラヤさんと同じので」

 との回答。


 なので、フルフラールの部屋に戻ると、

「三点セット、出ろ!」

 彼女の部屋に私のと同じ家具セットを出してあげた。


 これには、彼女も、

「家具も一瞬で出せるのね」

 って言いながら驚いていたけどね。



「そう言えば、フルフラールさんの荷物は?」

「容量は大したことは無いんですけど、一応、収納魔法だけは使えるんです。それで、荷物は全部収納して持っています」

「そうなんですね。あと、着替えとかは?」

「何着かありますけど……」

「もし、必要があったら言ってくださいね」

「はい」


 これで、フルフラールの部屋のセッティングは完了!

 再び私達は、一階のリビングダイニングに戻って雑談を始めた。

 まあ、私がフランとフルフラールの話を聞きたいって言ったんだけどね。



 こっちから仕掛けないと、私のことばかり色々聞かれそうだなってのもあったけど、一番の理由は、この世界の情報収集だよ。

 本気で、この世界のこと、私は知らないからね。


 もっともフラン、フルフラール兄妹の田舎での出来事とか、フランの魔物討伐失敗談とか、二人の周りで起きたことばかりだったけど……。


 でも、ちょっと新鮮だったかな。

 こんな風に人の話を聞くのって久し振りな気がする。



 そんなこんなで、いつの間にか日が暮れていた。

 私は、部屋の照明を点けたんだけど、そうしたらフランもフルフラールも、

「ナニこれ?」

「眩しい!」

 私の家の照明に驚いていたよ。



 そう言えば、この世界だと、一般家庭では蝋燭とかオイルランプが主流かな?

 もしくは行灯とか。


 これが、貴族の家とかだと照明魔道具とかがあって結構明るいらしいんだけどね。

 勿論、私の家の照明も魔道具だったりするんだけど。



 丁度ここに、

「ただいま」

 フユミが帰ってきた。


「お帰りなさい」

「お腹すいた……って、お客さん?」

「まあ、フランさんに、転移魔法のお礼に夕食を御馳走することになって。あと、フルフラールさんの部屋のセッティングを終えて」

「そうだったわね。今日からよろしくね」

「こ……こちらこそ……」


 フルフラールは、フユミの前だと緊張しっぱなしみたいだね。

 まあ、そのうち慣れると思うけど。


「フユミさん。夕飯のリクエストってあります?」

「ステーキ! それからカレーライス!」

「そんなに食べるんですか?」

「イイじゃない。お腹すいたんだもの」

「ただ、カレーはグリーンカレーにしますよ」

「何でぇ?」

「前にいた世界で、色に拒否反応を示した人がいたので。フランさんとフルフラールさんに拒否反応が出ると困るかなって」

「なるほど、そう言うことね。でも、私は、グリーンカレーは今一つでね」

「そうなんですか?」

「なので、いっそのこと赤いのがイイな。凄く辛いヤツ」

「それはそれで、食べられない人が出るんじゃ……」


 するとフランが、

「だったら、普通の色のと赤いのと、そのグリーンカレーを少しずつトライするってのはどうよ?」

 とチャレンジャー精神旺盛な小学生男子みたいな発言をしてきたよ。

 まあ、日本の文化なら、赤いの以外はチャレンジャーってわけじゃないけど、でも、マジで大丈夫かな?


 フルフラールも、

「お兄ちゃんの意見に賛成です」

 と前向きな発言をしたよ!


 そうしたらフユミから、

「じゃあ、いっそのことカレーソースのピザにしない? それなら無難にイケると思うんだけど?」

 との提案が。

 たしかに、それはアリかも知れない。


「分かりました。具はポテトとベーコン、コーンにオニオンに……」

「その辺は任せるよ」

「了解しました。では、出ろ!」


 私は、カレーソースのLサイズピザを二枚に、ヒレステーキ四人分、それからスープ四人分をイメージしてテーブルの上に出した。


 こんなに食べ切るかな?

 随分、カロリーが気になるメニューだなって思ったけど、フユミもフルフラールも全然気にしていなさそう。



 そして、早速、

「いただきます!」

 フユミはステーキから、フランとフルフラールはピザから食べ始めた。

 私は、スープからだけど。



 一先ず、フランもフルフラールも、初めて体験する味を喜んで堪能してくれている感じだった。

 作った(?)側としては嬉しいよ。


「拒否反応って言っていたけど、美味しいじゃん?」

「私もそう思うけど、ラヤさんは、どうして拒否反応が出るって思ったんですか?」

「その生地の上にかかっているソースだけど」

「ソース?」

「生地とチーズの間に、黄土色のソースがかかっているでしょ?」

「たしかに、そうですね」

「それを嫌がる人がいたのよね」

「何でですか? 嫌がる理由が分かりませんけど」

「まあ、味を喜んでもらえれば、私はそれで満足だけどね」

「ホントに美味しいですよ。これを店で出したらどうです?」

「俺は、これもイイけど、カツ丼も牛丼も天丼も捨てがたいけどな。あとパスタも!」


 フランは、何でもOKかい!

 まあ、私が出すモノの味を受け入れてもらえて何よりだけどね。

 一先ず、一か月くらいかけて何を出すか考えるとしよう。



 三十分後、なんだかんだで全て完食した。

 私は、そんなに食べていないけど、フユミとフランが口の中に押し込むようにガツガツ食べてくれたよ。


 そして、しばし歓談の後、

「じゃあ、俺は帰るとするよ。それじゃ、また」

 フランは転移魔法で安宿へと戻った。一応、女性だらけの家だからね。

 このまま、

『ここに住む!』

 とか言い出すのは遠慮してくれたんだろう。


 それに、

『俺がボディガードになってやる!』

 みたいなことも言い出さないし。


 まあ、首ちょんぱ魔法を見ているからね。

 私にボディガードは不要って考えているんだろう。

 あれは、人には発動できないことになっているけど……。



 この後、私達は順にお風呂に入った。

 ここでも、フルフラールは、

「お風呂の中のお湯を温められるんですか? それに、シャワーってお湯が出るんですね! 凄いです!」

 私の家の浴室設備に驚いていたよ。

 たしかに、この世界には給湯設備が無いもんね。



 それと、フユミにセキュリティのことで私は相談した。

「この家に結界を張ろうって思っているんですけど」

「張ってなかったの?」

「はい。魔法で鍵を掛けとけばイイかなって思ってたんです。ただ、転移魔法で家の中に直接入られるとマズイかなって思いまして」

「それで、この間は直接、リビングに転移できたのね。てっきり、ラヤちゃんが一緒だから入れたんだと思ってた。たしかに第三者に勝手に入られると困るし、結界は張ってイイわよ。ただ、私が転移魔法で直接出入りできるように結界の条件設定をしてもらえると有難いけど」

「了解です。では、直接出入りってことで、フユミさんと私とフルフラールさんの三人が弾かれない条件に設定にします」


 と言うわけで、私は、早速、家全体に転移魔法による第三者侵入を防止するための結界を張った。

 それから、フユミの薬屋にする小屋もね。



 ただ、他の人が一切出入りできなくなると困るから、ドアから出入りする分には問題無いってことにしておくけどね。

 つまり、飽くまでも転移魔法に対してのみ発動するバリヤーみたいな感じのものであって、特定の人以外をムリヤリ外に追い出すようなモノじゃないってこと。

 じゃないと、医院を開いても患者が入れないってことになっちゃうからさ。



 翌朝。

 私達は朝食を終えると、急いで身支度をした。

 フユミは今日も薬屋で一日仕事、私は大トラ魔獣の討伐、フルフラールは私の仕事の見学で、三人共、朝から出かけることになっていたからね。


「じゃあ、ギルドまで送るよ」

「お願いします」

「その前にお弁当頂戴」

「そうでしたね」

「今日は、おにぎりがイイな。あと、から揚げに漬物にコールスローサラダとか」

「分かりました。出ろ!」


 私はフユミのリクエストに合わせて弁当を出してあげた。

 でも、このままじゃフユミもフルフラールも料理が出来なくならないかな?

 ちょっと心配だ。


「じゃあ、行くよ!」

 私達はフユミの転移魔法でギルド前まで瞬間移動した。

 移動が楽になって助かるよ。

 ありがとう!


 そして、フユミは、昨日と同じように、ここから薬屋までの移動は徒歩となった。

 ギルド前からフユミの薬屋は、そんなに遠くないから、転移魔法を使う方がエネルギー的に非効率的なんだろう。

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